爆弾投下
「なら、俺と遊べば良いじゃん!」
凹んでるミコトの話を聞いたリュカが出した答えがこれだ。
「えっ、話聞いてた? 私ドジって部屋でおとなししくしてて下さいって言われたんだけど」
「あっ、そっか! なら、外で遊ぶことできねぇな」
「いや、そうじゃなくてね!」
どうしても、遊びに結びつけるリュカに美琴は頭を抱える。リュカにしては美琴の悩みなどあって無いようなものなのかもしれない。
「まーた、お前ら。何やってるわけ? サボり?」
やっぱりここかと呆れ声で現れたルーファスに、ヤバイと退散しようとするリュカ。どうやら、リュカを探しに来たらしい。
「嬢ちゃんも、こんな所、ジルヴェスターに見られても知らねーぜ?」
流石にリュカ相手に目くじらは立てないだろうが、そう忠告するルーファスに美琴は首を傾げる。これはわかってないなと思ったルーファスは頭を抱えながらも、リュカの襟首を掴む。
「お前も! このくっそ忙しい時になにサボろうとしてやがる!」
「はぁ!? 忙しいって、俺知らねーし! 何があるんだよ!?」
「何って、ほら、あれだ! どっかのお偉いさんが来るって話だよな! なぁ、嬢ちゃん」
嬢ちゃんと言われても、そんな話は聞いていない。困惑した様子の美琴にルーファスは眉根を寄せる。城内で何かある時は極秘以外はメイドが準備やら何やらやるので早めに通達が来ているはずだ。その事にルーファスも困惑していると未だに襟元を掴まれたままのリュカが代わりに答える。
「ミコト今日から仕事ないらしいよ」
「はぁ!? 何!? 嬢ちゃんまた何かやらかしちゃったわけ?」
目を見開き驚くルーファスに美琴は手で顔を覆う。またというのは間違いじゃない。少し前に塀の近くに子猫がいたことがあった。真白な毛並みに金色のつぶらな瞳、スリスリ足元にすり寄ってくるその子猫にノックアウトされたミコトはその子猫が弱っていることもあり飼いたいと相談するためジルヴェスターに相談したのだ。するとどっこい。その子猫は子猫ではく魔獣で本来なら人に懐くどころか人を襲うらしい。しかも、結界を張ってあった城内に入り込んでいたこともあり、どこから入ったのかなどなど問題が起き、一時期プチパニックになったのだ。そのこともあり、ジルヴェスターの仕事は更に増え、会えない時間が増えたのは言うまでもない
「あの時は結界がどっか緩んでるんじゃないかって、警備が大変だったよなぁ」
「いや、本当すみません」
原因は何にしろ仕事を増やしてしまったのは申し訳ない。そんな美琴に別にいいけどと二人は笑う。
「まぁ、俺も人のこと言えねーし! 次で挽回しよーぜ! ってか、そのお偉いさんって言うのはドルシュのことじゃねーの? 周りが騒いでたし!」
「あぁ!? 騒がれてんのは第一と第五夫人だろ? 大体ドルシュ如きに動くわけねーだろうが!」
凄いいわれようのドルシュだが、美琴が気になったのはそこではなかった。聞きたいようで聞きたくない質問に喉を鳴らしながら恐る恐る二人に問いかける。
「ねぇ、ラインティアって一夫多妻制なの?」
「いっぷたさい? 何だそれ?」
聞き覚えのない単語に二人が首を傾げていると、美琴は一人の夫に沢山の妻がいることと説明をする。そうすると納得したようにルーファスが頷いた。
「そりゃ、ラインティアがそうってわけじゃなくて、種族、家柄によっても違うぜ。嬢ちゃんの言う一夫多妻ってやつもいるし、逆で奥さん一人に対して旦那沢山とか、お互い一人ずつとかなぁ。だから、相手に確認しねーと大変なことになんだよな」
「よっ! 経験者!」
「うっせー! って! あぁ! 呼び出しかかっちまったじゃねーか! リュカ! てめぇ、さっさと持ち場に戻れよ! いいな!」
耳に手を当てたかと思うと嫌そうな顔をしてリュカを怒鳴るとルーファスはその場から去って行った。伝達魔法の一種なのだろうが、あいにく美琴には良くわからない。リュカは面倒そうにため息を吐くと立ち上がりズボンに着いた土を払い伸びをする。その瞬間ある一点でその視点が止まった。それにつられ美琴もリュカの視線を追うように向かいにある二階の渡り廊下の方に顔を動かす。
「あれ? レーア姫じゃん?」
「レーア姫?」
金色のフワフワのロングの髪に、エメラルドグリーンの瞳に白い肌。その身を包むのはレースが淡いピンクのドレス。それはまるでお伽話の中から抜け出たようなお姫様。ジェラルドへ謁見だろうかと呑気な事を考えていると、リュカが本日最大の爆弾を投下してきた。
「そっ! ジルヴェスターの婚約者!」




