六花
以前、別名義で運営していたHPからの転載な習作です。
重たい空を仰いでみれば 舞い落ちるのは 白くて冷たい むつのはな
少女が、空から降ってき来た。
某国民的人気アニメの一シーンのように、ゆっくりと。
瞬きを数回、自分の頬を抓ってみる……痛い。
痛いということは、多分、恐らく、これは夢ではなくて現実で。
降って来る少女は、どこか朧気で白くて
助けないと。 と、頭では思うのに、足先からゆっくりと降りて来るから
何故か咄嗟に、両手ではなく、片手を出した。
程なく、爪先が掌に触れる……重さは感じない。
ふと、少女を見上げる。
少女は、一瞬だけ悲しげな笑みを浮かべて、ついで掌に感じる冷たさ。
ビクッとする身体。
気付居た時には少女は消えていた。
そして僕の掌には、消えずに残る雪の結晶。
これは、初雪が降った日の不思議なフシギな出来事。
「あれ、携帯のストラップ変えたんだー!! 雪の結晶? ねぇ触って良い?」
「……ダメ」
「えー、ケチ! なんで」
「だって、雪の結晶なんだから溶けるだろ」
「ストラップが人肌で溶けるわけないじゃん」
この結晶は溶けるのだ。 と、笑って。けれど、何故か人に言っては触らせない。
あのことを言ってしまえば、
俺の中の少女まで、溶けて消えそうな気がするから。