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〇〇〇ハ死殺並ベ示シケリ  作者: ALFRED
生誕前
6/7

『君を愛す柔らかい視線』

待ってて頂いた人はお待たせしました


相変わらず駄文ですがよろしくお願いいたします

6話 『君を愛す柔らかい視線』


「……」


少女は一人で自宅のベットに横たわる。

彼女は人とは違う外見の特徴を持つ少女はその見た目から同世代の子供達は勿論。親以外の大人達からも禁忌的な目線を向けられる事がある。

少女、フィナは『白斑症』と呼ばれる頻繁に使われる筋肉の周りの皮膚の色素が落ちてゆく極々稀な皮膚疾患の持ち主だ。

日常生活では何ら問題は無かったが両親から受け継いだ褐色の肌がメラニンが抜け落ちてしまった部分を際立たせてしまう。

目元や口元、眉に頬に至るまで化粧をしているかのように褐色の肌に白い斑模様が浮き出ているのだ。良くも悪くも無邪気な子供がフィナを苛める理由としては十分過ぎるし見知らないものを警戒してしまうのは生物の性である。


薄暗く、少し埃っぽい部屋のベッドの上で膝を抱えて一人で泣いている少女の姿は少女のこれまでの心情を表現しているようだった。

フィナは着ているワンピースのポケットから二の種類で造られた二本一対の花飾りを大事そうに両手で持ちまた呟く。


「ま…ほうの……お兄…ちゃ…ん…」


花事態は道端に咲いているような変鉄もないピンク色の花だが、フィナにとってはかけがえのない宝物だ。


二ヶ月前、初めて出来たと思っていた友達が裏切り『魔物』と罵られ泣きながら走って逃げていく内に道に迷い、大人達が横目でフィナを眺めながら通りすぎていく中で物陰で一人泣いていた時に彼は現れた。

彼はフィナの目線に合わせようしたのだろうか、方膝を付いてしゃがむがフィナから見ればそれでも十分に大きく恐怖のあまり体が動かず「ひっ!」と悲鳴も上げる余裕さえない。

彼はフィナの様子を見て自分が恐れられている事を察すると困ったように頭を掻くと何かを閃いたのか掌に拳をポンと置くとフィナにこう言った。


「君は魔法を知ってる?」


魔法、それは魔法使いが使える人々を幸せにしてくれるフィナにとって憧れの存在だ。フィナは母が眠る前に聞かせてくれる『小人の魔法使い』がお気に入りで主人公の背が小さい女の子が身長を理由に回りから意地悪をされてもそれにめげず、様々な魔法を使って国中の人々を幸せにしていく姿はフィナには眩しかった。


「僕はね?魔法使いなんだ!」


彼は身振りを交えて満面の笑みを浮かべながらそう言った。


「……」


それに反してフィナが浮かべた表情はキョトーンやポカーンと擬音が出てきそうな顔だった。確かに魔法は存在する事を彼女は理解しているがそれは『小人の魔法使い』の主人公の小さな女の子が使えるものだとフィナは思っている。

