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インタールード -あなたは今大切な物がありますか?-  作者: 箱丸佑介
第五節:神になり不死鳥と契約した男はどうやら死ねずに苦労が多いようです。
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博霊の戦士

煙の立ち上っている家に辿り着くと、家のガラス張りの庭園から女の子の悲鳴が聞こえた。

「まずは相手の小手調べだ、いくぞフェニックス」

「仰せのままに」

背中に袋に入れて背負っている三本の刀剣、脆葉月と白龍それと刃落とし剣。

その中を刃落とし剣を取り出し右手に持つ、走りながら踏み込み直上から突入するためにジャンプした。

天井のガラスを破ると中にはメガネでたわわな胸の女の子が一人、槍を持った男が一人いた。

写真の相手は女の子の方、なら相手にするのは。

「俺の敵はお前の方だ!、全身タイツの変態野郎!」

【重力魔法:グラビティショット】

あらかじめデバイスに打ち込んで置いた魔法を左手から放ち、右手で追撃の剣を振るう。

「なんだお前!」

攻撃は全て防がれ、相手にはまだ喋る余裕があるようだ。

「正義のヒーローです!、悪党に名乗る名前なんぞこれで充分だ、礼儀を教えてやるよ名前を聞くときはまず自分からってな」

「ガルドそれが俺の名前だ」

「和田大輝あぁ、もちろん正義のヒーローじゃなくて正義の味方ね」

どうでもいい付け足しをして、剣を片手で構える。

三G分の重力弾に襲われたにもかかわらず余裕の表情とは、ムカつくくらいに強いようだ。

「正義の味方が何のようだ、じゃまするんじゃねーよ」

「女の子を守るのに理由がご入り用で?」

「いい度胸じゃねーか」

「この子を傷つけるなら俺が相手になってやるよ、かかってこい」

「面白いぶっ殺してやるよ」

疾風の用に攻撃を仕掛けてくるガルドに対し、俺は目をつぶり剣を背中にしまい白龍を取り出した。

「我が刀名は白龍、揺るぎなき一閃の力をご覧に入れて差し上げよう」(ちょっと変わった)

