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インタールード -あなたは今大切な物がありますか?-  作者: 箱丸佑介
第三節:未来からの使者
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神奈川暗殺依頼編:終:神に挑む者

目を覚ますと周りは真っ白、神祇のペナルティでも視界がホワイトアウトする事は今までなかったのだが。

これはホワイトアウトしたというより、周囲が真っ白の場所に連れて来られたと考えるべきだろうか。

「死んじゃったのかなー俺」

「「あなたは死んでません、これから死ぬのです」」

座り込み独り言を放っていると後方から二つの声が聞こえた。

脆葉月を取り出し飛び上がって後ろを向くと、そこにいたのは水色の髪の女が一人、白と黒の髪色の子供が一人ずつ、そして槍を持った男が一人だった。

「あんたらは、一体」

「申し遅れた、私は創造神アスタルテ」

「「僕たちは監視者、生の番人アダム、死の番人イヴ」」

「そして彼女が時の番人」

あれ、アスタルテって女じゃないのか!。

(筆者:今はそこじゃねぇ)

「それで、神様が何のようだ?」

「君がこの世界の害悪となった、その先は言わなくてもわかるだろう」

「だいたい予想はつくけど、悪いけど俺はまだ死ぬ気はない」

「君に与えられる選択肢は三つだ。一つ、ここで私達に殺される。二つ、力を失う代わりに生き残る。三つ、私を殺して力を手に入れたまま生き残るかのどれかだ」

「どれを選んでもろくな事がないな」

「三つに一つだ、好きに選びたまえ」

「神様なら、言わずとも答えはわかってるだろ?」

「人は時に面白い返答をしてね」

「なら答えはこっちも三つだ。一つ、俺はまだ死ぬ気はない。二つ、力を失うくらいなら死んだ方がマシだ。三つ、俺はお前を超えて、神を殺した男としてグレードアップさせてもらうよ」

