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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿激闘編
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女神なんて言わせない!! その6

じわる=次話る……。


はッ!! いったい何を言っているのだ……。


では、本編をどうぞ……。

【神罰】を発動し、自身の体より、クランから与えられた加護の力がごっそりと抜けていくのを感じながら、パメラは眼を閉じる。

 この先、【神罰】の効果によっておこる惨劇を見たくないためであった。


【神罰】の効果は劇的である。

 効果の対象となったものには、天から一条の光が舞い降りる。神の祝福の如く体を光がつつみ、神々しく効果対象を照らし、一時の安らぎを与える。【神罰】の対象となり、嘆くもの逃げようとするもの、阿鼻叫喚の地獄絵図さえも一瞬で穏やかな空間に変えてしまう、強制的な精神安定効果により、対象となったものは微笑みすら浮かべるほど落ち着き、泣きわめいていたのがウソであるかのような様相を見せる。

 ここまでなら、パメラだって、見ることはできた。事実、初めて神罰を発動した際は、聞きかじりの知識だけがあり、実際の効果は知らなかったのだ。何のためらいもなく神罰を行使できたのもそのためであった。

 そう、【神罰】の効果は精神安定などではない。


 精神が安定した人間が誕生しても、天からそそぐ光が消えることはない。そして、次の瞬間、


 ベギョッ!! と、何とも形容しがたい音を立て、光を受け入れていた人物の頭部が半分押しつぶされる。ゴシャッ!! と、激しい音を立てながら、右腕が体にめり込む。ゴィキンッ!! と、けたたましい音がしたと思えば、左足が後ろから跳ね上がり、残った頭部に突き刺さる。

 ゴキンゴキンと人間が圧縮されていく。そんな状態にありながら、穏やかな表情を見せ続ける人。それは、見る者に恐怖を刻む悪辣な御業。

 神の怒りという大きなものに触れたものの末路を、これでもかというほどに喧伝する恐怖の技法。


 だが、それだけでは終わらない。

 神の怒りに触れた本人が、穏やかなまま逝くなど、到底許せるものではないのだと言わんばかりに、圧縮され、様々な部位がめり込み、もはや頭部しかなくなった人間の意識、痛覚などを現実に戻す。

 頭部を押しつぶされる、体を圧縮される、折り曲げられるなどなどの、到底耐えられるものではない痛みを一気に押し付けるのである。


 響くのは絶叫。

 人間として成立していない状態で行う咆哮は、人のそれというよりも、獣のそれに近く、言葉にはなっていない。

 だが、そんな状態にありながら死んではおらず、また強制的な精神の安定により、気絶もすることができず、痛みから逃れるすべはない。時間にして、約一分といった短い時間ではあるが、その間に数千回は死ぬことができるほどの痛みを与え続けるのだ。数時間にも感じられる苦痛の時間が終了すると同時に、天から強烈な光が降り注ぎ、魂も残さず破壊しつくすのである。


 パメラは見たのだ。

 巫女として、女神の代弁者として、真正面から。

 穏やかな表情で折りたたまれる人を、痛みでゆがむ表情を、そして、パメラに向けられる複雑な感情の瞳を……。

 

 いくら相手が教会の敵となる人間であるからと言え、別に人が死んでいくところを見たいわけではない。そんなものを見ないために、パメラは目をつぶる。


 時間にして約一分後。

 その時、ありえない言葉がかけられる。


「それで、【神罰】とはいつ行われるのでしょう?」


 困惑したような女性の声。絶対に聞こえるはずのない女性の声。

 かけられた言葉に驚き、反射的に前を見るパメラ。


「?」


 そこには何事も無かったかのようにパメラを見つめるカーラの姿があった。



◇◆◇◆◇



(さて、どうしたものか……)

 カーラは考える。

【神罰】という、何やら物騒な大技を、カーラの前に立つ女神の巫女とやらが使ったことはわかっている。魔力の込められた、清廉なる光の力が己をつつむのも感じていた。

 しかし、それだけである。

 もっと何かしらの変化があるのかと思えば、そんなものはなく。【神罰】とやらの本番がまだかと思い声をかけてみれば、ひどく驚いた顔でカーラを見つめるばかり。どうやら、カーラの前に立つ巫女にとって、カーラがそのままの姿でいることはひどく驚くことらしい。

