秘薬を求めて:弎
祝!四十話!
これからも箱丸をよろしくお願いいたします!
数えただけでも数十人、これを相手にしてからさっきの男とも戦わなくてはならないのか。
一番最初に仕掛けてきた、取り巻きの首に脚を掛けて、折る。
さすがにこの数は面倒だ、一度に片付けよう。
右腕の義手、そして、ナイフを仕込んで置いた靴、腰に巻き付けていたホルスター二丁分、それが全て取られている。
一人は生き残して装備の場所を教えてもらうことにしよう。
パッパッと流れ作業のように足と腕の骨を砕き、攻撃出来ないように対処するだけで十分も掛かった。
外が暗い事も考慮すると、残り一日といったところだろう。
残り一日で帰らねばならないのか、間に合わなかったら、いや、そんなことは考えないようにしよう。
装備の場所を聞き出し、全ての装備をつける、ここまで順調にこれたが、順調すぎないか?。
仕組まれている気がしなくもないが、いまはそんなことを考えている時間は無い。
連れ込まれたのがビルのせいで、あっちこっち行ってる間にまた時間が掛かった。
敵から拾ったマシンガンで戦い、個室に入ると、運良くそこにはさっきの男がいた。
「見つけた」
「随分と時間が掛かったようだ」
「さぁ、ダイヤモンドの涙を貰おうか」
「君はなぜそこまでこの薬を欲しがる、容器以外は珍しい物でもないだろう」
男がナタのような装備をブリーフケースから取り出していた、どうやら、ここで決着をつけるつもりらしい。
「部下がやられたんだ、こちらも本気でやらせてもらおう」
次の瞬間飛び上がり振りかぶって来た男を避け、手の届く範囲で間合いを取る。
単調な攻撃に見えるが、左手に持っていたナイフをみればそうも言えない、カウンターを仕掛けた所に反撃してくるつもりだったのか。
一進一退の攻防を繰り広げ、こちらは素手、相手はナタという、不利な状況だったが。
「もう一度聞こう君はなぜ、この薬を欲しがる、金の為か?それとも、私と同じく理想を掲げるためか!」
「お前とは違う、理想が違うように、俺がその薬を欲しがる理由は、女のためだよ!」
「たかが女のためだと?、ふざけるな!そんなことの為に私の部下を殺したのか!」
「そのたかが女の為に戦っちゃわるいか!、女を見殺しに出来ないのは、俺の流儀だよぉ!」
男が振りかぶった瞬間、男の振りかぶった腕を掴み、ナタを男の心臓めがけて突き刺した。
スーツケースを漁るとダイヤモンドの涙が見つかった、今から戻れば、時間には間に合う!。
デバイスを起動し、コードを打ち込んでセスナを呼び出す、三十分あれば着くだろう。
※
セスナ機内に乗り込み、来るまでに買っていたお土産を座席に置き。
操縦席に着いた、香港を出てから三十分、レーダーに戦闘機の機影が見えたかと思うと、いきなりミサイルを発射してきた。
〔マスター、ミサイルです〕
「フレア、任せた」
〔ラジャ〕
ミサイルは無事命中コースをそれたが、戦闘機はまだ追いかけてくる。
「ルイ、あれはどこの所属だ!」
〔識別番号なし、恐らくはマスターの追っ手ではないでしょうか〕
「あれに追いかけられて日本まで持つと思うか?」
「成功する確率があっても、神のみぞ知るという物ではないでしょうか」
「だよな、ハッチ開けろ屋根に乗って撃墜、もしくは奪取する」
義手には備え付けでグラップリングフックも点いている、奪取くらいなら、朝飯前で出来るだろう。
〔お気をつけて〕
屋根に立ち上がり、ホルスターからMS8を取り出す、マガジンを貫通弾用マガジンに替え、準備は出来た。
飛行機にグラップリングフックを刺して、左手に銃を構える。
「ルイ、上下反転してもいいから、あの戦闘機とすれ違うように出来るか?」
〔任せてください〕
セスナの頭が上がり、上下が反転する、フックでなんとか屋根に足をつけてられるが、勝負は一度きりにしよう。
速度差がかなりあるが、動いてる物に変わりは無い、まっすぐなら先読みして撃つ必要もない。
機銃を撃ちながら近づいてくる戦闘機の操縦席を射貫いた、勢い余り機体を貫通した弾丸が飛んでいくのを横目に、反対側で分解した戦闘機を見た。
〔お見事です、マスター〕
「世辞はいい、さっさと帰るぞ」
〔ラジャ〕
東京上空に着いたのは午後一時、環奈ちゃんが体に毒を含んでから二日が経ったという事だ、あと十二時間、余裕だろう、と確信した。
ウィングスーツ使い自宅に帰宅すると、サササッと地下室へ潜り込んだ。
ダイヤモンドの容器から小瓶を取り出し、蓋を開ける、これが本当に効けばいいのだが。
「・・・・・、どうやって飲ますんだ」
やっぱり意識を失ってる相手に水を飲ませるのは、マウストゥーマウスしかないか!。
と、胸に期待を膨らませていると、地下室へ千聖ちゃんが入ってきた。
「随分と帰ってくるのが早かったのね」
「もうちょっとギリギリに帰ってくると思った?」
「ええ、そうね」
体に水分を入れるためのチューブを取り出し、千聖ちゃんを横目に見ると、なんだか、嬉しそうな顔をしていた。
「どうかした?」
「なんでもないわ」
チューブでダイヤモンドの涙を入れていると、突如、千聖ちゃんが大声で高らかに笑い声を上げた。
「飲んだわね!、その薬を」
「なっ」
「その女の命は持って後二時間よ」
別のことで気を取られていて気がつかなかったが、いつもの千聖ちゃんじゃない、匂い、口調、そして主にスリーサイズが。
「千聖ちゃんをどこにやった!」
「あの子なら、この家にいた他の友達と一緒に私の所にいるわ。悔しかったら取り返しにきなさい、本物のダイヤモンドの涙もあるわ」
そう言って千聖ちゃんの格好をしていた、千聖とは似ても似つかない、千聖ちゃんよりバストのサイズが大きい女は消えていった。
いや、千聖ちゃんも手持ち無沙汰になるような鉄板じゃないけどね!?。
(注:結構失礼)
「本物のダイヤモンドの涙と、連れてかれた四人の命、そして環奈ちゃんの命は、保証されてあと二時間。なら、考えている時間は無い」
ドカンッ、と大きな音を立ててドアを勢いよく開け、わざと残していったであろう痕跡の糸をたどっていった。
環奈ちゃんの死亡まで:あと二時間。




