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マオと不思議なスライムの賑やかなアトリエ  作者: 小日向 ななつ
第2章 一途な漢ガリウスは恋に胸を焼く
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第13話 才色兼備なエルフのリリシアさん

 その姿は、壮麗。気高さもあり、気品さもあり、まさにエルフと呼べるふさわしい姿でもあった。

 トトリカ魔術学園の制服に身を包んでいるとはいえ、その着こなしはまさに別次元だ。だからなのか、マオは同性にも関わらず今まで抱いてことのない羨ましさを持った。


「ところで、アイテムは買えたの?」


 ひょこっと顔を覗かせるミーシャ。マオと同じようにチンチクリンな体型だ。

 マオはそれに大きな安心感を抱きながら、「うーんとね」と言葉をつけて返答した。


「〈ブルージェム〉は手に入っただけど、〈純白ローズ〉と〈フロストベリー〉は在庫切れで手に入らなかったよ」

「えー! じゃあダンジョンに行かなきゃいけないじゃん!」

「ササララ寒冷帯に行けば手に入るって聞いたけど――」

「ササララ寒冷帯!? とんでもないモンスターがウヨウヨしてるダンジョンじゃん!」

「うん。でもそこに行かないと手に入らないって言われたの」


 マオが困ったように言葉を言い放つ。

 ミーシャもさすがにレベルが足りてないのか、苦い顔をしていた。


「ねぇ」


 マオとミーシャが頭を悩ませていると、リリシアが声をかけてきた。

 一斉に振り返ると、リリシアがニコッと笑いながら思いもしない言葉を口にする。


「よかったら、私も行きましょうか?」


 マオは思わず「え?」と声を溢す。

 ミーシャもまた「えー!」と大きな声を放ちながらも、目を輝かせていた。


「いいんですか!? パーティーを組んでもらっても!!」

「ええ、かわいい後輩が困っているのです。手助けしなくては先輩の立場がありません」

「でも、ご迷惑を――」

「そんなことありませんよ。確かに予定はありますが、全て些細なこと。キャンセルしてきますよ」


 本当にいいのだろうか。

 そう感じながらマオは盛り上がるリリシアとミーシャを眺めていた。


「ダメですよ!」


 唐突に拒絶の声が響いた。

 目を向けるとそこには、鼻から血をダラダラと流しているルルクがいる。


「確かに先輩の手助けは欲しいですけど、予定をすっぽかしちゃダメです!」


 ルルクは正論を言い放つ。しかし、鼻血は止まらない。

 見ていたマオは、ちょっと心配になってきた。そんなマオを気遣ってなのか、近くに立っていたウンディーネがちり紙を手渡した。

 マオは「ありがとう」と微笑んで受け取る。そして適当に数枚取り出し、ルルクに渡した。


「ルルク君、まずは鼻血を止めよう」

「ああ、ごめん。ありがとね」


 鼻の周りを拭き、止血を図るルルク。

 だがリリシアは、そうはさせんとルルクの顔を覗き込んだ。


「どうしてキャンセルをしちゃいけないのかしら?」

「え、えっと、だって前もってあなたに――」

「私が相手に申し入れたのでしたら、あなたの言い分は通ります。ですが相手から申し入れられたのならば、私がキャンセルしても文句は言えないでしょう?」

「で、でも!」

「それに、私はあなた達と一緒に行動したい。一緒に冒険がしたいの。ダメ、かしら?」


 耳元で囁くように、リリシアは言い放つ。

 途端にルルクは鼻血を噴き出し、仰ぎ見るように倒れてしまう。

 その顔は先ほど以上に幸せそうであり、それを見たマオはさすがに呆れてしまった。


「あ、ぅ。もぉ、ダメ……」

「いいみたいですよ、先輩」

「よし、じゃあ準備してきますね!」


 リリシアはパタパタと駆けていく。

 その姿はどこかかわいらしく、マオが抱いた印象とはまた違う姿でもあった。


「ありゃ男なら惚れるな」


 ミーシャはどこか親父臭いことを言ったが、敢えて触れなかった。


「まあ、確かにガリウスさんが追いかけたくなるのもわかるかも」

「そうね。そこで倒れているバカがどれだけ幸せなのかも、伝わってくるし」

「ところで、さっき騒ぎがあったけど何があったの?」


「ああ、あれね。リリシアさんが悪漢を倒してのよ」

「へぇー、そんなことが。って、えぇ!?」

「もうすごかったよ。大声で叫んで飛びかかる大男を、リリシアさんが右手一本で放り投げたの! あれは見るべきだったわ」


 惚れ惚れとした顔で語るミーシャ。一体どれほどすごいことだったのか伝わり、マオは思わず「見たかったなぁー」と呟いてしまった。


「いやはや、リリシア嬢はすごいものだ」


 そんなことを話していると、ガリウスが唐突に現れて唐突に会話に参加する。

 マオは思わず「わぁっ」と叫ぶと、ガリウスは豪快に笑った。


「ガハハハッ! すまない、あまりにもすごかったからついな」

「もう、驚かせないでくださいよ」

「すまんすまん。ところで、フロストブルー・ローズは作れそうか?」

「えっと、ちょっとダンジョンに行かないといけなくなったので、採取しに行こうかなと」


「ササララ寒冷帯に行くのか? 確かそこは、教師二人分の許可がないといけないぞ?」

「え? もしかして申請が必要なんですか?」

「そうだ。まあ、せっかく俺のために動いてくれているんだ。申請書を持ってきてくれたらサインをしてやろう」


 どこか朗らかで、なぜか爽やかな顔をしてガリウスは去っていった。

 何かいいことがあったのかな、とマオが感じているとミーシャがちょっと困ったように笑って声をかけた。


「実はね、悪漢を倒した後に先生も撃退されたの」

「……どういうこと?」

「たぶん、とっても嫌われていると思うわ」


 悪漢を倒したついでに放り投げられたガリウス。

 そんなことをされてあんな笑顔を浮かべていたのだ。一体なんであんなに嬉しそうにしていたのか、と全く理解できなかったマオはついつい苦い顔をして笑った。


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