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隊長と呼ばれた男は思考を巡らせていた。
(番人からの妨害がないなんて…)
そう思いながら持っている銅色のサーベルを見つめた。緩やかな曲線を持つ細身の刃と、金色に近い鈍く輝く柄の部分。護拳も最低限しかついておらず、シンプルながら上品な美しさを持つ。この剣を落としたやつはずいぶん前から侵入者に妨害をしていた。落とし穴、夜襲、待ち伏せ。使える手はなんでも使うような奴だった。数々の犠牲を払った以前の探索での番人を思い出す。これはその探索での二番目の宝になるだろうが、自分は1番のやつよりも気に入っていた。その理由は戦った番人の強さからである。
(前のやつは相当強かった。5m程の細身のトラに似ていたが、今回はどんな奴だろうか。妨害をしてこないのを見るとこちらに気づいて無いのか、相当自信があるのか。)
まだ見ぬ敵への想像を膨らませていると、また開けた空間に出た、以前の広場より相当広い。この先はどこまでもこの空間が続いているようだった。前を進んでいる女は地面から芋虫が出てこないか警戒しながらも、前を進んでいる。
「止まれ!!」
声が広場に響く、女はビクッと反応して後ろを振り向いた。その視線は自分のサーベルに注がれている。
女から目を離し、辺りを確認する。周囲には10m程の長さの平たい岩と所々に2mくらいの岩が転がっている。大きな岩に注意を向けながら、周辺を観察していると1mほどの黒い棒のような物が地面に刺さっているのを発見した。よく見ると先端に角張った黒い塊がついている。さらに表面に赤い宝石が斑模様を作り、淡く光を放つ。無骨ながら怪しげな美しさを持つそれは、俺たちがよく知っているものだった。
「アルマの戦槌!!まさか2本目が見つかるとは!」
ダルシムが後ろで興奮気味に叫んだ。そのまま近づこうとしたので、手を横に挙げて動きを制した。
「こんなにでかいとはな」
後ろからゲイルの低い声が聞こえてくる。
「正直想像以上だ」
2人にそう言葉を漏らすと、意図を理解していなかったダルシムがハッとして大きな岩を見る。
ダルシムの反応を確認した後、岩に向き直る。サーベルをオレンジ色に光らせ、片手でフォンッと音を立てて切り上げた。
すると、バコン!音を当てて2m程岩に傷を付けた。
「硬いな…」
そう呟き、端から端まで流しながら観察する
いつの間にかこちらを見つめる、大きな爬虫類を思わせる黄色い目が端にあった。