よってフィナにとって男の発言は


『僕は女の子だよ!』


と宣言しているようにしか聞こえなかった。

笑顔で意味の分からない事を言う男を目の前にして思わず泣き止んでしまうフィナ。

勿論世間には魔術師と名前を変えて男性の魔法使いも存在するがまだ幼い彼女にとってはそれが真実だった。


「うーんやっぱり信じてくれないかぁ…よし!それじゃあ証拠に魔法を見せよう!」


フィナの表情をどう受け止めたかは分からないが彼は笑顔のまま背負った弓矢と大きな鉈を下ろし、右手の甲を下に向けて軽く拳を作る。


「!」


親から撫でられるよりも同い年の子供達から手を降り下ろされた回数の方が多いフィナは思わず体が固まり瞼を閉じてしまう。

しかし暫く経っても思った衝撃が来なかったため恐る恐るフィナは目を開けた。

すると目に入ったのはゴツゴツとした大きな手に優しく二本の指に摘ままれた小さく可愛らしいピンク色の花だった。


「どう?驚いた?」


そう言うと彼は右手を差し出す。フィナは殆ど無意識に花を受け取った。


「じゃあもう一回するよ?良く見ててね?」


彼はフィナに掌を良く見せると先程と同じ様に軽く拳を握り絞める。


「んん!…うぬぬぬ!えい!!」


すると別の小さなピンク色の花が一瞬で彼の右手に現れた。

フィナは驚愕し目を丸くして花と彼の顔を交互に見つめる。彼は優しく、悪戯っぽい笑顔を浮かべると今度は手に持った花をフィナの耳に掛けて花飾りにした。

その花飾りは少女と言えども整った顔立ちのフィナを際立たせる良いアクセントになっている。


「これで信じてくれた?」


彼はそのままフィナの頭を撫でる。

その感触は大きく、暖かく、柔らかくて優しい。それはまるで両親から撫でられているような安心感があった。


「……うん…」


この時点でフィナから彼への警戒心は薄れて小さいながらも返事が出来るようになった。


「信じてくれて良かった。でも、君はどうしてここに居るの?お父さんとお母さんは?」


「…いない」


「……そっか。じゃあお家は分かる?」


「……」


フィナは黙って頭をフルフルと振る。フィナは泣いていて自分が道に迷っていることを忘れていた。

もう家に帰れないかもしれない。

そう考えてしまい不安と恐怖でまた泣き出してしまった。


「うぅ…お父さん…お母さん…」


「……よし!お兄ちゃんと一緒にお家を探そう!」


「ひっぐ。…ぅえ?」


フィナは顔を涙と鼻水で汚し、嗚咽の混じった声を出しながら彼を見上げる。

彼は鉈と弓矢を素早く手に取り優しく微笑むとフィナの両脇に手を入れて軽々と持ち上げる。

フィナは「キャッ!」可愛らしい悲鳴を上げたが彼はそのまま割れ物を扱うようにフィナを優しく慎重に両手で抱き抱える。

彼の腕は逞しく胸板から伝わる鼓動は力強い。


「お兄ちゃんがお家まで送ってあげるから心配しなくていいよ?」


フィナが返事をする前に彼は立ち上がる。フィナは驚いて瞼を閉じてしまうが再び目を開けると違った世界が見えた。

今まで腕を目一杯伸ばさなければ届かなかったドアノブが眼下にあり前を見れば信じられないほど遠くまで見える。前を見れば空が広く感じた。見上げれば今まで届かないと思った空が、手を伸ばせば掴める気がした。

だが、何より違ったのは大人達の目だ。いつもは禁忌的な視線しか向けられなかったが、今では気まずそうに目を逸らしながら道の端に逃げるように寄る。

フィナは彼を見る。

抱き抱えられているため殆ど真下から見る彼の顔はあまり見えなかったが後光が差し輝いているように見えた。


すると子供の笑い声が聞こえた。

そっちに目を移すとフィナを魔物と呼んだイジメの主犯格の女の子とその取り巻きが路地から出てきた。

フィナは泣きこそしないものの恐怖で体が強張り呼吸が浅くなる。


「おいあれ…」


取り巻きの一人がフィナに気付き指を指す。


「?…どうしたの?」


彼の心配する声も聴こえずフィナはただ腕の中で震えた。

すると彼はフィナの目線を追って子供の集団を見つけた。


「ちょ!見られた!」


「わ!わ!どけ!」


「痛っ!まっ待ってよー!」


彼に見られた女の子の集団はお互いにぶつかりながら慌てて路地に逃げ込む。

最後の子は派手に転けながらも走り去る。あんなに恐かったイジメっ子があんなに慌てて逃げていく光景を目にした後、彼の顔を再び見る。


「…僕そんなに怖いのかな?」


彼はポツリと言ったがフィナには聞こえない。別の事で頭が一杯だった。

それは酔っ払った避け臭い母が前に話した昔話だ。


『フィナ~?今でこそぉお父さんはね?お腹が出てきてて、臭いしぃ、母ちゃんの尻の下にいるけどぉぉ。昔は母ちゃんを守ってくれるつよーい騎士様だったんだぁよ?』


『きしさま?』


『騎士様っていうのはぁ~…立派でぇ~格好良くてぇ~強くて~格好良くて~エヘヘヘヘヘ♪「お前を買うためなら地位も名誉も全部売り払ってやる。それくらいお前の事が欲しいんだ。」って言われてウキャ~~~!』