 あまりに反応がないので、仕方なしにどうやってこの集団催眠状態を解こうかと考えを巡らせていると、ついに巫女『パメラ』が声を上げる。

「ば、バカな……」

 その言葉にはひどい狼狽の色が見て取れる。


「あ、ありえない……、ありえないぞ!! しっかりと【神罰】は発動している!! 私の中から神力がごっそりと抜けたのも感じた!! ならばなぜまだ目の前に存在するのだ!?」

「はぁ、そう申されましても……」

「だ、大神官!! どうなっているのだ!!」

 パメラ自身の信じる【女神】より賜りし全ての敵を屠る究極の御業【神罰】。その【神罰】をまともに受けてもまったく平然と立っているカーラ。その事実は、自身の信仰を全否定されることのように感じられ、何かが足元から崩れ去っていくような気さえするパメラ。

 普段の凛とした姿からは考えられないほど狼狽したパメラは、普段の大人びた様子ではなく、年頃の娘と変わらない少女になってしまっている。そんな彼女が、頼るのは、昔から何かと世話を焼いてくれていた大神官しかいなかった。

 急いで大神官に振り向き、目の前で起きたありえない現象を説明してもらおうと考える。


 しかし、


 そこで見たものは、


 いつもの柔和な優しい大神官の顔ではなかった……。



◇◆◇◆◇



「だ、大神官?」


 パメラの困惑した声に反応したのは、


「グ……、グフッ! グフフフフフ!!!」


 という、大神官の笑みであった。


「大神官? な、何を笑っておるのだ!!」

「いやはや、まさか【神罰】すら退けるとは……。やはりあなたに神の加護が宿っているという噂は本当だったようですねぇ……」

「何? 何を言っているんだ大神官!!」


 うろたえるパメラをしり目に大神官はカーラに向かって話かけているようだ。しかし、また語り出した大神官に付き合うわけにもいかず、カーラは話を進めようと動き始める。

 ひとまず、一拍手を打ち、目線を集め、


「何のことかわかりかねますが、【神罰】とやらは行われないと考えてもよろしいでしょうか? それでは大神官殿……、


 町の住民たちに(・・・・・・・)かけた暗示(・・・・・)を解いていただけますか?」


 いきなり核心をつく質問を投げかける。


 静まり返った宿前にカーラの言葉が響く。


「な、お、お前まで何を言っている!? 大神官、こやつは何を言っているのだ!!」

「ほう……、さすがはカーラ・グライスといったところですな……。住民にかけた暗示に気が付くとは……」

「お、おい……」

「気が付かないとお思いで? 暗示にかけられたもの特有の反応が多数みられた現状で、それがわからないほど安い経験をしてきたわけではありませんよ」

「ま、またないか!! 私を抜きで話を進めるな!!!」


 置いてけぼりを食らって思わず声を荒らげるパメラ。

 だが、動き出した大神官にはパメラの言葉など些細なものであったようだ。


「おやおや、そういえば忘れておりましたな……。女神の加護を手に入れたというだけで、長年の恩義を忘れ、この私めに大きな態度を取り出した小娘が……」

「貴様……、いったいどういうつもりだ!! 大神官!!!」

「神の加護さえなければ、そこいらの娘と変わらん力しか持たぬ小娘が、私の上に立つだと? そのようなこと、この私が許すとでも思っておるのか? え、小娘」


 大神官の言葉にパメラの顔がゆがむ。そこに彩られたのは『怒り』。その怒りのままにパメラは言葉を発す。


「ぐッ、大神官!! 貴様、私をだましたのか!!」

「今頃気が付いたのか? ずいぶんとおめでたい頭をしておるな」

「貴様!! 今は、加護の力が弱っておる故、何もせんが、私に力が戻った時には覚悟しておけよ!!」


 パメラの発言を受けても、大神官の表情は揺らぐことはない。


 いや、それどころか、さらに醜くゆがみ、いやらしい笑みを浮かべだす。


「何も、何もわかっていない小娘よ……。私は、この時(・・・)を待っておったのだよ!!」


 ついに、大神官の悪意が動き始めた。

ども、お久しぶりです。

突然ですが次話です。

話がまったく進んでおらす申し訳ありません。


また、三月に更新しますとかほざいておきながら、六月まで放置してしまい、誠に申し訳ありません。

ちょこちょこと書き進めておりますので、エタってはおりません。

半エタぐらいです。

最低でもこのお話ぐらいは完結させますので、

お付き合いいただければと思います。


では、次話で。

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