存外進んでいました。
9話目です。
書きたいことが多すぎて話としてまとめきれません。
それでもいい方は、どうぞ・・・
「―――じゃあ次で最後の質問だ・・・」
オークラン王国 首都クランクラン 西門前警備兵詰め所
その詰め所で俺・・・私、カーラ・グライスは騎士ディックと対面していた。
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「―――じゃあ次で最後の質問だ・・・」
そうディックが言った。
―――長かった。本当に長かった。
詰め所につれてこられ、仮証発行用に色々質問を受けたが質問の内容は多岐に渡った。
名前から始まり、年齢、性別(見たら解るだろ!?)、趣味(お見合いか!?)などなど様々な質問であった。
隠すことでもないので大体はそのまま話したが、良かったのだろうか?
―――さて、最後の質問はなんだろうか?
「―――・・・君は、この国で何がしたい?」
コレには困った。別にしたいことがあるわけじゃない。
・・・。
・・・。
・・・。
―――転生系小説の王道のネタで行くか・・・。
「―――宿でも始めてみようかと・・・」
え?王道でも何でも無いって?・・・ばか言っちゃいけないよ!!こういった異世界物は食文化が進んでいないことがほとんどじゃないか!それを改善しようと主人公が奮闘!―――・・・するもまだ幼い主人公ではどうすることも出来ず・・・、村の食堂やら町のパン屋などに技術を売り込んで食を改善していく。
素晴らしいハートフルストーリーである。
しかし、技術を売り込まないといけないので独占出来ていないのである!!!
””” これは由々しき事態ではないか!!! ”””
折角の技術が自分では実現できないので仕方なく売りつける。多分それは子供だからであろう。―――・・・ならば大人の私は自ら発信源になってやるのだ!!!
コレが王道ではなくてなんなのだ!!!我ここに食の神になりにける!!!
―――あとなんか宿屋の女将さんてすごい良いキャラ多い気がするんだよねぇ。
なんて事を誰に説明してるのか解らないが考えていると、
「―――・・・宿か、いいなぁ。だがそれには王の許可、及び市民権またはB級以上の冒険者ランクが必要だが、・・・持っていないだろう?」
「―――・・・なぜわかった?」
「・・・通行証を持っていなかったからな。市民なら市民カード、冒険者ならギルドカードを持っているはずだ、それが通行証代わりになる」
そういってディックは甲冑の首元から鎖に繋がった木片っぽいカードを取り出した。
「コレが市民カードだ。名前や職業などの情報が入っている記憶媒体だな。
木片っぽいのは見分けを付けやすくするための処置で、実際は魔法金属だ。
ギルドカードはランク別で色分けされているしもっと金属っぽいぞ。
カードを見て木片っぽいなら市民、金属っぽいなら冒険者と見分けることが出来る。
なかなか優れものだぞ」
存外進んだ技術だった。
「まぁ手っ取り早く宿をやるなら冒険者ギルドに行ってB級以上の冒険者になることだ。
だが気をつけたほうが良い、冒険者はゴロツキの集まりだ。ランクが高くなれば色々仕事をこなしてきたベテランなので態度もそれなりのものを身につけているが、下位ランクの冒険者はチンピラと変わらんからな・・・。君の様に美しい女性なら何をされるかわからんぞ?」
会話の合間合間にこちらの気分を良くするための発言をサラリと入れるあたり、流石は遊び人といったところか。
何だ?やはり私は狙われているのか?などとディックのイケメン面を見ながら更に警戒を深めるカーラ。
「そうか、ありがとう」
「あぁそれと、冒険者ギルドに行くなら城門から伸びる大通りを真っ直ぐ王城に向かって歩き、城壁沿いをぐるりと迂回して北東の道に進み、貴族街を抜けた一番最初の大きな建物だからすぐにわかるぞ。―――・・・これから冒険者になるにしてもならないにしても何かしら世話になる建物だからな、覚えておいて損はないはずだ。」
―――妙に親切だなこれも【ご都合主義】か?
(いえいえ、コレは下心ですねぇ)
いきなりどこかの最高神の声が聞こえた気がした。
「―――・・・っと、コレが仮証だ、無くすなよ?」
「・・・!?今何処から出した?」
そうディックが渡してきたのは真っ白いプレートだった。
しかし今までは何処にも無かったのだ、本当に急に現れた。
私の驚いた顔(といっても少し眉が上がっただけだが)がそれほど良かったのか、
目の前のイケメン面が破顔し、得意げに説明し始めた。
「この机は見た目はただの机だが魔道具でな?情報を入れた紙を差し込むと仮証のプレートとして発行してくれるんだ。優れものだろう?」
「確かにな・・・。このプレートだが無くすとどうなるんだ?」
―――本当に進んだ技術だな。でもこれだけお手ごろなら再発行も簡単に出来そうだな。
「―――・・・金貨四千枚分の強制労働と再発行に銀貨一枚が必要だ」
「――――――・・・・・・罰が厳しすぎないか?」
「最初は再発行料だけで済んだらしいが余りに簡単な罰則なので無くすものが続出してな。金貨四千枚ならまだましで、市民やギルドカードを無くした場合は、金貨九千枚分に増える。―――・・・まぁ簡単に言えばやんちゃ坊主がさわやか好青年になれるくらいの年月を働くといえば分かり易いだろう?」
―――怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!罰が怖すぎる!!!
やんちゃ坊主がさわやか好青年になる年月って何だ!!?三年や五年では聞かないんじゃないか!?
「まぁそんなに心配しなくても、市民や冒険者になって追加で【オートリターン】の魔法をかけてもらえば自動で自分の手元に戻ってくるようになるぞ」
―――なんだやはり無くさないような措置があるんじゃないか。
「―――分かった、なくさない。とりあえずもう行っていいのか?」
「あぁ、いいぞ。―――それより今日の宿はどうするんだ?」
――――?
「そんなの聞いてどうする気だ?」
「いやなにこの街に着たばかりだろう?お勧めの宿でも教えておこうかと思って」
「―――・・・まぁいい。そのお勧めの宿とやらを教えてくれ」
私は警戒心むき出しでディックの言うお勧めの宿を聞いた。
「そう警戒するな、変な所は教えない。君は宿をやりたいんだろう?
それなら・・・、ギルドから東に三軒進んだ先にある『歓喜の庭園亭』に行くといい」
『歓喜の庭園亭』か・・・。えらい名前だな。
「分かった。ありがとう。
それじゃまた」
そう言って私はディックと別れた。
「まず目指すのはギルドだな・・・。とりあえずB級以上にさっさとなって宿を始めないとな」
これが後に伝説となる、冒険者『カーラ・グライス』の始まりの意気込みであった。
そして更にカーラは知ることとなる。
―――自分の発言がすでにフラグであることを・・・。
お分かりいただけただろうか。
こんな感じです。
また説明チックになってきました。
どうすればいいのか・・・。
まぁ次話もよろしくお願いします。