その後母の話が堂々巡りしてフィナが眠気で船を漕ぎ出した頃母は締まりのない笑顔で話を締め括った。


『だからね?フィナも~男の人を好きになると思うけどね?フィナが自分の嫌だって思ってる所も~好きになってくれる男の人を好きになってね?そしたら凄く幸せにあるから~…』


『お母さんはお父さんがお父さんで幸せ?』


『うん!知らない事だらけで大変だったけど新しい世界も見れてずごぐ(じあわ)じぇ!』


『じゃあフィナはお父さんを好きになる!』


『ダメ!お父ちゃんは母ちゃんの!』


『おわ!急に抱き付くな!危ないだろ!』


『私も!』


『フィナまで!?』


フィナはさっきの一連の流れを彼が自分の事を守ってくれたと思っていた。新しい世界も連れていってくれたとも。

フィナは殆ど無意識に口を開く。


「ねえ?魔法のお兄ちゃん…」


「ん?何?」


「お兄ちゃん…フィナの事が…怖くないの?」


ここの段でフィナは思い出したように恐怖した、もしも彼が自分を拒絶したら…この夢のような時間が終わってしまうと気付いたからだ。

しかし彼は一瞬呆けるとクスリと笑ってフィナの頭を撫でながらこう答えた。


「どこも怖くないよ?フィナちゃんは可愛いから」


「!!!」


可愛い。両親から何度も言われ続けられている筈の言葉が見ず知らずの彼から言われてフィナは自分がどうなったか分からなかった。

全部が視覚が、聴覚が、嗅覚が曖昧になって。なのに触角だけが活きていて服越しから伝わる彼の体温がこれでもかと言うくらいに熱く感じる。

鼓動が早くなりフワフワと自分の体が浮いているように感じて風に飛ばされないか怖くて彼の服をキュッと掴んでしまう。

それに彼と目が合うと顔が燃えるように熱くなり自分が病気にかかってしまったのかと思った。


「フィナ?どうしたの!大丈夫かい!」


母親の声でフィナは我に返る。


「お母さん!」


フィナが腕を伸ばすとフィナの母は彼から奪うように抱き抱える。


「さっきフィナと遊んでる筈の子達が逃げてるのを見たんだけど、フィナだけが居なかったから心配したよ…あぁ…目もこんなに腫らせて…ゴメンね、辛かっただろ?」


「ううん!もう大丈夫!魔法のお兄ちゃんが居たから!」


「フィナ?あんた…」


その光景を眺めて彼は満足そうな顔をして静かに立ち去ろうとする。


「ちょっと待ちな!」


フィナの母は大男の彼の襟を掴み引き止める。突然後ろから捕まれて首が締まった彼は「ぐえっ!」と苦しそうな声をだす。


「礼も言わせず帰るなんて何考えてるんだい!!」


体格の差をものともせず彼に有無を言わせない態度で道の真ん中で怒鳴る。

彼はタジタジで腰をしきりに曲げて何度も頭を下げて大人しく謝る。


「すいません!すいません!」


「男がそんなに情けなくペコペコするんじゃないよ!」


「お、お母さん止めて!」


フィナはいつも母が父に怒鳴っている姿を見ているのでここからのお説教が長くなると察して母の首に抱きついて止めた。


「魔法のお兄ちゃんは何も悪くないの!フィナを守ってくれたの!」


「…ほう?そうかい?」


フィナの母は眼光を尖らせニヤリと笑う。

彼にその様子は見られていないがもし見られていたらどうなっていたか分からない。


「いやぁ、いきなり説教して悪かったねお兄さん。家の娘が世話になったね」


「いえ、たまたま通りかかっただけでして」


「それでもだよ…悲しいけどこの子を助けてくれる人の方が少ないからね…」


フィナの母がフィナの頬を優しく撫で、悲しそうに笑いながら彼に言った。


「……本当に悲しいですね」


「世知辛い世の中だよ本当…」


フィナの母はフィナを見つめながら、彼は自分を見るようにフィナと目を合わせている。


「…っ!あぁ!ダメだねぇあたしゃ!こんな話する所じゃないのに年のせいかどうしても湿っぽくなっちまう!…そうだ!大したものは無いけどご飯食べてくかい?今日はシチューだよ!」