「やはり人間の思考は面白い、さあ、遠慮はいらない、掛かってこい!」

いつの間にか他の三人が安全な場所に離れていた、どうやら一対一でやれるらしい。

腰を落とし、鞘から脆葉月を抜く。

大丈夫、神くらいなら、死ぬ気でやれば倒せるさ。

「後悔するなよ、神様!」

「人間風情がよく言う」

一歩踏み出し懐へ入る、刀を振り上げると共にオリュンポスと入れ替わるように鎧が現れた。

鎧は真っ二つ、中身はない。

「やっぱり、戦うにはフェアな条件なわけないよな。創造神ってくらいなら、この部屋もあんたの思い通り、こっちは思考を読み取られて攻撃が当たる訳がない」

「賢いな、私と戦った人間でそれに気がついた人間は始めてだ。いまなら降参を認めてやるぞ?」

「言っただろう、まだ死ぬ気はないし、力を失うくらいなら死んだ方がマシだって」

「強情な人間だ」

【月影流:一瞬八斬】

一瞬にして八つ目の斬撃がオリュンポスを襲う。

しかし、今度は鎧が現れた訳ではなく、八斬全て避けられた。

「いい加減諦めたらどうかな」

「うるせえ黙れ、俺の辞書に敗北と不可能はないんだよ」

【風魔法:風槍グングニル】

左手で作り出した槍を投げる、手数だけなら誰にも負ける予定はない。

あっさりと避けられたのを確認して脆葉月を左手に持ち替える。

そして、右手を銃の形にし。

【雷魔法:ライトニングスピア】

「はっきり言わせて貰う、君では私には勝てないよ」

「みたいだな、だからちまちま狙うのはやめさせてもらうよ」

【エンチャント:サウンドウェーブ】

超音波化させた脆葉月を一度、二度振る、これはまだ遊び。

本番を使うために範囲で、他の三人を巻き込まないように。

「そろそろ決めさせてもらうぜ」

【創成魔法:殺人ドール】

唱えると同時、オリュンポスの位置から二十五メートル、五十メートル、百メートルに分け、三段階で一万本を超えるナイフの弾幕が抜ける隙間もなく現れる。

「悪いけど、こっちだって創成魔法くらいなら使えるんだ、みくびってもらっちゃ困る」

ここで目を覚ましたとき、しっかりと魔力体力は限界まで回復されていた。

弾幕をつかう最終手段が終わるまで魔力がもてばいいが、創成魔法の消費量は多すぎる。

全てのナイフがオリュンポスに突き刺さり、一瞬だけ勝利を確信したのだが。

「初めてだ、私に傷をつけた人間は」

あれだけのナイフが襲ったにもかかわらず、刺さっていたのはたったの四本、そして深く刺さっていたのは一本も存在しない。

「化け物かよ、あれを受け止める奴がいるなんて」

普通の人間が食らえば体を突き抜ける程の威力のナイフが、隙間なく襲ったにもかかわらず、相手はまだ余裕綽々。

「面白い、面白いぞ人間。君は本当に神の域を超えるかもしれないな!」

「いい加減余裕ぶってないで攻撃してこいよ、そっちの方が俺が隙を見つけやすいだろう」

「そうだな、礼儀として、我が槍の操り見せてやろう」

カチャと音を立て、オリュンポスが腰を落とす、どうやらいままでとは違い、攻撃を仕掛けてくるらしい。

ピュン、と音を立て鋭く、そして重く槍が突かれる、どうやら口先だけの腕前ではないらしい。

でもオリュンポスはまだ、こっちの切り札には気がついていないらしい。

【創成魔法:千本桜】

無数の剣と刀が現れ一直線にオリュンポスを襲う、精度を落として先ほどのナイフとは違いガラスだが。

「もう一回、もう一回だけ撃てれば」

体が限界を迎えていた、血管が浮き出てきた、はっきりとはわからないがまぶたから血が出てる気がしなくもない。

金属を音を立て競り合う中、隙が出来たのはオリュンポスではなく俺の方だった。

鋭い槍で腹を一突きされる、致命傷となる一撃だった。

「ピンチはチャンスってやつかな」

「君の負けだ」

オリュンポスがそういい放つとどこからともなく、無数の矢が俺の体を突き刺す。

オリュンポスが俺の体から槍を抜く、血が止まらない、立ってるのもやっとのくらいだ。

「残念だ、君には期待していたんだ、この世界を作ってから、初めて楽しいと思った相手だったのに」

パチッ、とオリュンポスが指を鳴らす、すると再び矢が降り注いだ。

でも、この程度じゃ、死なない・・・死ねるほど甘い体じゃない。

激痛と共に苦しみを味わう、俺の道はやっぱり間違っていたのだろうか。

どこからともなく水滴が水面を跳ねる音がした、何故だろう、こんな時だというのに力が湧いてくる。

「(お前の力はそんな物なのか大輝!、お前がラオウを倒したときの底力を見せてやれ)」

「(あなたは一人じゃない・・・私達も一緒よ)」

幻聴だろうか、意識が遠退く中トミーとアリスの声が聞こえてくる。

そうだ、後悔しないって決めたじゃないか、今の人生を後悔しないって。

目を見開く、手はまだ動く、俺はまだ、戦える。

らしくもない雄叫びを上げ全身に力を込める、全身から先ほどまで刺さっていた矢が抜けた。

「我が体はたとえ千本の矢に撃たれようと、千本の刃に斬られようと。我が意思は我が志は決して折れぬ。


見せてやるぜオリュンポス、これが人間の底力と、鬼に堕ちた男の覚悟だ!」

【月影流秘技:鬼人化】

皮膚に着いた血が蒸発する、周囲が一瞬にして高温になり。

俺の体が鬼へと変わっていく。

「呑まれちゃいない、大丈夫だ」

脆葉月を右手に持ち替えオリュンポスへと構える。

【月影流剣術:一刀両断】

一閃、たった一閃だった。

鬼に堕ちた男とこの世界を作った神の戦いの決着は。

そして、その一瞬は世界の終わりでもあった。

「見事だ、しかし、伝え忘れていたな。創造神が死ねば世界は消滅する、つまり、君も死ぬという事だ」

「消滅を止める方法はないのか」

「一つだけある、神を殺した人間が神になるということだ、心臓を捧げ世界の混交を保つ。そうすれば世界の消滅は止まるだろう」

「方法はどうすればいい」

「我が血を一滴飲め、そして心臓をえぐり出しアダムとイヴに渡せ。君が創造神と認められれば自動的に君は現実に戻され、消滅は止まるはずだ・・・」

その言葉を最後にオリュンポスはピタリと動かなくなった、体は斬れていない訳ではないが二つにはなっていない。

言われた通りオリュンポスの体から一滴血を拝借する、口から飲み込むと頭に激痛が走った。

一瞬だけくらっとしたが立っていられる、認められるとはどうすればいいのだろうか。

黙って心臓をえぐり出すと、いつの間にかアダムとイヴが近づいて来ていた、無言で手を差し伸べていた。

魔法で一時代用の心臓代わりを中に入れ心臓をアダムとイヴに渡す。

どうやって現実に戻されるのだろう、と気になっていると普通にアダムとイヴに首元を殴られ意識を失った。



「・・・く、ん!、だ、・・くん!、大輝くん!」

目を覚ますとそこには舞姫がいた、状況はよくわからないが、神奈川の病院らしい。

心配していたのだろうか、舞姫の瞳には涙が浮かんでいた。

「ふぁーっ、舞姫、今これどういう状況?」

「えーっ、と私が膝枕してたら少し大輝くんの手が動いたから名前読んだら、大輝くんが目を覚ましたの」

「なにがどうなって膝枕されることになった」

核心を突くと舞姫は分かり易く口笛を吹いて誤魔化していた。

「まぁいいや、ありがとう舞姫」

「う、ううん。お礼言われるような事じゃないし。本当なら私が大輝くんにお礼言うべき何だよね」

「なんで?」

「だって、私を助けるために怪我してまでしてくれたんでしょ?」

体を起き上がらせ舞姫の隣に座り、無言で舞姫にハグする。

「わっ!なにするの大輝くん」

「女の子を助けるのに理由なんていらないし、自分が払う犠牲ならどんな物でも払うべなんだよ」

「うん、ありがとう」

舞姫がお礼を言った直後、急激に胸が苦しくなった、外を見た限りなにかが消滅し始めてる傾向はない、心臓がないせいだろうか。

「わるい、舞姫。俺今日は家帰るわ、大事な用を思い出した」

パッと舞姫を離し、着替え病室を後にする、この一件のことも含め、ミスティに会って放さないとだめだろう。

いくら本人が嫌がろうが、無理矢理にでも話をしなくちゃならない、そんな気がした。



電話は繋がらないし、家にもいない。

体にムチを打ちながらあっちこっち回って、最終的にルカの所に戻って居場所を聞き出そうとしたのだが。

「GPSも切られてるから捜すのは無理だろうな」

「とことん嫌われたっぽいな俺」

「どんまい」

「お前に慰められると腹立つんだけど」

「自力で捜した方が早いと思うぞ、灯台下暗しって言うし」

「お前場所知ってるだろ」

「知らない」

「わかった、でも、つぎは無いからな。ミスティにもそう伝えとけ」

「あぁ、伝えとく」

部屋を出て早歩きで部屋を去る。

間違いない、あの時の番人と名乗っていた女は。

ドンッ、と強く壁を叩く、本当に嫌な予感しかしない。

「あれは、あの女は。ミスティだ」


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