例により鞘を投げ捨てガルドの疾風の突きを防ぐ、実戦で使うのは初めてだが白龍の方も軽さを抜けば使いやすい。

ガルドをはじき返しワンステップでガルドの体にけりを入れる、効果は無いようだが。

【月影流剣術:斬撃】

白龍を横に一振りし斬撃を飛ばす、ガルドが防いだ一瞬のモーションの逃さず懐に入る。

【月影流剣術:三角斬り】

懐から白龍を切り上げ限界まで上げてから斜めに切り下ろす、そこから膝を狙い横に一振り。

膝には当たらなかったものの槍を折り、額に傷くらいはつけた。

「武器はないんだ逃げたらどうだ?」

「そうさせて貰う!」

ガルドが煙玉を取り出し地面に叩きつけた、周囲煙が吹き上がり煙がはれるとそこに姿はなかった。

白龍の鞘を拾いしまって背中の袋に入れる、女の子は酷く怯えているようだが、大丈夫だろうか?。

汐那蘭せきならんちゃんだよね?大丈夫?」

放心状態の彼女は大丈夫だろうか、こういうのを直す時はやっぱり王子様のキッスで。

「大丈夫です、あなたは?」

「趣味で戦争屋やってる和田大輝って言います、今日は依頼であなたの護衛に来たんですが・・・、大丈夫なわけないですよね」

「すいません散らかってて」

「いえいえ、半分は散らかしたの俺みたいなもんなんで。それでなにがあったんですか?」

「さっきの男の人が急に家に押しかけて来て」

「それでさっきの状況って事か」

話ながら魔法で部屋を直していると、蘭ちゃんが不思議そうに見てきた。

「どうかした?」

「あなたも魔術師なんですか?」

「いや、魔術師ってよりはただの魔法が使える魔法使い?」

魔術として最高峰の神祇は生まれつき使えた物、魔術師の訓練すら受けていない俺は魔術師ではないだろう。

「そういえばあなたもってどういうこと?」

「私は魔術師なんです、ほら」

そう言って腕を見せられるといつかのピエロに見せられたような魔術回路、でもこれは術式型ではなく魔術操作型の日本の古風系魔術師なら生まれつき持っているような物だ。

「残念ながら俺が教わっていた魔法学校は外国なんだ、日本のでいう魔術師ではないよ」

「そうなんですか」

「それよりさっきのガルドとかいう男に見覚えは?、恨まれてるとか喧嘩を売られたとか」

ま、日本じゃ喧嘩を買ったくらいでは命は狙われないと思うが。

「残念ながらないです」

「そうかわかったありがとう―――」

言言い終わると同時に、俺は糸が切れたように意識を失い床に倒れ込んだ。


目を覚ますと外からは日が差していた、どうやらベッドの上にいるようだ。

「大丈夫ですか?」

視線を右側に向けると心配そうな顔をした蘭ちゃんがいた、頭が少し痛むなぜか少しだけ記憶が薄れたように感じるのは何故だろう。

「ごめんね頼りにならなくて、どれくらい寝てた?」

「あれからですから、五六時間じゃないですかね」

五六時間も寝ていたのか、普段一二時間しか寝ていないからかも知れないが、こんな長い時間眠るなんて自分でも信じられない。

体を起こし痛く重い頭に手を当てる、確か数年前両親を殺して病院で目覚めたときにも、こんな感覚を味わった気がする。

一瞬の師匠に言われた言葉が脳裏をよぎる、『未だに過去の記憶が完全にはもどっていないのじゃろう、または消されたか』。

言葉通り消されたのなら・・・誰に消された?、兄貴?神になってもそんなこと出来るわけが。

記憶の番人と手を組んでいれば不可能ではない、アスタルテとなった俺に背く気が奴らにあるのか。

それとも、数年前両親を殺した時からグルだった?。

考えれば考えるほど頭が重くなってくる、これ以上は逆効果でしかないかもしれない。

「あの・・・大丈夫ですか?」

「ごめんごめん考え事してた」

「和田さん朝ご飯出来てますから、よかったら食べて下さい」

「ありがとう蘭ちゃん」

食欲は無いが蘭ちゃんが作ってくれた食事を食べる、なんだかんだ久しぶりに食べた気がするが。

「今日はちょっと付き添ってくれない?、ガルドって奴を追いかけて一気に叩き潰したい」

「はい、私はいいですよ」

「じゃあこれを食べ終わったら向かおうか」



蘭ちゃんと共に向かったのは町外れにある廃工場、こんな所にいるということは日本に住んでるわけでは無いようだ。

中に入ると真っ暗だった、義手のライトを点けて一歩ずつしっかりと進んでいく。

「蘭ちゃん足下気をつけてね」

「はい」

一応安全のために手を繋いで歩いてはるが、蘭ちゃんの手はというか体は少しだけ震えていた。

「ごめん、やっぱり連れてくるべきじゃなかったかも」

「え?、私は大丈夫ですけど」

「震えてるでしょ、やっぱり怖い?」

「まぁ、それなりには」

「俺がついてるから安心して」

「ありがとうございます」

仕事だからとは言えないが、今回は本当に嫌な予感がする。

糸をたどって着いたドアを開くと中には先ほど会ったガルド、の死体が転がっていた。

まるで黒◯げ危機一発のように、体中に剣が刺さっていた。

