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マオと不思議なスライムの賑やかなアトリエ  作者: 小日向 ななつ
第1章 鉱石魔人〈アイアン・カドック〉の願い
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第3話 ゴミだらけのダンジョン

 ワープクリスタルを使って、マオ達はダンジョン〈悪魔の宝物庫〉に訪れた。

 しかし、マオ達がダンジョンの地へ踏み入れた瞬間に、思わず「うわー」と声を上げてしまった。


「なんだこれは?」

「すっごいゴミだらけ……」


 ちり紙にビンや缶、よくわからない物体からもう食べられない生ものまで様々なゴミが転がっていた。

 あまりにも散らかっているためか、マオとアイザックはつい嫌な顔をしてしまう。

 ノームに関しては臭いがキツいのか、前足で鼻を抑えようとする仕草をしていた。


「先生、ここってこんなにゴミゴミしてましたっけ?」

「いや。以前来た時はこんなに散らかってはいなかったが……」


 頭を抱えるマオとアイザック。

 どうしてだろう、と考えているとノームが『ワン』と鳴いた。

 目を向けると、ワープクリスタルの前に一組の少年少女が立っていた。


「わっ、何これ!?」

「すごく汚れてる。ここってこんな場所だっけ?」


 ぴょんとした獣耳と、緋色に染まった尻尾を立てる少女。

 そんな少女に同調するかのように、白い髪の女の子っぽい少年が頭を傾けていた。

 どちらもマオが所属するトトリカ魔術学園の制服を着ている。


「絶対に違うよ。前に来た時はこんなにゴミゴミしてなかったもん!」

「だよね。じゃあ、どうしてこんなことになってるんだ?」


 マオ達と同様に考え始める二人。そんな二人を見つめていると、獣人少女が「あっ」と声を上げた。


「ねぇ、あなたなら何かわかる?」

「ふぇっ?」


 声をかけられたマオは、思わず首を横に振った。

 すると獣人少女はちょっと残念そうな顔をして、「だよねぇー」と同調した。


「まあ、あなたも来たばかりっぽいしね。あ、私はミーシャっていうの。こっちの頭でっかちはルルクって名前。よろしくね」

「頭でっかちとはなんだ? まあ、いつも考えなしに突っ込むミーシャよりはマシかな」

「なんだとぉー! 私より年上だからって調子に乗るな!」

「乗ってない。ミーシャが勝手に自爆しているだけだろ?」


 仲良く賑やかにケンカをするミーシャとルルク。マオはちょっと苦笑いをしながら自己紹介を始めた。


「私はマオ。それでこっちは――」

「アイザックだ。よろしく」

「スライム!?」

「え? スライムってここにいたっけ!?」

「というかこのスライム、しゃべってるんだけどっ?」

「よく見ると真っ黒だ。コレクターに売ったらとんでもない高値で売れるかも」


 驚く二人。マオはちょっとハラハラしながら、アイザックに目を向ける。


「悪いな、俺は元々人間だ」


 アイザックはちょっと苛ついている様子を見せていた。しかし、相手が学生ということもあってか、怒りを抑えているようだった。


「あ、もしかして、王様と一緒にスライムに変えられちゃった先生ですか?」


 アイザックの言葉を受け、ルルクが思い出したかのように訊ねた。

 そんな言葉を受けたアイザックは、「そうだ」とハッキリ言い放つ。

 途端にルルクはピシッと背筋を伸ばした。


「し、失礼しました! 勇敢に魔人へ立ち向かった先生でしたか!」

「え? 何それ?」

「知らないの!? 王様がスライムにされた事件のこと!!」

「あ、あれね。確かピエロっぽい魔人が王様と助けようとしたみんなを、スライムに変えちゃったってやつだっけ?」

「その助けようとした人が、目の前にいるんだよ!」

「えぇ!?」


 ミーシャは目を白黒させた。途端に背筋をピシッと伸ばし、アイザックに敬礼する。


「ご、ごめんなさい! とっても無礼を働かきました!」


 いきなり態度を改めた二人。それを見たマオは、目を点としてしまう。

 アイザックはというと、満足げな笑顔を浮かべていた。


「いいだろう、許す!」

「「ハハァ!」」

「まあ、今後は口の聞き方に気をつけるように。わかったか?」

「はい!」

「わかりました!」


 マオはふと思った。アイザックって学校ではどんな活動していたんだろう、と。

 まだトトリカ魔術学園に来たばかりのマオにとっては、大きな謎となっていた。


『ワン』


 偉そうにしているアイザックを見ていると、ノームが何かを知らせるように鳴いた。

 何気なく振り返ると、そこにはたくさんのゴミが転がっている。


「それにしても、ゴミがいっぱいですね」

「ああ、俺も驚いている。なんでここがこうなったんだ?」

「わかんない。私達も最近ここには来てなかったし」


 ルルクとミーシャが、アイザックと一緒に頭を傾げる。

 ウンウンと唸っている二人。だがすぐ近くにいるノームに気づいていない様子だった。


『クゥン』


 ノームがちょっと寂しげにする。マオはそんなノームを呼び、背中を撫でてやった。


「やっぱり見えないみたいだね。後で先生と一緒に、遊んであげるから」

『ワン!』


 マオの言葉を受け、ノームは元気よく尻尾を振った。


「――レェ」


 ノームを励ましていると、突然おどろおどろしい声が響いた。

 目を向けると、ゴミの山がガサガサと揺れている。マオはノームと一緒に息を飲んで見つめた。するとノームは、何かを警戒してか『グルルゥ』と威嚇し始める。


「タチサレェ」

「タチサレェ」

「タチサレェ」


 声がハッキリ聞こえると共に、大きな不気味さが襲ってくる。

 マオは思わず立ち上がったその瞬間、それはゴミの中から飛び出してきた。


「タチサレェ!」


 それは、ゴミ袋を被ったゴブリンだった。

 棍棒を大きく振りかぶり、マオの頭をぶっ叩こうと飛びかかってくる。


「マオちゃん!」


 反応できないでいると、ミーシャがマオの身体を抱きしめて押し倒した。


『二人を守れ!』


 マオとミーシャを守るために、ルルクが言葉らしき何かを叫ぶ。

 途端に光の壁が二人の前に現れ、ゴブリンが振り下ろした棍棒を跳ね返した。


『ガゥッ』


 ゴブリンが思いもしない防御に怯んだ瞬間に、ノームがその腹部に頭突きをした。

 そのままゴブリンは後ろに転がっていった。


「大丈夫?」

「う、うん」


 ミーシャに起こされて、マオは立ち上がる。遅れてやってきたアイザックが「大丈夫か!?」と訊ねると、マオはしっかりと返事をして大丈夫であることを伝えた。


「みんな、油断しないで! まだ敵はいるよ!」


 隠れていた二体のゴブリンが現れる。

 合計三体のゴブリンがマオ達に威嚇を放つと、ミーシャがすぐに戦う構えを見せた。


「妙に好戦的ね。何があったのかしら?」


 腰に添えていた双剣を手にし、ゴブリンを睨みつける。

 ノームはそんなミーシャの隣に立ち、ゴブリンを威嚇する。

 ルルクがマオの縦になるように布陣を取ると、戦闘隊形が整った。


「さあね? とりあえず、とっとと片付けるよ」


 始まるゴブリン三体との戦い。

 マオはアイザックと共に、息を飲んで見守ることとなる。


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