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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿激闘編
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女神なんて言わせない!! その5

続きです

短いですが……

【神罰】それは、教会の敵、いや、世界の敵に対して巫女により行われる神の怒りの代弁。


 巫女という存在が生まれてから数百年あまり。その数百年のうちに数えられるほどしか行われたことがないこの神の怒りが、この度、一軒の宿に施行されようとしていた。


 この事実は、王都にやってきた教会の馬車を見つけ、何事かと集まった野次馬を驚愕させる。

 それもそのはず、今まで起きた【神罰】とは、教会の破壊をたくらむ犯罪組織であったり、自身の商品を売るために戦争を起こさせようと画策していた商人連合であったり、魔王を復活させ、世界を混乱に陥れようとする狂人であったりと、どれもこれもが、世界を混乱の渦に巻き込む危険性のあるものばかりであったからだ。


 しかし、今回は違う。

 野次馬たちから見ても濡れ衣としか言いようのない理由で、昼は争奪戦をしてでも食べに行きたい飯屋と、快適で安全な眠りを格安で提供する宿、そして、慣れ親しんだ一人の女性が消されようとしているのだ。

 当然、抗議の声を上げるものが現れ始める。


 宿前の道、止まる馬車。その周囲を取り囲む民衆が、一気に騒がしくなり始める。


 その時、一人の男が動く。

 そう、【大神官】『ブッチャー・ブデオ』その人である。


 パンッ!! と一つ柏手を打ち、ざわめきとともに民衆の視線を集めるブッチャー。民衆の視線が集まったところで、彼は何やら小難しい説法のようなものを語り始めた。


 一連の動作を見ていたカーラには、彼の説法は、はっきりと言えば『内容のない、校長先生の挨拶』といったものにしか感じなかった。

 それもそうだろう。

『清貧を重んじよ』という、まだ巫女が生まれる前、世界に初めてクラン教が生まれたきっかけとされる、時の【大神官】『ダンカン・ソウシィ』が、神のお告げとして取りまとめた経典にもある言葉を、どう見ても、清貧を重んじていない男が声高々に語っているのだから。


 さらに、教の理念や、時の大神官たちの言葉などを使って、話をしているようだが、この状況で、宿に下される【神罰】の説明になるようなことは何一つ語られていない。

 ただ、クラン教とはどういったものかを説明しているだけにすぎなかったのだ。


 だが、しかし。

 何かがおかしい。


 先ほどまでざわめきの広がっていた宿前の道。


――今では、説法を続ける大神官の言葉しか聞こえない。


 カーラは、その事実に気が付き、素早く周りを見る。パメラはいまだに、こちらを睨みつけているが、そんなことにかまっている場合ではない。

 パメラにばれない様に、視線を高速で動かし、周囲の人々を観察すれば、皆が皆、どこかうつろな表情をしていた。


 これは、まずい。


 明らかに何かしらの精神操作を受けている人間の反応である。それをこれほどの規模にしかも一度にかけるなんて、明らかに常軌を逸している。

 やめさせなければ、とカーラが何かを言おうとした矢先、大神官に次いで、パメラが動く。


「大神官、もういい。 民衆が何を言おうと、この宿は極悪の認定を受けた事実は変わらない」


 その一言に、おとなしく元の位置に戻る大神官。 しかし、そこには先ほどまでとは違い、何やら勝ち誇った表情を浮かべる大神官の姿があった。

 民衆から上がっていた、反対の声もなくなり、もはやパメラの【神罰】執行のみを残すこととなった宿前。さすがのカーラも顔を伏せている。


「ふん。 ようやっと自身の罪を認めたか。 しかし、少し遅かったな。 もはや【神罰】執行は決定されていることなのだよ」


 そう言い放つパメラ。

 そのパメラの後ろ、控えられぬ巨体で控える男の顔に浮かぶ喜悦の表情を見たものはいなかった。



◇◆◇◆◇



 カーラを見据えていたパメラが一つ深く息を吐く。【神罰】という、人の力を超えた現象を起こすためには全神経を集中させる必要がある。

 もう一度、ちらりとカーラを覗き見るが、先ほどとまったく変わらず、うつむいたままである。

 ここで、わめいたり、逃げ出したりしようとすれば、それこそ一般的な悪党となんら変わりがなくなり、【神罰】の発動にも戸惑いはなくなるのだが、目の前の女性はその気配すらない。

 やはり何かの間違いでは? と思う感情が頭をもたげようとしてくるが、それをグッと抑え込む。


 パメラの周りを漂う神気が濃くなり、視認できるまでになっていく。神々しいまでの光の帯がパメラの周りを取り囲むように回り、幻想的な雰囲気を醸し出す。

 パメラの周りを数度旋回した神気の帯は、パメラが突き出した掌の前に魔方陣である【神罰】の魔法文字を描き出す。神気の持つ圧倒的な波動により、野次馬の中で、耐性の弱いものは次々と気絶していく。

 それほど膨大な力の波動となると、扱うパメラも無事ではない。

 精神の集中が何よりも大事な【神罰】の発動。ただ目の前の敵に【神罰】を下すことだけを考え、精神を集中させていく。額に浮かぶ汗も、食いしばり欠けそうになる歯も一切気にしてはいられない。頭の先から足の先まで、すべてを完全に敵を倒すための道具とし、一点に神気を集める。

 一度の【神罰】の発動で、その日、一日は、疲労困憊で立ち上がれなくなるほどなのである。


【神罰】の魔法文字は一定の周期で光が強くなる。一際強く魔法文字が輝いたとき、パメラは全身の力を集まった神気に向け、放出。

 同時に目の前の敵を打ち砕くイメージを脳内に思い浮かべ、呪文を唱える。


「女神を騙る悪党よ、教会の名において、また、女神の巫女として、貴様に【女神】なんて言わせない。この一撃で、神の怒りを知れ!! 【(ディバイン)(パニッシュメント)】!!」


 詠唱とともに、カッと強烈な光を放ち、【神罰】が発動された。

 突き出された掌の前で形作られていた、神罰の魔法文字が徐々に崩れていき、一個の球体を作り上げる。作られた神気の球体はゆっくりとカーラの方へ進み……、


 直後、突然進路を空へと変えた!!


 すごい速度でぐんぐんと上昇していく光の玉。そのまま雲の高さまで上昇したかと思うと、パッと散った。


 失敗か? 誰もがそう思う。カーラも思った。

 しかし、パメラは依然厳しい表情で、掌を突き出したままである。


 そう、【神罰】はいまだ発動状態なのだ。


 突如、雲が集まりだし、あたりが薄暗くなっていく。終末を思わせるような、稲光を伴う真っ黒な分厚い雲が空を多い、朝の町を薄暗く染める。

 そんな光景に、誰かが無意識のうちにつぶやいた。


「終わりだ……」と。

ついに発動された【神罰】

カーラの運命やいかに!!


とか、予告みたいなことを言ってみる……。


あ、そうそう、

設定資料とか上げた方がいいんでしょうか?

書き始めた当初は、設定資料とかを別枠で投稿するのに違和感を感じてた(当時、プロローグの直後に人物設定とか書いてあることが多くて……更新もガンガンされていくので、隠された能力とかネタバレされていることも多くて……)ので『小説の中に織り込んじゃえ』って感じで書いてたんですが、自分でもまとめるために一回世界観とか、人物とかじわじわ投稿していこうかなと……。


どうでしょう?


ご意見、ご感想、誤字脱字報告お待ちしています。


では、次話で

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