手を繋いでいる左手ではなく右手で銃を抜き奥に目をやると、そこには一人の男がいた。

その男に向かい銃を突き付けた、なぜかはわからないが嫌な予感がする、こいつは強い。

「お前は何者だ!」

「なんだ人間お前は名を訪ねるときは、まず自分からという礼儀をしらんのか」

「そうだったな、俺は和田大輝」

「我が神名は戦争の神エヌルタ、人名はデュランダルだ」

「なっ」

神殺しなのか、どの道神殺しから神名を奪って全神を生き返らせようとは思っていたが。

神殺しの心は白なのか黒なのかすらわかっていない状況だ、だが、俺の直感を自分自身で信じるならこいつは黒だ。

「蘭ちゃん、いますぐに逃げてこいつはやばい」

「え?」

「早くしろ!」

物凄い剣幕で言ったせいか、蘭ちゃんは慌てて来た道を戻り走り去った。

「ほう、おなごをかばうか貴様甘いな」

「悪いな俺は女を殺すのも嫌いだけど殺されるのも嫌いなんだ」

「腹の立つ奴だな」

「調子に乗るなクズが」

「貴様もこちら側だろう」

「一緒にするなよ、俺はそっち側でもないし」

スーッと息を吸い込み、大声で力を込めて。

「俺はお前みたいなイケメンの奴が大っ嫌いなんだよ!」

と、顔の負け惜しみを言って初っぱなから白龍を持ち、飛びかかった。

「ふん、下らん」

近づくと男が右手に光の剣を出し、俺の刀を防いだ。

「デュランダルと言ったか?、いい腕じゃねーか。男の神を助ける気は無かったがどうせ世界を救うんだ、ついでだついで」

「何の話をしている」

「我が名は創造神アスタルテ、神の名を汚す不埒な人間に天罰をくれてやろう」

「人間風情が」

「お前も人間だろ」

「貴様っ!」

「消滅させちゃったらダメなんだよな、殺さないと」

左手でレイジングブルを取り出し、発砲すると同時に銃身がシリンダーのギリギリの所から真っ二つにされた。

「ちっ」

「その程度で勝てると思っているのか」

「誰に口聞いてるんだクソ野郎」

【月影流剣術:兜割り】

無理にジャンプし無理矢理剣を叩き落とすと、デュランダルの剣は折れ頭から顔から股間に掛けて剣が振り下ろされた。

「何っ」

「くたばれ」

【月影流剣術:一刀両断】

振り切った刀は、デュランダルの腰から横に真っ二つになった。

例により死体は青い炎に焼かれ、消滅した。



「これで多分仕事は終了、もしなにかあったらこの名刺の番号に連絡して、すぐに駆けつけるから」

「ありがとうございます」

「一食の恩があるからね、それじゃ」

そう言って家に向かって帰ったのだった。


「ちっさっとちゃーんたっだいまー!、俺が居なくて寂しかった?」

「居たら居たでうるさいわね」

「またまたそんなこと言っちゃって千聖ちゃんも寂しがってたんですよ、素直じゃないですけどね」

「うるさいわよのん」

「銃はぶっ壊されたけど今回は無傷で帰ってきたよ、それに義手ともおさらば出来そうだしね」

「治るの?」

「ま、試してみないか事にはわからないけど

ね」

「それよりライムさんから連絡が来て、ルカさん?が早くライブの企画書出せ、って言ってるって言ってましたよ」

「あ、企画書出すときにハードボーラー届けて貰おう」

「ハードボーラー?」

「アメリカにいたときの俺の愛銃、最後の仕事の時に無くしてそのまま行方不明だったのが見つかったらしい」

「あなたアメリカにも行っていたのね」

「それよりライブの企画書って?」

「ん、お主らのああ二周年ライブの企画書ぞ日本にいるときはやれって、ルカに言われたわ。んー企画書は出来たんだけど・・・会場がね?、大きいとこでやるか小さいとこでやるかが決まってないの」

「ちなみに小さいところだと?」

「ライブハウス?」

「大きいところだと?」

「うちの敷地のドーム?」

「規模がぜんぜん違うじゃないですか」

「ま、いいやのんちゃんリサちゃんに頼んでSNSのグループに明日午後五時練習スタジオに、重要な用件が無い以外は来いって送っといてって頼んどいて」

「グループ入ってるんですから自分でやって下さいよ」

「いんや、ちょっと携帯が行方不明になっちゃっててさ。パソコンも仕事用だからアプリ入ってないし」

「連絡が取れないのはそのせいだったのね」

「いや、ガラケーは持ってるよ?」

「どこにやったのよ」

「・・・・・、あ、思い出したユミアちゃん達に渡したまんまだ」

「私の携帯を貸してあげるわ」

「ありがとう千聖愛してる~」

「殴るわよ?」

「二人とも場所をわきまえて三階にいかないかな?」

「ごめんごめんのんちゃん」

のんちゃんにぺこぺこ謝っていると、なんだかいつもの日常に戻った気がした。

俺の中で今まであったちょっとしたもやもやは消えたかも知れない、これが続けばいい世界の終わりは止める。

でも、それまでは必ず彼女達を守り続ける。


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