始まりは異世界から
やっと書きたかった話を書くことができます。やってきました異世界人の続きになりますが、前作読まなくても大丈夫なように仕上げますのでよろしくお願いいたします。
「お嬢ちゃん……お嬢ちゃん?大丈夫かい?」
「えっ?」
突然かけられた声に美琴はハッと我に返る。まるで眠りから引き戻されたような感覚に、軽く頭を振る。霞んでいた目を擦り、目の前を見ると、そこには心配そうな顔をしたおばさんがこちらを覗きこんでいた。
「大丈夫かい?道の真ん中でボーっと立ってたら危ないよ。ここは人の通りが多いからね」
ほらほら、こっちへおいでとおばさんは美琴の腕を引く。突然のことに戸惑いながら美琴は引かれるまま一歩足を踏み出した。しかし、次の瞬間その足は止まってしまう。
「どこ、ここ?」
おばさんが目の前から離れた瞬間、飛び込んできた光景に目を見開く。美琴の目に映りこんだのは、日本とはかけ離れた光景だった。街の作りはヨーロッパ風いや、中世風というところだろう。近代的とは呼べるような感じではない。
だが、通り過ぎていく人の髪や目はカラフルな上、着ている物も見たことのない物ばかりで昔というのも何かおかしい。
「どうしたんだい?気分でも悪いのかい!?」
理解できない状況に脱力した体は、おばさんによって、道の端まで抱えられ運ばれる。そして、その現状で更に異変に気付く。本来ならば、こんなに軽々美琴を運べるはずがないのだ。
「体が……」
「体がどうしたんだい!?顔もさっきより真っ青じゃないかい!」
慌てるおばさんをよそに美琴は自分の手を見つめ、握ったり開いたり繰り返す。力が入らないとか、痺れているとかそういうのではない。
「……縮んでる?」
それを確かめるように店のガラスに自身を映す。やはりというべきか、そこに本来映るべき25歳の姿はない。背中まである茶色の髪はそのままに顔は幼くなり、谷間まではなくとも立派にあった胸は見る影もなくなっていた。その容姿は大体10歳前後だろう。
自身に起こった現象に頭がついていかず、カタカタ震える体を抱きしめる。さらに体調を悪くしたような美琴の様子におばさんは困惑する。
「困ったね。とりあえず、これでも飲みな。落ち着くよ」
まるでそうすることが当たり前のように指を鳴らし、その手にコップを出す。そのモーションに美琴は絶句する。なぜならば知っているのだ。それが手品ではないことを。それが、何なのかを。
「魔法……」
そう、それは、一年前ある男が見せたものと一緒だった。まさかと美琴は再度周りを見渡す。もしこの世界が彼のいる場所ならば、ここは確実に日本ではない。いや、地球でさえない。
「異世界……ラインティア……」