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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿激闘編
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女神なんて言わせない!! その10

ども、続きです。

 とても大きな馬車が王都から出発する。

 巨大な割に外観の質素なその馬車は、内部に揺れを伝えることなく、ゆっくりと街道を進んでいく。

 そう、大神官の乗ってきていた成金全開の馬車であったものだ。



 それぞれが向けていた負の感情を上回る怒りを見せつけられ、大神官を一瞬で消すという御業を見せられた人々の心にはある種の満足感があった。

 大神官を消した後にクラン神からかたられた、大神官の処遇を聞いたのも大きい。そう、彼は消えたのではなく、地獄という『鬼』の支配する、苦痛と苦痛と苦痛に満ち溢れた世界に送られたのだという。

 そこでは、狂えるほどの苦痛、死ぬほどの苦痛を与えられるが、発狂することも自死することも許されない永遠の苦痛の世界らしく、地獄の管理者『エンマー』が許さぬ限りは何人たりとも出ることはかなわぬ世界らしい。

 エンマーは極度のSであり、人々の苦しむ姿を見るのが大好きという変態である。

 そのため、その昔より数えて、現在で50万近くの人間が送られてきた地獄であるが、エンマーが許して外に出られた人間はたったの二人。

 その二人が外に出られた理由も、『従順すぎてつまらん』という身勝手な理由だった。


 ちなみに、地獄から生還した二人は、その後すぐに自殺。

 地獄での生活を思い出して夜も眠れぬ日々を過ごすぐらいならと、自ら命を絶ったのだ。


 それほどの世界に送られた大神官。

 女神の巫女『パメラ』が使う【神罰】など、かわいいものであったのだということがよくわかる。そう一瞬の苦痛と与えられる死というのは、永遠の苦痛と比べれば救いといってもいいかもしれない。

 人々は、その話を聞いて、ほんの少し残っていた、『もっときつい神罰を食らわせればよかったのに』という感情を吹き飛ばされたのだ。


 心に残る、『神に愛されている』という心地よい感情だけをもって、岐路についたのである。


◇◆◇◆◇


 パメラは一人、王都を歩いていた。

 神から遣わされた使命を果たすためである。


 目が覚めてみれば、成金趣味の馬車に『なぜこんなものを見逃していたのか』という悪感情しか生まれてこず、その場で装飾をすべて削り取り、その場にいた民衆に此度の迷惑料として配った。

 当然、最も迷惑をかけたであろう宿屋の店主にも謝罪として渡そうとしたが、強固に断られてしまい、そのかたくなな態度に神の意志のようなものを感じ、無理やりにでも渡そうとしていたのをあきらめたのだ。


 その後、大神官の共として来ていた、なんだか自分に少し似ている二人の女性に手紙を持たせ、聖都へと戻らせたのである。ちなみに自身の乗ってきていた馬車は、限界が来ていたのか、車軸が折れてしまっていたため、馬を開放し、本体は解体した。

 クラン神より賜った力で、祝福を与えながら王都をめぐりつつ、聖都以外の都市をゆっくりと観光して回る。

 こうして、巫女『パメラ』の祝福を与える旅という名の、世界観光が始まったのだ。


 神からの罰を『観光』などと言っていいのかといえるが、この世界観光はクラン神よりこっそりと教えられたもう一つの目的であるので、不敬にはならない。


 聖都以外を一人で歩くという、初めての経験をしながら、パメラは楽しそうに笑っていた。


◇◆◇◆◇


 人気がなくなった宿屋前で、二人の人物が相対する。

 一人はこの宿の店主であり、騒動の中心人物であった『カーラ・グライス』その人である。そして、もう一人は、此度の騒動を終焉に導いた功労者であり、この国で、いや、世界で最も尊きお方、唯一神『クラン』である。

