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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿拡充編
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新人研修 その2

どうも。

最近真面目なお話を続けて書いていましたので、

ここら辺から、本来のほのぼのギャグコメディに戻していきます。


それと、研修の話をさくっと終わらせるために連投します。

 なぜか荒野に連れてこられたあたい達新人従業員3名。


 あたい達は今……、



 ――途方に暮れていた。




 ……少し時間を巻き戻してみてみよう。



◇◆◇◆◇



 あたい達は茫然としていた。


 昨日、試験の合格発表があり、晴れて宿の従業員としての生活が始まると思っていた。 宿の主人である『カーラ・グライス』さんも今日から研修だと言っていたはずだ。

 しかし、朝起きて、三人で仲良く待ち合わせ場所に行ったら……、




 ――荒野にいた。



 意味がわからないと思う。 あたいにもわかんねぇ。

 カーラさんに「お早うございますぅ」と声をかけ、「おはよう」と答えてもらった次の瞬間には荒野にいたんだ。

 何言ってやがると思われるかも知れねえし、あたい自身誰に説明してるんだと言いたくなるほど混乱しているが、本当なんだ。 信じて欲しい。

 その証拠に、一緒に来た他の二人の内の一人、『カーマイン・シルブス』はなんだか遠い眼をして何やら考え込んでいる。 これは現実逃避ってやつだな。 しばらくすれば戻ってくるだろう。


 もう一人の新人従業員『ルカ・ツンクーフト』は……、わかんねぇ。 何考えてるかさっぱりわからん。 これでも人の表情を読み取るのは得意だと思ってたんだけどな……。

 さすがは【百人斬りの姫百合】は伊達じゃないねぇ。


 あぁ、ルカの二つ名は聞いたんじゃなく知っていたんだ。 【百人斬り】の名は女性冒険者間ではかなり有名だからねぇ。 合格発表の時に聞いたエピソードでわかったんだ。


 まぁ、そんな事は置いておいて、当然抗議というか疑問の声を上げたさ。


「なぜこんなところにぃ? というかぁ、ここってぇ、どこですかぁ?」って問いかけたら、シルブスも再起動しだして、質問に加わってきた。 ルカの方は……、ニコニコしているだけで、やっぱりわからなかった。






 カーラさんの話によるとここは産業都市『ゴルディ』跡。 かつて、世界を征服しかけた魔王が勇者マルタイの一味を抹殺するために、当時マルタイが拠点にしていたとされる『ゴルディ』に2千の魔物を差し向け、激戦を繰り広げたことにより、人が住めなくなってしまった産業都市跡である。

 場所的には王都『クランクラン』より南東に進んだ地点にある。 クランリード山脈に程近く、南にいけば豊富な鉱石を含む山脈、西に山脈から流れ出る雄大な川、東にエルフが住むとされる深淵の大樹海が存在する。 自然豊かであり、資源も豊富でありながら、人の出入りがあまり激しくなかったことで、偏屈な科学者や研究者たちが多く移り住み、産業都市として発展していった場所だったようだ。

 ここは現在どの国からも切り離されている土地で、魔物も強く、冒険者もほとんど寄り付かないので研修にはもってこいの土地なのだという。


 魔物が強いことのどこに研修にもってこいの要素があるのかは全然わからないんだけど、ここがどこかはわかったから良しとしよう。 ゴルディ跡地なんて依頼でも早々訪れるようなところじゃないし、来れてよかったとも思ってるよ。 でも、ついさっきまで王都にいた事実は覆らないだろう? ホント、どうなってるのか教えてほしいよ……。


