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頼み……イヤ、人の話を聞け

な~んか、こういう話しの方が書くペース良いのは何故だろう?

後、最後に書かれてるのは本当に起きた事です。その後、キツかったぜ、チクショウ。

「……ふわぁ……」


 ある小道を欠伸をしながらブラブラ……イヤ、ダラダラ〜と歩く巫女装束の彼女。『旧鼠』達を殲滅し、あれこれ回収し終えて拠点への帰り道の道中である。


「あ〜〜眠ぃ。さっさと帰って寝よ……」


 目を擦りながら歩く彼女。かなりの眠気なのか、ややフラつきながら歩いているので微妙に真っ直ぐ進んでいない。何時ものダルそうな雰囲気もプラス七十パーセントと言った具合である。白衣に付いた返り血の跡が無ければ、戦闘の後だと誰も気づかないであろう。


「…………ん?」


――と、ふと彼女の【妖気感知】に引っ掛かる一つの妖気。やや朧気ではあるが間違い無い、確かに感じる。


「……昼間だよな」


 空高く爛々と輝く太陽を見上げ彼女は呟く。

 別に有り得ない事では無い。妖怪達の活動が活発になるのが夜の時間だというだけで、昼間に現れない訳ではない。現に『すねこすり』と言った生きる証拠が居るのだから。最も、感じる妖気の度合いから、精々(せいぜい)低級妖怪であろうが。


「……(つい)でだ、行ってみるか」


 彼女は進む先を変えて、道を外れて妖気の元へと向かって行った……微妙にフラつきながら。




――――Time(ちょっと)・Going(時間が飛ぶぜ!)――――


 (ところ)変わって、道からやや奥入った所に流れる小川。静かに流れる水はとても澄んでいて、そこに住む小魚どころか川底の石の一つ一つまでハッキリと見える。現代日本ならば、○○の天然水と銘打って売られる事間違い無しの清らかな水が流れるその小川の側にしゃがみ込んで、一心不乱に作業するモノ(・・)が居た。


「――小豆洗おか♪ 人取って喰おか♪」


 薄くなった頭にチョビ髭生やしたおっちゃんの顔。法被(はっぴ)半股引(はんだこ)に似た服を着て細身ながらも引き締まった腕と脚を晒し、小柄な身体を更に小さくするかの様に腰を屈めて、呑気に歌いながらザルの中の小豆を小川の水でシャカシャカ洗っている妖怪――『小豆洗い』。

 風の音と川のせせらぎを聞きながら陽気にリズム良く小豆を洗う、妖怪と言えど害の無いその姿に……


「は〜いげんき(元気)〜こっちはちょう()げんき(元気)〜こんなとこでであ(出会)えるなんてちょう()きぐう(奇遇)〜せっかくであ(出会)えたのもなにかのえん()だし〜ちょっとたの()()いてくんないってかん()じ〜みたいな〜」

「何やねんお前はっ?!! 突然現れて人に包丁突きつけんなやっ!! と言うか何時現れた!! どっから現れたんやっ!! 後、何言ってんだか良うわからん上に何で棒読みなんやっ?!!」


……突然現れ包丁を片手に脅迫する者が居た。突然の闖入者に思いついた事全てを一気に捲し立てる『小豆洗い』。包丁突きつけられながも、唾を飛ばしながらの激しい剣幕に彼女は……


「……イヤ、アンタ、()じゃ無ーじゃん」


……至極どうでもいい事をツッ込んだ。


「じゃかましいわっ!! で、いったい何なんやっ! ワイを退治しに来たんかっ?!」


 喉元の包丁に意識を向けながらも彼女から眼を離さない『小豆洗い』。タダでは殺られんぞ! と言う気迫を込めた瞳を前にして彼女は――キョトンとした。


「……何で、そうなんだよ? オレは頼みを聞いてくれないかって言ったんだぜ?」

「……あん?」


 彼女の言葉にキョトンとし返す『小豆洗い』。そんな『小豆洗い』に、彼女は突きつけていた包丁を『小豆洗い』の眼前に持っていき言う。


「これ――洗って(・・・)くんね?」

「…………何やて?」


 困惑する『小豆洗い』に、彼女は淡々と言葉を続ける。


「だから、洗ってくんね? ちょっとこの包丁『穢れ』が溜まってんでな。ここらで一旦祓っておこうと思ってた所でアンタに出会えたんだ。洗うのはアンタの専門分野だろ?」


 ん? と軽く小首を傾げながら言う彼女。昔ながらの友達に頼む様な、気さく且つ自然な態度。自分が巫女で相手が妖怪と言った事を完全にアウト・オブ・意識に追いやっている。

