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世界にたった一人だけの職業  作者: Mei
1章 王宮編
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目覚めたレミリー。そして、本当の姿。

「ん……んぅ……」

 洗脳魔法を解き、暫くしてレミリーが目を覚ます。

「お、目が覚めたか」

 蓮斗はレミリーにそう声をかける。

「!?」

 レミリーはその声に驚き、体を起こそうとする。だが、体に力が入らないため、体を起こせなかった。

「……そんなに怯えなくても大丈夫だよ。俺は君の敵じゃないから」

「……そんな言葉が信じられるとでも?」

 レミリーは敵意をむき出しにした目でこちらを睨み付ける。

 確かにこの状況で信じろ言われても信じられないだろう。それは当然の事だ。レミリーには|壮絶なまでに残酷な過去《、、、、、、、、、、、》があるのだから。だが、このままなのも良くないのだ。どうにかして、敵ではないことを伝えたいんだけど……。

 蓮斗がそんな事を考えていると、川崎が口を開き、優しく諭すように言う。

「あなたは先ほどまで洗脳魔法にかかっていたの。それをここにいる蓮斗くんが解いてくれたの」

「!!」

 レミリーは確かに覚えていた。自分が自分じゃなくなっていく様を。自分が自分を見ているような不思議な感覚。いくら止めてと叫んでもまるで聞こえなくて、自分の意思に反して行動する、まるで制御の聞かない自分の精神。いつしか諦め、心を閉ざした事。滅ぼされた自分の村、そして、自分をこんな風にしたー。

「……っ。助けられなかった……。誰一人救えなかった……。私が無力だったばかりに……」

 レミリーはあの時の自分の無力さを思い出すと悔しくなり、歯を噛み締め、涙を流した。自分にもっと力があれば……。自分がもっと賢ければ……。そんな事を考えれば考えるほど涙が溢れて止まらなくなる。家族も何もかもあの日(・・・)に全て失った。自分に他人を救える力などありはしないのだと一番痛感した出来事でもあった。

「くうぅぅ……」

 涙を抑えようとしても逆に涙がどんどん増していくばかり。今、自分を上から見下ろしている三人は敵かもしれないのに。敵にそんな姿は見せられないのに、涙は止まってくれない。そんな事を思いながら私が悲しみにうちひしがれていると。

「……つらかったね。苦しかったね。あなたの経験してきた過去はあなたにしかわからない。私にはわかるよなんて綺麗事も言えない。……だけど、泣きたい時には泣いていいんだよ。我慢しなくていいんだよ」

 女の人がそう言いながら私を優しく包むように胸元に私の顔が来るように抱き上げながら私の頭を撫でた。その瞬間、私のなかで何かが切れたような、そんな感じがした。

「うわあぁぁぁぁぁ……! 助けたかった……! 救いたかった……! 一つでも多くの命を!! それなのに私は……! 私は……!!」

 レミリーは川崎の胸元に顔を埋めた状態で今まで心に溜めていたものを吐き出す。今まで洗脳魔法に支配されていたのだ。吐き出したくても吐き出せなかった感情が爆発するのも仕方のないことだと思う。

 暫くして、レミリーは泣き止んだが、泣きつかれたのかそのまま寝てしまった。

「……ようやくこの騒動が落ち着いたな……」 蓮斗のこの言葉に二人は力なく頷いた。余程疲れているのだろう。それは、蓮斗も同様だった。そうやって蓮斗達が暫く休んでいると。

「おーい!!無事かー!?」

 城門の方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。俺達は声のした方に振り向くとそこには勇者高峰を中心としたクラスメイト達がいた。

「おう。こっちは無事だ。そっちは大丈夫か?」

 クラスメイト達と対峙したのは、蓮斗達だが、怪我が無かったか一応聞く。もしかしたら、他の人に危害を加えた可能性もあるし。

「……ああ。こっちは特に何もない。……その、悪かったな。迷惑かけて」

 高峰が代表して答える。というか覚えてたんだな……。

「いや、気にすんな。特にお前達から攻撃受けてないから」

 蓮斗はまるで天を仰ぐようなポーズをとり、自分は無傷である事をアピールする。それを見た高峰はホッと息をつき、苦笑いを浮かべる。

「そ、そうか。それは良かった……。それで今後のことなんだけど……」

 高峰がそう説明しようとすると秀治が口を挟む。

「それについてはこちらから説明させてもらうがいいか?」

「え……? ああ、よろしく」

秀治に遮られ、少し驚いたような悔しいようなそんなよくわからない表情になった高峰だったが、ここは確かに秀治に説明してもらった方がいいだろうと判断し、秀治の申し出を承認した。

「ありがとう。では、今から今後の事に説明する」

 秀治のその言葉に、皆は真剣な顔つきでその説明に耳を傾けるのだった。

 

 

 

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