女神なんて言わせない!! その1
どうも、お久しぶりディッス。
また、ちょこちょこ書き進めていきます。
短いですが、どうぞ。
静謐な空気の漂う一室。
神聖な気配をまとった衣をまとい、その女性は一人の男性から報告を受けていた。
「そう、女神の名をかたるものが現れたのですか」
「は、そのものは、自身の経営する宿を喧伝するために、『女神の宿』などと誇称し、多大な利益を上げているとか」
「なるほど。 唯一神であらせられる『クラン』様を自己の利益のために弄ぶなど、言語道断ですわね」
「は、そのものにはしかるべき罰。 【神罰】が必要かと……」
「わかっています。 準備なさい、大神官『ブッチャー・ブデオ』。 その愚か者には私が直接【神罰】を執行しにまいります」
「はは!! お心のままに、女神の巫女様!!」
そういって、深々と頭を垂れる大神官と呼ばれた男。
伏せられた顔の下で、黒くほくそ笑む大神官の顔があることには、巫女と呼ばれた女性はついぞ気が付くことはなかった。
◇◆◇◆◇
宿はいつも通り平和である。
受付では、担当の『リキュア』がお馴染みとなった間延びした声で接客しており、厨房では『シルブス』が腕を振るっている。 維持管理については『ルカ』が受け持ってくれているので、本日の『カーラ』は休みであった。
宿を始めてから今までずっと働きづめだったことや、研修、その後の実業務中に発生したトラブルの対処のため、休みなどほぼ取ることができなかったカーラであったが、この度増やした従業員によって、四日に一度は休みが取れるようになったのである。
新たに雇った従業員の三名は、カーラの地獄の研修により、今では一人一人が、一人でも宿の運営を行っていけるほどの実力を兼ね備えている。 そんな実力者が四人も働けば、規模のそれほど大きくないカーラの宿では過剰戦力であり、休みの取れていなかったカーラのことを考慮し、ルカが提案してくれたのが、三人で持ち回りを交替し、一人が休む現状の宿運営システムである。
休みになったカーラは、一人ブラブラと散歩にいそしんでいた。
急に仕事が休みになった時などによくおこる現象だが、普段仕事をしている時間帯なので、何をしていいのかわからなくなったことがある経験を持つ方もいるだろう。
今回のカーラの散歩もそんな『普段働いてる時間に休みっていわれても……。 しかも、知り合いはみんな仕事してるし……。 暇だ……』的な、感情からきている目的も何もないぶらつきなのである。
なら、様々な偽名のアレがあるじゃないか。 と思われる方もいると思うが、今まで仕事の片手間で行っていた偽名活動を急に真剣にやれと言われてもなかなか本腰が入らないこともあるだろう。
小説を仕事の合間の、昼休みならスラスラかけるのに、いざ仕事が終わってから書こうとするとうまく書けなくなったりするアレだ。
そんな感じで、偽名での活動もなんだか本腰の入らないカーラは、『宿にいても邪魔になるか……』との考えの基、こうしてブラブラすることを続けるのである。
◇◆◇◆◇
(はぁ……、暇だ……)
久しぶりの休みである。 従業員を増やしたことにより、一人の自由時間が増えた。 それはとても喜ばしいことではあるし、従業員を増やすうえで当初考えていたことでもあるので、成功だといっていいだろう。
しかし、……だがしかし!! こんなにも暇になろうとは!! 誰が予測したであろうか!!
(アンジェたちも少し遠出していないし、リリカさんは今日は一日業務だし、アンナちゃんは二日前に教えた宿の経営法その一を実践、改善するために宿に実家の宿に張り付いてるし……。 ラポーさんでも来ないかしら? 今ならちょっとした料理ぐらいなら教えるのに……、あら? あれは……)
あまりの暇さに宿を出て来たのはいいが、はっきり言って何もすることがない。
こういった休みの日に限って、いつもはうっとうしいぐらいくる来客も来ないのだから、世の中不思議なものである。
そういった、世の中の無常をかみしめながら歩いていると、前方から見知った方が歩いてきた。
「クロスさん。 お久しぶりですね。 いつこちらに?」
「……む、カーラさんか。 久しいな。 俺たちはついさっきついたばかりだ」
「そうですか。 カクさんやトライさん、マルさん、コーナさん、カドリーンさんたちもお元気ですか?」
「……元気。 ……カクは最近さらに元気になった」
「まぁまぁ、そうですか。 それはよかった。 リーダーが元気だとパーティは活気づくものですから」
「……ふっ、同意だ」
歩いてきたのは、王都ギルドでも実力が認められている、冒険者パーティ【エッジ】のサブリーダー、B級冒険者のクロスさんであった。
エッジの皆さんはよく家の宿を利用してくださっているお得意さまで、リーダーのカクさんは、従業員の募集試験にも来てくれたことのある方だ。 ……まぁ、速攻で不採用。 具体的には面接試験中に不採用を言い渡した数少ない、合格発表に来れないメンバーの一人ではあったが……。
「今回はうちの宿の予約が取れず申し訳ありません」
「……いや、別にいい。 ……【羆の熊手亭】が取れたのでな。 ……あそこの飯もなかなかのものだ」
「ありがとうございます。 それで? いつまでされるおつもりですか?」
「……?」
私の質問に、律儀に答えてくれるクロスさん。 ただ、最後の質問だけはよくわからなかったみたいだ。
「ふふ、お腹です。 お子さんがいるんでしょう?」
「……!!! ……そうか、ついに俺にも子ができたか///」
「ええ。 おめでとうございます。 クロスさんの子ですから、きっとかわいい子ができるんじゃないでしょうか?」
「……ありがとう。 ……ふふ、カク達に報告することが増えてしまったな」
「そうですね。 パーティメンバーからの祝福は何物にも変え難いものがありますから。 それでは、お大事に」
「……ああ。 ……また、今度よらせてもらう」
そういって、クロスさんは去っていきました。 本当に寡黙な方ですが、本日は少しおしゃべりでしたね。 ……当たり前か。 自分の子供ができたのだから。
「いいな。 子供かぁ。 折角、女として生まれたのだから、一人ぐらいは子供がほしいものね。 ……おっと、もうこんな時間」
クロスさんと別れてから数分。 自分の子供についていろいろと考えていたら、ちょっと時間がたってしまったみたいである。
早く帰らないと……。 カイルがご飯をたかりに来る時間が近い。
今日は何を作ろうかと、考える私の足取りは、何も考えずに宿を出てきたころより、ずいぶんと軽くなっていた気がする。
え~、様々な登場人物がだれかわからない、
または時間がたちすぎて(更新が遅すぎて)覚えてないよ!! という方は、
この小説のどこかに現れていた人物ですので、探してみてください。
たった、三千文字行かない程度の小説に一年近い歳月をかけてしまった……。
本当に申し訳ありませんでした。
アイカちゃん→アンナちゃんに修正
宿屋の娘の名前を間違えておりました……。
TRNKsuke様ご指摘ありがとうございます。