 彼女たちは、騒動が収まり、宿前から人が撤退していくまで、集まった人々を見送っていた。

 先ほど、最後まで残っていた女神の巫女『パメラ』が宿前から立ち去ったことにより、現在宿前にいるのは二人だけとなっている。

 パメラを見送って数分の後、女神『クラン』が役目を終えたとばかりに切り出す。


「さて、此度の騒動は、私にとってもよき糧となりました。私はそろそろ戻りましょうか」

 何か焦ったように一気にまくしたてると、徐々に姿を消していく女神クラン。幻想的に消えていく女神を眺めながら、カーラは微笑みを浮かべてい……




「はいはい、ちょっと待ちなさい」




 ……なかった。


 ぐわしッ、という効果音が似合いそうなほど強制的に転移を中断させながら女神の腕をつかむカーラ。


「え、いやいや、ちょっと待ってよ、カーラちゃん」

 先ほどまでの威厳のあった姿からは想像できないほどうろたえた様子のクラン神に、ため息を一つこぼしながら、カーラは一言発する。


「言い訳は後で聞くわ。それじゃ、少しO☆HA☆NA☆死しましょうか…………ウシン」

 いやいやっと、首を振るクラン神(?)を伴い、宿に入っていくカーラ。

 いつもは鳴るはずのドアベルも、空気を読んだかのように、鳴ることはなく、パタリと静かに扉は閉じられた。



◇◆◇◆◇



 宿に戻り、昼に向けての準備を進めていた(お客様は全員もう出発されている)私たちの前に、銀髪のめちゃくちゃ見慣れた顔立ちの女性を引きずりながらカーラさんが戻ってきた。

 それぞれ別の場所で作業をしていた私たちを食堂に集め、「いい機会だから」と話し始めるカーラさん。


「みんな、今朝は面倒くさい事態に巻き込んで申し訳なかったわね。あの後どうなったかは、簡単に説明するとして、みんなが気になっている『これ』。これが、前に話したクラン神の上司にあたる、最高神『サイコ・ウシン』よ。ほら、そのコスプレやめて、さっさと元に戻りなさい」


 ん? 今、不穏なことをカーラさんが言った気がするが、聞き間違いだろうか?

 この人が最高神?

 いやいや、そんなすごい人を引きずってくるとか、いくら何でもないでしょう。


「いや、カーラちゃん、実は、ちょっとこのクランルックが気に入っちゃってね。もうちょっとこのままでいたいんだけど……」

「話がややこしくなるからさっさと着替えなさい。といっても、髪の毛を少しいじるぐらいでしょう?」

「あ~まぁそうなんだけどぉ」


 しぶしぶといった様子で、銀髪の人が何かしら呪文のようなものを唱えると、キラキラとした光が足先から回転して頭上に上っていき、光がとおった場所から徐々に姿が変わっていく。

 数瞬の後、私たちの目の前にいた【銀髪きつめ系美女】は【金髪ほんわかかわいい系美女】に変身した。いや、カーラさんの話が本当だとすると、こちらが本当の姿だということだろう。

 ……。

 ……。

 ……って、本物の最高神様かい!!!!?


 いやいや、確かに最高神という方が遣わした天使がクランという名前で、それを見た昔の人たちが天使クランを神だとかん違いし、女神クランが誕生、そして何やかんやあって、唯一神クランとなったって話は、研修初日の常識をぶち壊す話をされたときに聞いたが、それでもいきなり目の前に本物の最高神がやってくるって、これはもうなんだ、異常か? いや、カーラさんと居る日常だ!!?

 ああ、考えがおかしな方向に行ってしまうよ、でも仕方がないだろう。

 落ち着くためには、必要な呪文があるんだ。

 ほかの二人と目を合わせ、目だけで会話する。


『まぁ、カーラさんだし……』


 ふぅ、この一言で落ち着けるね……。



◇◆◇◆◇



 いきなりウシンを目の前に連れてきたことで、やはりというかうろたえる三人。しかし、お互いに視線を交わらせると、何かを納得したように一気に落ち着きを取り戻した。

 むぅ、目線だけで会話しやがったか。しかも、きっと、『カーラさんだし仕方がない……』的な会話が行われたのではないかと思う。

 何度か、あんな風に会話しているのを見ていればそれぐらいは読めるようになってくるのだ。

 まぁ、それはいいか。


 とりあえず、現状の説明を進める、その説明に最も最適な人を呼び出すか……。あまり気は進まないけど……。


「ウシン。とりあえず、『エンマー』を呼んでちょうだい。あの豚がどうなったのか確認しておかないと」

「えぇ、ついさっき送ったばっかりだから、今お楽しみの最中だと思うんだけど……。それでも呼ぶ?」

「ええ、あの子にもこれからお世話になることも多いし、みんなに紹介しておきたいのよ」

「うぅ、わかった……。はぁ、気が進まない……」


 やっとエンマーを呼び出す気になったようである。むにゃむにゃと呪文のようなものを唱え始めるウシンであるが、エンマーの面倒くささを知っている私としては、ウシンが嫌がっているのもよくわかる。と、いうより、作り出した本人が嫌がる性格をしているエンマーがすごいのかもしれない。

