表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿拡充編
48/61

新人研修 その3

連投を続けます。

 椅子一脚でどんだけ重いんだって話だろうけど、驚いたものは仕方ない。


 そして、まだ続いたカーラさんの説明で、驚いたのはそれだけじゃなかった。


 椅子以降のやり取りを順に説明していくと、


 1.椅子が重いのは魔法金属でできているからということ。

 2.あの宿は、椅子だけでなく、壁も窓も果てはシーツに至るまで全て、魔法金属や災害指定級の魔獣、神獣などの素材で作られているらしいこと。

 3.その全ては魔道具によってただの木や布と同じ重さにされていること。

 4.魔道具への魔力供給は毎日カーラさんがやっているということ。

 5.今度から魔力供給はあたいたちも手伝うこと。

 6.1回の魔力供給に必要なMPは2500ポイント。(MAX999ポイントしかないはずなのに……)

 7.限界突破という技法を使うとMPを9999ポイントまで引き上げられるということ。(世界の常識が変わってしまうわ)

 7.さぁ、強くなりましょう。


 とのことだった。


 いやいやいやいや、まてまて。 落ち着こう。

 ひとまず……、


 はい!? 何それ!? 限界突破ってなに!?




 驚くなという方が無理だろう。


 世界にはルールがある。 神の決めたルールが。

 人間はせいぜい100年生きればいいほうだし、不老長命のエルフだって実際は何千年という単位で老いて死んでいく。 これは自然の理なのだ。

 HP999がMAXだしMPも同じ。 STRなどの能力値は100がMAXである。 これはどの生物も同じ、決められた世界の法則であるはずだ。

 まれにドラゴンなどの一種の世界を逸脱したモノたちはその限界を超えるそうだが、それも嘘か誠かわからない。 誰も調べられたことがないからである。

 それを、今、この目の前の女性はなんて言った!? 『限界突破すればできますよ』と、さも当然のように言ってのけたではないか!? 本当にそんなことができるんですの!!? ……おっと、ついついキャラ付を忘れてしまったではないか。


 あたいたち三人がそれぞれ驚きをあらわにしていても、カーラさんの説明はどんどん進んでいく。 もうやめて、シルブスがあまりの衝撃に再起不能になりかけてるから……。


 そのあとも、続く今までの常識をブチ破る話のオンパレード。 カーラさんは規格外だと分かってはいるつもりだったが、あたいの知っている部分など規格外という言葉の表面薄皮一枚程度だったということだろうか?


 一旦、小休止を入れ、ひとまず情報の整理に入る。 頭が情報の詰めすぎで破裂してしまいそうだったが、なんとか持ち直した。 それと、どうやら、なんとかシルブスも意識を保ったようだ。 お互いの生還を陰ながら喜び合った。 なんせあの読めないルカでさえ、虚空を見つめながら口をパクパクさせていたほどである。 小休止のあいだに、お互いもう一度頭を突き合わせ、今の説明で得た情報を互いに共有し合う。 情報を共有し合うことで、なんとかお互いに心を静めることができた。






 ……が、ここからがさらに、今までの上を行く衝撃のオンパレードだった。




 魔法の話であったり(回復魔法に時魔法? それはクラン神だけが使える神位魔法のことかい?)、宿のあれこれ(掃除の時間がどうたらこうたら言っていた)、そしてクラン神について(それは、本当のことかい!? 嘘だといってくれぇ。 神殿に目をつけられちまうじゃないか)。


 困惑する私たちをしり目に、カーラさんの一言。


「ここまでお話したのは、皆様を信用してのこと。 どの情報も世界が混乱する原因になりかねませんので、自身で墓場までお持ちください」


 カーラさんの一言により、場の空気が一気に重くなる。



 と、言うより、シルブスが、すでに墓場に足を突っ込もうとしているんですけど!! 口からシルブスを二頭身にしたような白い煙みたいなものが立ち上っていく……、って!! 魂抜けてるよ!!!!


 急いで魂を連れ戻し、なんとか事なきを得た。


 その後は、もうみんな諦めたのか、普通に食材探し。 長年人の手が加わっていなかったこともあり、非常に資源が豊富なこのゴルディ跡地。 めんどいからゴルディ荒野と呼ぼう。

 それぞれが魔物に遭遇するも、傷一つ負うことなく魔物を退けて帰って来た。 やはりみんなそれぞれしっかりとした実力があるようだ。


 この時点で、昼を回っている。 集めた食材から、数品選んで、即席だが十分腹のたしになるものをカーラさんが作ってくれて、みんなで舌鼓を打つ。


 そこから、また色々と説明。 「強くなってください」と言っていた割には、修行どころか訓練すらしない。 こんなことで限界突破とやらができるのであれば、とっくに限界突破しているはずだ。


「あのぉ、修行とかぁ、しないんですかぁ」


 と、聞いても、


「もう少し待ってもらえます? ちょっと来るのが遅れているようでして」


 としか言わない。


 何がくるんだろう? と、もはや恒例となりつつある、三人での会議をはじめる。


 2~30分はたっただろうか。

 あたいたちの中で、『強くなるための修行、なら、元冒険者仲間とか? カーラさんの友達ってS級冒険者ばっかりってイメージがあるし……』という、私たちに修行をつけてくれる人が来るんじゃないかと結論がでた。 と、ほぼ同タイミングで、「やっと来たか……」というカーラさんのつぶやき、そして、


「カーラちゃんお待たせぇ。ちょっとお化粧に手間取っちゃってぇ」


という、声。


 期待をもって、私たちが振り向いたそこには、確かに私たちを鍛えるために呼び出された方がいた。


 その方は、真っ赤なルビーよりなお紅い真紅の瞳を持ち、女性の中でも高身長の私よりも背が高く、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んで、烏の濡れ羽色とでも言うべき漆黒の……、





 巨大なドラゴンだったが……。






 あっと、待て待て、ふ~、よしよし、これは夢だろう。 さっき『お化粧が~』とか云々言ってたし。


 一旦、シルブスたちに目を戻し、三人でハハハと笑い合う。 何故だろう、あたいも含め、笑いが乾いている気がする。 そして、ちょっと現実逃避の後、『ドラゴンだったよね?』と互いに頷きあい、覚悟を決めて、もういちd……、


「あ、皆さん。 こちら、今回の訓練を担当していただく、【名を失った邪竜】、【堕ちた龍皇】でお馴染みの『ファフニール』さんです。 名を失ったと言われているのにしっかり名前がある『ファフニール』さんですが、気軽に『ファブ』さんと呼んであげてください。 あ、何故、フがブに変わっているか等の質問は受け付けていません。 『ファブ』さんが『ファブ』さんでいいと言っていたと覚えておいてください。 それにしても『ファブ』さん遅かったですねぇ……ゴニョゴニョ」


 覚悟を決めたそばから叩き潰されました……。


 それよりも、【堕ちた龍皇】なんて、おとぎ話の英雄譚にしか出てこない空想上の生き物じゃないの!!?

 と、一斉に振り向く、私たち。

 目の前には凶悪な顔をした巨大なドラゴン。


 そして、


「いいですか、遅刻なんてもってのほかです。 人助けなどをしていて遅れたならまだ許せますが、お化粧に手間取ったってどれだけですか! わかっていますか? それでも元龍皇ですか!! もう少し時間に余裕を持って行動していただかないと!!」

「はい、すいません!!!(泣)」


 そのドラゴンを叱りつける無表情のカーラさんの姿があった。

次で一応研修ラストです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