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「おい!さっさと歩け!」
すぐ後ろから風を切る音が聞こえ、こげ茶色の髪の髪先が少しの枝毛とともに飛ばされた。怜は慌てて前に進み、後ろを伺った。リーダー格の鳥ヘルムの男が、銅色のサーベルを緑色に光らせながら振るっている。他の二人は後に続く形をとっている。
(クソ、私はあの化け物の囮かよ…)
怜を先陣に立たせて一行は洞窟を進んでいた。広場で死んでいた化け物と同じものが、度々先頭の怜に襲い掛かっていた。怜は死に物狂いで天井や壁から出てくる大きな芋虫を回避して、助けを求めに3人組へ走る。そうしてリーダー格の男がサーベルを振るうと、後ろで芋虫が死んでいる。そんな状況が続いていた。
「いいんですか?あんな扱いして」
ダルシムと呼ばれていた大男がリーダー格の男に小声で問いかけた。
「構わん、どうせ見つかったからには女でも生かしては置けん、最後の有効活用だ」
とそっけなく言う。
ダルシムはゲイルの方を見るが、無言でそれを肯定していた。
「まあそうですよね…。
実はあいつ結構タイプなんですよね」
リーダー格の男は表情を変えずに答えた。
「お前背の高いやつがタイプだったか?」
「まあそうなんですけど、意外と胸あるじゃないですか。隊長なんでもう一枚服脱ごうとしたとき止めたんですか?」
ため息をつき、答えた。
「おまえが興奮して使えなくなると思ったんだよ。下らないこと言ってないで警戒してろ」
そこで会話は途切れたが、隊長と呼ばれた男はもう一度口を開いた。
「あいつは武器や能力を持っていなさそうだが、ここまで来るのに無傷だということはあり得ない。注意しとけ」
2人は無言で頷き、それ以降話すことは無かった。