1-8
(訳が分からん)
怜は岩に隠れながら、それらが戦っているのを見ていた。大剣が叩き付けられ、岩が花火のように弾け、礫のように飛んで来る。隠れている岩にぶつかり大きな破裂音がなった。咄嗟に頭を引っ込めるが、再びそっと顔を出す。巨体を火の渦が覆い、表面が熱を持った赤い光を放つ光景が目に入る。
怜はここが地球では無いことは既に理解していた。人間があんなに跳躍できる訳がないし、火を出すこともない。人の皮を被った悪魔だと言われた方が納得出来る。映画を見ているような、ひどく現実離れした光景を見てそう思った。
(とにかくあの化け物達から逃げないと、確実に死ぬ)
巻き込まれるのを恐れて岩の裏に貼り付いたままになっている。来た通路までたどり着くには50メートル程の何もない場所を駆け抜けなければならない。
(でかい芋虫なんてあいつらに比べたらどうってこと無い。とにかく後の事は通路まで行ったら考えよう!)
そう思った瞬間、ゴゥッと風の音がした。
(ウァッ!また来たっ!!)
大きく息を吸い込んだと思うと大きな口に輝く光が漏れる。
そのまま地面目掛けて大きく吹き出した。
怜は風圧と共に光の波が押し寄せてきた瞬間、慌てて岩影にしっかりと身を隠した。風の吹き荒れ、暖色系の光が辺りを満たす。収まったのを確認してから様子を伺うとすでに光のブレスなど無かったかのように戦闘は続いていた。---
「気付いていたか」
唸るような低音で大岩がそう言った。
「気付かれないとでも思ったのか?案外馬鹿なんだな。」
そうリーダー格の男が言うと薄く笑った。
大岩は怒りもせず、どこか懐かしそうに
「ふんっ!小さい割にはでかい口を叩くな」
と鼻息と共に言葉を漏らした。
そう言うと体の影からごつごつとした長い尻尾を延ばし、槌の柄を巻いた。
「これを渡すわけにはいかんな」
そう言うと後ろに雑に放り投げた。
間を空けて。ドンッと重量感のある音が聞こえてきた。
「全員生きて返さん―そこの小娘も例外ではないぞ。」
こそこそと岩に近づいていた怜はそのまま全力で走り始めた。
それを見た大岩は地鳴りを鳴らし、短くも太い足で重い胴体を持ち上げた。すると地面に埋まっていた部分が姿を現した。
「地龍だ、ブレスに気を付けろ。」
他の二人にそう注意を促すと、ゲイル以外は持っている武器を構えた。
一方、怜は岩に滑り込むように隠れた後、大きな口と平たい体を持つ地龍と呼ばれたものを見て
「ワニでかすぎだろ…」
そう感想を漏らした。