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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿拡充編
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新人研修 その4

取り合えず連投終了。


 あ、おひさしぶりです。 ルカ・ツンクーフトと申します。 フルネームでのご挨拶は初めてでしょうか?



 現在、研修はほぼ終わりを迎えております。


 思えば、研修は初日から驚きの連続でした。


 頭が破裂しそうになるほど、今までの常識を覆すような事実を聞かされ、さらにはドラゴンまで現れましたからね。 そのあとはもう無茶苦茶でした。


 遅刻した、『ファブ』さんと呼ばれたドラゴンをカーラさんは、無表情のまま30分間も叱り続け、ついにはドラゴンが泣き出す始末。 もう、世界最強レベル、英雄譚のラスボスレベルのドラゴンという威厳など微塵も感じさせないその姿は、哀れでした……。

 何度も頭をペコペコと下げるドラゴンは、なんとかカーラさんの許しを得て、こちらに話しかけてきました。


「ほう、その方らが我の訓練を受けし者たちであるか」


 と、威厳たっぷりで言っていたのが、逆に先ほどの姿を見ている分、おかしくて仕方ありませんでした。 そこで、失礼ではありますが、私たちの中に緩み、と言ったものが走ってしまい、ちょっと気が抜けたのだと思います。

 私たちの気の緩みを見抜いたカーラさんは、気を引き締めさせるためでしょうか、『一発ぶちかましてください』と、ドラゴンに依頼。 それを了承したドラゴンは、その巨大な口に力をため、ゴルディ荒野に向けて、強大なブレスを吐き出しました。


 閃光、爆発……、そして静寂。


 結果だけお伝えするなら、ゴルディ荒野はゴルディ渓谷へと姿を変えたというところでしょうか……。


 そんな、強力な一撃を見せられた私たちに、もはや緩んでいる暇などなく、一気に気を引き締め、そのあとのドラゴンとカーラさんの言葉をしっかりと聞いていました。

 どうやら、先ほどカーラさんの言っていたことは本当のようで、このドラゴン、『ファフニール』さんが私たちを鍛えてくれることになりました。


 え? と思う暇もなく、早速、『訓練スタートです』と言い出すカーラさん。 そりゃあ、強くなるために、魔物と戦うんだろうなぁとは予想していましたが、戦うのがドラゴンとは本当に聞いておりません!!!


 ……それよりも、ドラゴンがどうやって私たちを鍛えてくれるのか、という疑問が出てきますよね? 答えは本当に超簡単。 ひたすらに、ドラゴンを【攻撃し続ける】。 本当にただそれだけ。


 もう、無茶苦茶です。


 しかし、理由は意外にしっかりとあって、ドラゴン(しかも神話級の)を攻撃することで、少しづつ私たちの中に経験がたまり、レベルアップにつながるということ。 傷をつけることができればさらに、ドラゴンから得る経験をより多く稼ぐことができるということ。 そして、神話級の敵から経験を得続けることで、限界突破を引き起こすということ。

 が、理由として挙げられた。 つまり、このドラゴンを攻撃するだけで、私たちは強くなり、さらに限界突破にて上の強さを手に入れられるというわけ。 美味しい話過ぎないだろうか?


 美味しい話には裏があるとよく言われるので、そのあたりをカーラさんに確認したところ、従業員として働いてもらうためには力が必要なので、これぐらいの条件でもおつりがくるぐらいだとのこと。

 しかし、ちゃんとデメリットもあり、一方的に動かない相手を攻撃し続けるだけなので、戦闘としての経験を一切積むことはできないとのことである。

 駆け出し冒険者が、私たちと同じ方法で強くなったとすると、レベルは高いが、戦術などが不得手な、所謂、『貴族上がりの冒険者』が誕生する。 あ、貴族上がりの冒険者っていうのは、お金の力で装備品だけいいものを揃えて、自身の実力は一切伴っていないって言う意味。 昔はこれで大量の貴族が命を落としたらしい。


 と、まぁ、そんなことはどうでも良くて、結局、私たちはドラゴン『ファフニール』通称『ファブ』さんを相手に限界突破の訓練を始めたわけです。




 ただ、動かないファブさんを攻撃す続けるだけの簡単なお仕事。 などと思うかもしれませんが、鋼鉄よりもなお硬い、ドラゴンの鱗を攻撃するということは、その衝撃が全て自分の武器にも返ってくるということ。 みなさんも想像してください。 なんでもいいので、棒を持ち、それで岩を思いっきりぶっ叩いたぐらいの痛みが襲いかかるのです。 どうです? 痛いでしょ?