 しかし、そんな彼女に対して『小豆洗い』は、フンと顔を背ける。


「お断りやっ!!」

「……何で?」


 彼女の声に、『小豆洗い』は屈めていた腰をシャキッと伸ばし、片手でしっかりザルをキープしながら空いている方の手で指をビシッと指しつつ吼える。


「ワイにも小なりと言えど妖怪としての誇りがあるんやっ! いきなり現れた奴の言いなりに何てなる訳無いやろっ! しかもその相手がワイ等の敵である巫女さん何て尚更やっ!! どうしてもワイに言う事聞かせたい、ちゅーんなら力尽くで「乗った」……へっ?」




――――Now・(オハナ)Talking(シ中だぜ!)――――


……数秒後。『小豆洗い』は地に倒れ伏していた。その左頬にはクッキリと拳の跡が付いている。

 そんな『小豆洗い』を見下ろしながら彼女は告げる。


「これで良いか?」

「――っざけんなやっ!!」


 彼女の言葉に反応してガバッと起き上がる『小豆洗い』。一度倒されたと言っても、まだその眼には闘志の色が強く残っている。


「この程度で! ワイがお前の言う事何て聞く訳無い「わかった」……はっ?」




――――Now・Talking(またオハナシ)・Again(中だぜ!)――――


……数秒後。『小豆洗い』は地に倒れ伏していた。その両頬にはクッキリと拳の跡が付いている。

 そんな『小豆洗い』を見下ろしながら彼女は告げる。


「これで良いか?」

「――舐めんなやっ!!」


 彼女の言葉に反応してガバッと起き上がる『小豆洗い』。二度倒されたと言っても、まだその眼には闘志の色が残っている。


「この程度で! ワイがお前の言う事何て聞く訳無い「わかった」……え〜と?」




――――Now(また)・Talking(またオハナシ)・Again(中だぜ!)――――


……数秒後。『小豆洗い』は地に倒れ伏していた。その両頬にはクッキリと拳の跡が付いている上に鼻が曲がっている。

 そんな『小豆洗い』を見下ろしながら彼女は告げる。


「これで良いか?」

「――みくびるなやっ!」


 彼女の言葉に反応してガバッと起き上がる『小豆洗い』。三度倒されたと言っても、まだその眼には闘志の色がやや(・・)残っている。


「この程度で! ワイがお前の言う事何て聞く訳無い「わかった」……あの〜?」




――――Now(また)・Talking(またまたオハナシ)・Again(中だぜ!)――――


……数秒後。『小豆洗い』は地に倒れ伏していた。その両頬にはクッキリと拳の跡が付いている上に鼻が曲がっていて顎が腫れ上がっている。

 そんな『小豆洗い』を見下ろしながら彼女は告げる。


「これで良いか?」

「――まだまだや……」


 彼女の言葉に反応して何とか起き上がる『小豆洗い』。四度倒されたと言っても、まだその眼には闘志の色が微か(・・)に残っている。


「この程度で、ワイがお前の言う事何て聞く訳無い「わかった」……イヤ、スンマヘン、ちょっと?」




――――Now・(……)Talking(懲りない奴)・Ag(だぜ)ain――――


……十数秒後。『小豆洗い』は地に倒れ伏していた。全身ボコボコでプシュ〜と言った煙が立っている。

 そんな『小豆洗い』を見下ろしながら彼女は告げる。


「これで良いか?」

「――堪忍して下さい……」


 彼女の言葉に反応してガクガクと震える脚に喝を入れて何とか起き上がる『小豆洗い』。五度倒された事で(ようや)く降参した様である。


「つーかさ。オレも別に鬼じゃ無いんだから、素直に聞いてくれればお礼だってする積りだったんだぜ?」

「…………」


 人を……妖怪をここまでボコッといて何言ってんのやっ!! と言った恨みの視線を完全にスルーして彼女は腰の『那由多の袋』に手を突っ込みある物を取り出す。