 結局、教えてはもらえなかったんだけどさぁ……。


 で、次に、こんな場所でどんな研修をするんだって思うだろう? 私たちだって思った。 だから聞いたんだ。


「あのぉ、こんな場所でぇ、何の研修をするんですかねぇ?」

「そうですね。 まず、皆さんには強くなってもらいます」

「……は?」


 何を言ってるんだって思ったね。 ホント、本気で。 『頭大丈夫?』って思ったよ。

 雇い主に対してすごく失礼だとはあたい自身思うけど、本気で思っちまったね。


「なぜ? っと言った顔をされてますね?」

「そりゃあねぇ……。 普通こういった宿の研修ってぇのはぁ、『いらっしゃいませ~』とかっていう挨拶の練習とかぁ、宿のマニュアルとかぁ、そういったことをぉ学ぶんじゃないのかぁい?」


 うん、あたいの言っていることに間違いはないはずだ。 そりゃあ、その宿ごとに研修のやり方はあるってもんだろうが、一発目の研修がいきなり『強くなってもらいます』ってぇのはないだろう?

 あたいらだって昨日の夜は、『どんな研修をするんだろう?』とか、『基本は挨拶練習とかじゃないかしら?』とか話し合ったりしていたぐらいだよ?


 そんなあたいの疑問にこたえるかのようにカーラさんの説明は始まった。


「まぁ、普通ならそういった研修をするのですが、私自身、そういった教育は受けていませんし、元々、従業員を増やす気もなかったので、マニュアルのようなものは作っていないんですよ……。 まぁ、これからは作っていこうかと思いますが……」


 カーラさんの説明に、あたいは絶句してしまう。 あの宿にマニュアルがないというのに驚いたからだ。


 詳しく聞いてみたところ、食事中のルールや、掃除時間のルールなどは決めたが、それはお客様に快適、安全に過ごしていただくためのルールであって、宿のマニュアルではないらしい。 なので、来客への対応や宿内の案内などは、全てその場の対応で凌いできていたそうだ。


『カーラさんの対応はかなり高いレベルでまとまっているので、確実にマニュアルやマナーの研修も厳しいものになると思います』と、昨日の夜、この宿に何度も足を運んだというルカが、熱く語っていたので、私たちも気合を入れていたからなおさらである。


「なので、挨拶などはその場で対応をしていただくことになるかと思います。 最低限の決まりごとだけ身に着けていただいて、あとは自由にしていただければと。 で、強くなっていただく理由ですが、」


「採用の時にも言ったと思いますが、宿屋は存外強くなくてはやっていけません。 荒くれ者との戦いなどもありますので……」


「と、理由をつければいろいろありますが、それとは別に、単純に強くなっていただかなければいけない理由がありまして……」

「自衛とは別の理由ですか?」


 再起動したシルブスが間髪入れずに聞き返す。 この子は二つ名の割には結構しっかりとしている気がする……。


「そうです。 え~っと、ここに一つ椅子があります」


 そう言ってカーラさんはどこからともなく椅子を一脚取り出した。 椅子は細身ではあるが、カーラさんの陰に隠れるほどではない。 本当にいったいどこから取り出したんだ?


「それは……、宿の椅子ですか?」


 『どこから取り出したんだよ!!』とあたいが内心突っ込んでいると、何事もなかったかのように、今度はルカが答える。 いやいやいや、椅子出てきたことに突っ込みなさいよ……。


「正解です。 これは当宿の食堂においてある椅子です。 では、リキュアさん。 この椅子を運んでくださいますか?」

「あ、あぁ」


 なんだっていうんだろうか? 別に椅子を運ぶくらいなら問題ないだろうに……。


 そう思って、椅子を軽く持ち上げてみようと手をかける。 見るからにどこにでもある普通の木でできた椅子である。 この程度であればこう、かる~く……?


 かる~k……。


 ……、


 ……!!! 重ッ!!!!!!


 なにこれ!? めちゃくちゃ重いんですけど!!?


「わかっていただけましたか? これが自衛以外で強くなっていただかなくてはいけない理由です」


 カーラさんの声がいやに響いた。


 これは、やばいねぇ……。

まえがきでも書きましたが、

研修の話は書き終えていますので、

ちょっと連投します。

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