「シチュー!!」


「そうだよ?フィナの好きなシチューさ!」


今日の夕飯が大好物のシチューだと聞いてフィナは咲いた花のような笑顔を母の腕の中で見せる。

その笑顔のまま彼に顔を向けると言葉を続ける。


「まほうのお兄ちゃんも来ようよ!お母さんのシチュー!スッゴク美味しいよ!」


「ですが俺みたいなのが…」


「『みたいな』じゃないよ!」


彼の言葉を遮ってフィナがこれまでの人生の中で一番大きな声を出す。

彼はただ驚いただけだがフィナの母は信じられないと目を丸くして自分の娘を見る。フィナは肌の色のせいで同世代の子供からイジメられたり大人からも遠慮のない罵声を浴びせられたせいで酷く臆病になり家の回りを歩くのも怖がってしまう。

そんな娘が巨声を上げて今日初めて会った男に自分の意見を自分から発しているのだ。心境に変化があったことは先程から分かっていたがここまでだとは思わなかった。


「お母さんいつも言ってるよ!えっと…人のかちは、見ただけじゃ分からないって!だから自分をさげ!…さげぇ?えっとぉ…」


「…フィナ」


見栄なのか、それとも母からの言葉を必死に思い出しているのかは分からないが難しい言葉を使おうとして語尾が次第に下がっていく娘を見ながら母の目はうっすらと雫が溜まっていく。


「本当にお兄さんには感謝しなきゃね…この子がこんな事言えるようになるなんて…あぁ!もう!年は本当に取りたくないね!涙脆くなっちまう!」


涙を手の甲で拭き取り明るく笑うフィナの母。フィナは何が起きたか分からずキョトンとした顔をしており二人を交互に見つめる。

その顔と仕草が愛らしく二人は声を出して笑ってしまう、突然笑いだした二人に驚いたフィナの反応がまた可愛く二人はまた笑いだしてしまう。


「ハハハハ!ゴメンねフィナちゃん、ありがとう。フィナちゃんが言いたいことはちゃんと分かったからもう大丈夫だよ」


「ほんとに?」


「うん。もう自分の事を『なんか』って言わないよ」


「うん!じゃあはい!」


フィナは右手の小指を彼に差し出す。


「指切りか…懐かしいな」


彼も小指を差し出す。

しかし


「捕まえたよ」


横からフィナの母の手が伸び彼の手首を掴む。その握力から『逃がさない』という意志が彼に伝わる。


「…えぇーと」


「悪いね。お兄さん何だかんだで理由付けて帰っちゃいそうだったからさぁ」


「お母さんありがとう!」


「ええ!?」


先程までの涙ぐむ雰囲気が嘘のように散らばり母と娘の見事なコンビネーションにより彼は罠に嵌まってしまった。


「で、ですが僕自分で言うのも何ですけど…恐がられる顔をしているのでご主人にご迷惑が掛かるのでは?」


「ハハ!家の旦那の心配してくれているのかい?黙らせるから安心しな!」


「…えぇ……」


「まほうのお兄ちゃん…イヤなの?」


「うぐっ!」


女の子に涙目で見上げられれば大抵の男は嫌とは言えない。自分の娘が知ってか知らずかそんな技術を使いだしているので将来娘が悪女になるのではないかと心配する母であった。



そんなこんなで楽しかったあの日の夕食からもう二ヶ月、あれから彼…『ヒル』とは会えていない。

見掛ける事はある、しかしいつもヒルには自分と少し年が上くらいの女の子が居て話し掛けることが出来ないのだ。

ヒルは彼女と一緒に居るときはとても楽しそうで入り込む余地がない、時間を見付けてヒルを見付けては隙を窺うが今まで成功したことがない。


「…いっそのこと家を特定して」


最近ではそんな物騒なことまで考えるようになってしまった。

最近では凄まじい『愛』の力でイジメっ子も自力で撃退出来るようになったのは良いことなのだが、母の心配とは別の方向に突き進みつつある少女は将来が不安である。


「ん!?」


フィナの頭に鋭い刺激が走る!

刺激を受けるとフィナはベットから飛び起き慌てて両親が経営する自宅と繋がった武具店へ駆け出す。

理由は分からない、だが『行かねばならない』と刺激を感じた。強烈に。

裏口から店に到着すると店主たる父親が女の子相手に接客していた。


その女の子こそフィナが目の敵にしている恋敵。『フレデリカ』であった。

ここまで読んで頂き誠にありがとうございます

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