 しかし、そのブツを見るよりも先に『小豆洗い』は再び吼える。


「フンッ! ワイがそんな金や物なんかに釣られると本気で「丹波原産。最高級『大納言小豆』」――何でもしますっ!!」

「……返事速い上に腰低っ。妖怪としての誇りは何処行ったんだよ、オマエ?」


 現物を見た瞬間に即効で土下座する『小豆洗い』。あまりの変わり身の速さに呆れる彼女。

 しかし『小豆洗い』は土下座したまま顔だけ上げて言う。


「そんな誇り! その小豆の前では何の価値も有らへん!!」

「…………まあ、レアアイテムだって事は認めるけど、それ程か?」


 尋常では無い『小豆洗い』の眼の輝きに若干引くと言うか気圧される彼女。価値観は人其々(それぞれ)と言うが流石にコレは異常では? 頭ン中でツッこみつつも小豆と包丁を一緒に渡す。『小豆洗い』は瞬時に小豆を大切に懐に仕舞うと、包丁を川で洗い始める。


(交渉に成功したって事で良いんだよな? こんな所で『中立妖怪』に出会えたのは運が良かったけどな)


 『九十九妖異譚』ゲーム内に存在した『中立妖怪』が、ちゃんとこの世界にも居た事にウンウンと頷く彼女。彼等は交渉に成功すれば益を齎してくれるので、その存在を確認出来たのは運が良い。

 しかも交渉の仕方が、ゲーム内とは若干違っても通用する事は更に収穫と言えよう。


「他のも居れば、何時か遭う時が来るだろ」


 『小豆洗い』の後ろ姿を眺めながら、彼女はそう呟いた。




――――Now・(洗濯)Clean(中だぜ!)ing――――


「終わったで」

「ん」


 約十分後。『小豆洗い』から洗い終わった包丁を受け取って、彼女はジ〜と眺める。まだ水に濡れているが、『穢れ』の方は微塵も残っていない、完璧な仕上がりである。


「良い仕事するな」

「当たり前や! 要件済んだら、さっさと行けや!」


 言うなり彼女に背を向けて、先程貰った最高級大納言小豆をザルに入れ洗い始める。時折、「この指触り!」とか「この研ぎ具合!」とか、嬉しそうな声が聞こえてくる。


「…………」


 そんな『小豆洗い』の背中を眺める彼女。ハッキリ言って無防備の一言に尽きる。今、この手の包丁を刺せば一撃で仕留められる状況であるが――彼女は包丁を『那由多の袋』に仕舞うと、アッサリ身を翻してその場から立ち去った。


「……ふわぁ……眠ぃ」


 忘れていた眠気が戻ってくるのを実感した彼女は、足早に拠点への帰路についた。既にその意識からは『小豆洗い』の事は消えている……もう、価値を失ったかの様に。














「あっ、そうだ。この話し書いてる最中に一回データ消えたんだけど、それもオマエが洗った所為か?」

「知らんわっ!!」

ご愛読有難うございました。


本日の解説。


――――『小豆洗い』――――


低級『妖怪』。

数多く存在する『中立妖怪』の一体。交渉に成功すれば持っている武器・防具を洗って、憑いている『穢れ』を無くしてくれる。

仮に交渉に失敗しても、時を置けばまた再度交渉出来る。しかし、一度でも攻撃してしまえば二度と交渉出来なくなる。


――――『穢れ』――――


ゲーム内に於いては数値で表されていた装備品のバッドステータス。

妖怪と戦う毎に少しずつ増えていき、一定値を超えると『妖刀』などと言った呪われた装備品的な物になる。

専用の場所に行くか、専用のアイテムを使うか、『小豆洗い』に洗って貰うしか無くす手立ては無い。


――――『大納言小豆』――――


詳しくはWebで。

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