 ちなみに、ウシンがつぶやいている呪文のようなものは、呼び出す呪文ではなく、エンマーに来てくださいと懇願しているだけなので、別に呼び出す呪文なんかはないのであしからず。


「なぁんだぁい、人の楽しみを邪魔しようって豚がいるみたいだねぇ」

 数分の後、呼び出されたエンマーは、どこからどう見ても、『攻める人が受ける人にお仕置きをするお店の女王様』といった服装の、けばけばしい化粧をした美女であった。

 久しぶりに見たが、どこからどう見ても女王様である。それも少しご立腹だ。


 呼び出して悪かったと機嫌を直させるのにさらに数分を擁してしまったが仕方がないだろう。


「それで? 送ったやつはどうしてる?」

 エンマーに問いかけるときは、直球で聞くに限る。そうしないと、『回りくどいんだよ!!』と、どこからともなく取り出した鞭でお仕置きを仕掛けてくるのだ。

 言葉を発するには、人をぶたないといけないというかのごとく、一言しゃべるたびに鞭を振るうのはやめてほしいものである。

 私の直球で聞いた言葉がよかったのか、いつの間にやら現れた、『一日椅子の豚』と首からプラカードを下げられ、四つん這いになったおっさんの上に腰かけながら、こちらの言葉に返してくれる。

「ああ、あの豚かい?(ピシッ、『ピギャァ』)あれなら、新入りの歓迎中さ(ピシッ、『プギャァァ』)今頃は、丸一日かけて少しづつ手足の爪を剝いでいっているところじゃないかい?(ピシッ、『ピグゥ』)ああ、せっかくの新入りで、楽しい楽しい新入り教育の最中だった手のに……、こんなところに呼び出して!!(ズピシィ!!、『ピギィィ』)ほんと、今すぐにでもかえって、この手で新入りに教育してやりたいよ(スパァァァン、『オヒョォ』)バカたれ!! 豚は豚らしく鳴きな!!!(ピシッ、『ピ、ピギャァ』)」

 説明してくれるのはいいのだが、おっさんの悲鳴がうるさいので、いちいちおっさんのけつに鞭を入れてしゃべらないでほしい……。

 でもまぁ、聞けたいことは聞けたのでよしとするか。


 その後、不思議なおっさんの悲鳴をBGMに新しい従業員たちと顔合わせを済ませ、いくつかの話をして、ウシンともども帰っていったエンマー。

 シルブスたちも衝撃的だったようで、エンマーについていろいろと言ってきたが、気にするなとしか返してあげることができなかった。

 そんなことよりも、お昼からの準備をしなければ……。


 面倒があったのでそのまま宿を臨時休業にしようとも考えたが、今日からやってくる予約のお客様もいるので、休むわけにはいかないのである。

 遅くなった分は、本日休みの予定だった私が手伝えばいいだけである。

 それじゃあ、今日も一日頑張りますか!!


 ちなみに、パメラが去ってから今まで、宿屋前には神様パワーによる人払いの結界が施されていたので、ウシンたちのことがばれている心配はないので、安心である。

やっと大神官にけりがつきました。

強引に終わらせた感もありますが、そこは、笑って流していただけると……。


いや、なんだか最近は少しやる気が復活しているといいますか、

情熱が再燃しているといいますか、書きたい話がいろいろとあって、大変でございます。とりあえずいろいろと話をぶち込んでいきたいので、さっさと終わらせることにしたんですけどね。

書いていて、やっぱり陰謀系はかけないなぁと痛感した次第でございます。


まぁ、仕事のほうも順調に忙しいので、時間はほとんど取れていないんですけどね。


それでは次話でお会いしましょう。

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