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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第三章:宿屋までの道のり編
8/61

到着しました。がしかし・・・。

八話目です。


どうぞ・・・

オークラン王国 首都『クランクラン』


クラン大陸最大の国オークラン王国の首都であり、王城が存在する。

街の中心に建つ王城はその白く美しい外壁から『白静宮』と名づけられている。その王宮には、建設当初より【レジストスペル】や【アンチスキル】といった防御魔法が多数かけられているためとても堅固で、その美しい外観を保つために【浄化】の魔法が永続的にかけられている。建設されて1000年以上経つが未だに当時の美しさを失ってはいないのである。現世に当時の魔法技術の高さを伺わせる建造物の一つである。

街は王城を中心に円状に貴族街その更に外側に市民街と広がっていく。

町全体をぐるりと囲むように城壁が立っており、城門は東西南北それぞれに一箇所ずつしか存在しない。



街は4つの区画に分けられており、北東が商業区、南西が養成区、南東が工業区、北西が居住区である。

商業区とはその名の通り商業に特化している地区、工業区居住区も同様。

養成区とは様々な職業の人間を輩出するために生まれた場所であり、現在で言うところの職業訓練所みたいな場所が多く存在する。


そんな大都市であり、王国首都である『クランクラン』

その西の城門に一人の女の姿があった。


---


「ふぃ~やっと着いた」


目の前に威風堂々と立つ城門を前に女、―――カーラ・グライスは呟いた。

ここに来るまでに実に3時間も費やしている。

ほんの少し前まで真上にあった太陽は少し西側にずれ、後数時間もすれば沈むだろう位置にまで来ている。


―――とりあえず王都に入るか・・・。え~と?


「止まれ!そこのお前ちょっと待て!」


キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていたからだろうか、不審に思われたらしく声をかけられた。

急に声をかけられた俺は少し驚きながらも、声をかけた相手に目を向けた。


―――そこには銀の甲冑に身を包んだ騎士がいた。


「王都に入るには通行証の提示が必要だ。通行証はあるか?」


俺よりも高い背(顔はイケメン・・・チッ―――)の騎士が俺に問いかけてきた。


―――通行証?そんなもの無いぞ?―――ウシンよ【ご都合主義】はどうした?


あまり黙ってるわけにも行かず、


「田舎から出てきたばかりで通行証は持ってないのですが・・・」


とりあえず田舎から出たきたばかりの旅人を装ってみた。


「なに?持っていないのか、なら仮証を発行するので詰め所まで来てもらおう」


そういうと騎士の男は詰め所と思われる城門横の建物に向かって歩き始めた。


―――ここで微妙に【ご都合主義】だなぁ。


などと思いながらも、逆らっても何の特にもなりそうに無かったので俺は騎士の男に従い詰め所に入っていった。



詰め所内は普通の家とあまり変わらない造りであった。四人家族が使う様なテーブルと四脚の椅子、寒くなったときのための暖炉、仮眠用のベットが付けられている。

その椅子の一つに腰掛け俺は目の前の騎士と対面していた。


「いくつか質問するので答えてくれ。―――・・・あぁ俺はディック、西門の纏め役だ」


目の前の騎士・・・『ディック』は言った。


---


「いくつか質問するので答えてくれ。―――・・・あぁ俺はディック、西門の纏め役だ」


何気ない言葉をかけた俺はドキドキしながら目の前の女を見ていた。


いつもの様に門を通るものを監視し、通行証の確認と通行証を持たないものに仮証を与えるだけのつまらない一日になるはずだった。・・・しかし、今日は違う。

いつもの様に呼び止めた通行者の一人、仮証を発行しようと詰め所に招いたものの一人に過ぎないはずだった女性であるが、対面して解ったことがある・・・


―――美しい・・・。


素直にそう認めるしか無いほどの美貌、可愛いや綺麗などの言葉を遥かに置き去りにした圧倒的な美。

例えるなら、空に浮かぶ月の様なその美しさは俺の心を鷲掴みにした。

手にしたくても届くことはなく、しかし手にせずにはいられない、そんな矛盾すらも愛おしく思えるほどその女性は美しかった。


―――昔見た歌劇のトップ女優が田舎のトロくさい娘に見えるほど美しいな。


自身が驚くほど歯の浮くようなセリフが浮かんでくる。

その全てを目の前の女性にぶつけ、照れてはにかんだ笑顔を見たいと思ってしまった。


―――いかんな。・・・まじめに仕事をせねば・・・。―――・・・しかし美しい。


どこかぼけっとした顔でもしていたのだろう、目の前の女性が少し口を開き、


「―――・・・質問は?」


少し険を含んだ声で聞いてきた。


今、気づいたことがある。

この女性には一つとして同じ表情が無い。いや、顔自体はピクリとも動いてはいないが、見る角度、あたる光、さらにはその場の雰囲気さえもこの女性の美しさを引き出すための演出であり、その全てがそれぞれこの女性に最高の表情をもたらすのである。

そして何よりも、最も美しい顔を見たと思った次の瞬間には更に美しい顔を見せる女性。

その余りの美貌に、俺は戦慄すら覚えた。


「―――・・・質問は!?」


余りに反応が無かったからであろうか少し強く女性が問いかけてきた。


「・・・ッあぁ・・・すまんすまん。余りに美しかったのでな見惚れてしまったよ」


普段から『真面目な軟派騎士』と名高い俺がこの究極の美を持つ女性に何も言わない訳が無い。


「お世辞はいい。それより仮証を発行するための質問は?」


まったくお世辞を言ったつもりは無かったが目の前の女性はそうは受け取らなかったようだ。


「・・・あぁそうだなそれではまず名前だ。貴女の名前は?」


―――色々お近づきになりたいが、ひとまずはこの女性の名前から知っていこう。


多分の下心を含みながら目の前の女性に質問を始めた。


---


「・・・あぁそうだなそれではまず名前だ。貴女の名前は?」


―――やっとまともな質問が始まったか・・・。それにしてもこいつやはり要注意人物だな。


俺はディックを警戒していた。


まぁまずは顔がイケメンだったので確実に遊び人というイメージをもった。

それだけであったなら誠実な騎士として見れたかも知れない。が、しかし

ナチュラルにあんなセリフが出てくるなんて、


―――軟派野郎確定じゃないか!!!


俺はやっとまともな異世界人が軟派師に早変わりしたことに多少ショックを受けつつも、

ディックとの質疑応答に花を咲かせるのであった。


現在駄弁り中、王都にはいつ入ることが出来るのか、『カーラ』の冒険はまだ始まったばかりである。

お分かりいただけただろうか。


ヤツはこれからも出てくるぞ。


それでは次話もよろしくお願いします。

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