第一詩:最後の誕生日
過去は遠ざかるのみだが
未来は絶え間なく歩み来る
そして僕には
どちらを向いて
生きていくのか
選ぶ自由があった
1月21日、くもり
窓の外にはいつもの時間に
あの男の子がこの道を通る
学校の通学路なのだろう
友達とはしゃぎながら
やがてその先の交差点を
左に曲がって行ってしまう
雨が降らなくて
本当に良かった
傘であの子の顔が
見えなくなるから……
最後の誕生日なんて
おかしな話だと思った
僕は何のことなのだか
さっぱりわからなかった
僕は父さんと二人きり
この街で暮らしている
その父さんが今夜
最後の誕生日会に
出ると言っていた
僕も一緒に行く事になった
夕ご飯を作る人がこの家に
誰もいないからなのだけど
あまり騒いではいけないよ
と、父さんは悲しそうな
笑顔を浮かべてそう言った
最後の誕生日
不思議な言葉だと思った
その意味を僕はなぜか
父さんに聞けなかった
僕の父さんの仕事の
恩人の子供の誕生日
という事だそうだが
僕と同じくらいの歳の
女の子のお祝いらしい
友達になってあげなさい
父さんは僕にそう言って
また悲しそうに笑った
そして僕は
一人の女の子に出会った
初めて見る顔だった
こんなに近くに
住んでいるのに
大勢の人に囲まれて
その娘も同じだった
悲しそうに笑ってた
一生懸命笑っていた
僕はきっとあの娘と
友達にならずには
いられなかったんだ
でもその時の僕は
何も知らなかった
最後の誕生日なんて
おかしな話だと思った
僕は何のことなのだか
さっぱりわからなかった
Destination Station of a Dream
http://destination.side-story.net/