 全力で攻撃しているのは、目標のため。 ファブさんの鱗にある一定の傷をつけることができれば限界突破したことがわかるそうで、カーラさんがどの程度の傷か見せてくれました。

 ドラゴンの鱗の中で最も柔らかいとされる、お腹、脇腹の鱗の一点を指差すカーラさん。 そこには小指の爪ほどの小さな傷がありました。 本当に小さな傷でしたが、これが限界突破した証だと言われました。 一番最初に反応したのはリキュアさん。 『この程度ならぁ、今すぐにでもぉ、つけれるとぉおもいますよぉ』と、いつもの間延びした声で言っておられました。


 愛用の大剣(なぜかカーラさんが私たちの装備一式を持っていました)でファブさんに斬りかかるリキュアさん。 その一撃は、岩はおろか、鉄さえも切り裂いてしまえそうなほどでした。

 しかし、結果は、まったくダメ。 それどころか、あまりの衝撃で、リキュアさん自身の腕がしびれてしまい、10分は動かすことができなくなりました。


 ここから、私たちの訓練は始まりました。


 一日の大半をファブさんへの攻撃に使い、朝、昼、夜の食事時間に様々な知識を学ぶ生活。 学ぶ知識は様々で、料理や最低限の挨拶、マナーなどを実践も踏まえながら学んでいきました。

 長くかかったのは、やはり限界突破。 簡単なお仕事とはいえ、たまる疲労も半端ではありません。 さらに、一向に傷のつく気配のないドラゴンの鱗に、成長の兆しを見ることもかなわず、どんどんやる気が低下。 それがさらに成長を遅くするという悪循環。

 そんな中、一番早く限界突破を迎えたのは、『シルブス』さんでした。 彼女は、努力、忍耐という意味では、おそらく私たちの中でも随一であり、私やリキュアさんが少しやる気を失い始めた時も、こつこつと訓練を続けていました。 さらに、覚えたてではありますが、カーラさんの見せてくれた回復魔法も使えるようになったシルブスさんは、疲労を回復魔法で回復させ、また攻撃。 といったように、彼女は、限界突破に向けて努力を惜しみませんでした。

 そして、限界突破。 彼女の、『あ、行けた……』というつぶやきは、今でも鮮明に覚えています。


 そこから、シルブスさんは一気に強くなっていきました。 カーラさん曰く、限界を突破すると、限界突破状態のレベル1となるようで、その後、ガンガン成長するようになるのだとか。

 シルブスさんの突破を受けて、やる気を取り戻した私たちは、それぞれ回復魔法を覚え、併用しながら訓練を続行。 シルブスさんが突破してからそんなに時間を置かず、二人とも無事突破できました。


 三人ともが限界突破を果たしてからは、一日の大半を使って、ドラゴンを攻撃するといった訓練はなりを潜め、他の知識吸収の時間が多く取られるようになりました。

 あ、そうそう、あの椅子ですが、持ち上げることができるようになりました。 リキュアさんに至っては片手で軽々振り回すぐらいになっています。 よっぽど持ち上げられなかったのが堪えたのでしょう。


 ここまで来ると、ファブさんがドラゴンでいる必要がないので、ファブさんは人化により、人形態をとって研修に参加し始めました。

 初めて見る、ドラゴン(龍族というのが正式らしい。 人化の出来ないものは亜龍族と呼ばれる。 ドラゴンとは龍族、亜龍族を含めた総称であるとのこと)の人化の瞬間(人化した龍族は見たことがあるので)に興奮を隠せなかった私たち三人。 龍族は強ければ強いほど、人化した際に美しくなると言われているので、ファブさんの美しさは当然注目の的でした。


 人化したファブさんは、ルビー色の瞳が、漆黒の黒髪に映える、とても美しい方でした。





 が、





 なんとファブさんは、男性の方でした!!!!!!!



 たぶん、この研修が始まって一番の衝撃でしたね。


 え? その他の研修ですか? 何の問題もなく、終わりましたよ?

なんだか短くてすいません。

とりあえず、研修の話はこれで終了です。

あれ? 研修ちゃんとしてないじゃんって思うかもしれませんが、申し訳ありません。


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