表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿拡充編
46/61

新人研修 その1

どうも。

前回投稿したら皆様から沢山のお帰りコメントをいただきました。

ありがとうございます。


とりあえず今回から、

新人研修が始まります。


では、どうぞ。

 私の合格が決定してから一夜明けた今日この頃。


 合格が決まってからの話し合いは、比較的スムーズに進んだ。


 昨日の様子を少し回想してみましょうか。



◇◆◇◆◇



「それじゃあ、早速だけど明日から研修をしてもらうわ。 いきなりお客様の前に出すわけにはいかないから。 そんなに難しいことはしないけど、今日はゆっくり休んで英気を養っておいてね」


 これからお世話になる宿の主人であるカーラさんに言われ、私たち三人はそれぞれ気合を入れたのだと思う。


「あのぉ、明日からってことですけどぉ、あたいの荷物はまだ町に置いたままなんですけどねぇ」


 元貴族と言われていた、リキュアさんの言葉。 言葉遣いが貴族っぽくないけど何かあったのかな?

 あぁ、それよりも私も拠点にしていた町に置いたままなんですが……。


「あ、私も町に置いたままです。 取りに行くと往復で2日はかかるのですが……」

「あんたもかぁい? あたいの町まで往復になると4日はかかっちまうんだよぉ。 カーラさん、明日からってのはちょっと厳しくないですかねぇ」


 そう言ってカーラさんに確認を取る。

 私たちの発言を受けても、カーラさんの無表情はピクリとも動かなかった。


「あぁ、大丈夫ですよ。 荷物はギルドに依頼しておいて頂ければ、ギルド員が責任をもって運ぶ手はずになっていますから。 それより、ルカさんは荷物は大丈夫なんですか?」


 もう一人の合格者であるルカという女性に声をかけるカーラさん。 そういえば、彼女も私たちの発言に特に反応する様子を見せなかったな。


「私は大丈夫です。 カーラさんのところにお願いに来るときは、必ず拠点を引き払ってから訪れるようにしていましたから」


 何とも剛毅な女性である。 カーラさんが覚悟の話をしていたが、私なんかよりよっぽど覚悟を決めて、この受験に望んでいたのだとよくわかる。


「そうですか、それでそちらのお二人はどうされますか? 依頼されるのであれば、今もひっそりこちらをうかがっている、そこの隠密型ギルド受付嬢『リリカ』さんに頼んでおけばいいと思いますよ。 そうですよね、リリカさん?」


 私とルカさんの間ぐらいに声をかけるカーラさん。 この付近には私たちしかいないはず……!!!


「ありゃ~、やっぱりカーラちゃんにはバレちゃうわね。 ほかの子は気づいてなかったみたいだけど」


 ゆらりと、空間が揺れると、そこにいつのまにやらギルドの制服を来た女性が立っていた。


 いつの間に……。


「リリカさんの隠密力はすごいですからねぇ。 流石、ギルドで総員をあげて捜索しても2ヶ月間もしっぽすらつかめなかった伝説の冒険者ですね」

「いやいや、そんな私の隠密を軽く見破って、ギルド内でも生ける伝説にまでなっているカーラさんに言われても……、微妙に嬉しいわよ?」


 嬉しいのかよぉ!! ってリキュアさんがツッコンでいるけど、彼女本当に元貴族かしら? 庶民臭さがとめどないわ。

 っと、そんなことより、


「えっと、リリカさんでしたか? 荷物をお願いしてもよろしいでしょうか? 一応、まとめては来ているので、運び出すだけで大丈夫だと思いますが」

「あぁ、あたいのもお願いするよぉ。 盗られても構わねぇようなもんばっかなんだけどぉ、一応ねぇ」


 カーラさんとのぽけぽけしたやり取りを繰り広げるリリカさんに、私たち二人は荷物移動の依頼を行う。


「承りました。 当ギルドが責任をもって運ばせていただきます」


 カーラさんと話している時の、近所のおせっかいお姉さん的な表情から一変し、真面目な仕事のできる女性へと変貌したリリカさん。 切り替え力が半端じゃない。

 いくつか必要なことを確認すると、颯爽とギルドに帰って行った。 すごく、カッコイイ女性である。


 さて、王都のギルドは、規模も大きく、職員の指導も徹底していると聞いているので、荷物に関しては任せておいても大丈夫だろう。

 これからどうするのだろうと思っていると、


「荷物の件も片付きましたので、研修の話に移りたいと思います。

 先程から言っています通り、明日から泊まり込みで研修していただきます。 あぁ、お部屋はご心配なく、三人同じ部屋になってしまいますが、従業員用の部屋がありますので。 少し狭いかもしれませんが、くつろいでくださいね。

 それで、明日、朝8時から研修を始めます。 受付カウンター前に集合してくださいね。


 では、お部屋へ案内します」


 そう言うと、カーラさんは宿の中に入っていった。


 私たち3人は、待たせるわけにはいかないということで、とりあえずうなづきあい、カーラさんを追って宿に入っていったのである。



◇◆◇◆◇



 そうそう、こんな感じだった。 今も横に二人がいるけど、部屋でちょっと仲良くなったのよね。





 宿の中に入ってすぐ、カーラさんから「ついてきて」と、声をかけられた。 以前泊まった時も思ったが、ただ古いだけではなく、歴史を感じさせる宿の雰囲気は落ち着いていて、とても心地がいい。 これからこの宿で働けると思うと、とても嬉しい。

 私にはクランリード山脈を制覇するという夢もあるが、今は実力がまだ足りないだろう。 聞けばカーラさんは元冒険者で、クランリード山脈を制覇した人物の一人であるらしい。 色々教えを請うのもいいと思う。

 クランリード山脈を制覇した人は、過去に8人しかおらず、しかも全員がSS級以上の冒険者だという。 ということは、カーラさんは見た目からは想像できないが、少なくともSS級以上の冒険者であったということである。 そう言えば先ほどもリリカさんから、生ける伝説とか言われてたような……。 本当に人は見かけによらないものである。 あの細腕のどこにクランリード山脈を制覇する力が秘められているのだろうか?


 そうこうしている間に、一つの部屋の前に来た。 周りはなんだか見覚えのある部屋である。


「ここが皆さんに使っていただく部屋になります。 生活に必要なものは一通り揃えてあります。 お風呂とトイレは部屋にありませんので、宿内のお風呂とトイレを使っていただくことになります。 入浴時間は特に決めていませんが、お客様と鉢合わせになることもありますので、あまり変な態度を取らないようにお願いいたします。 まぁ、細々したことは置いておいて……。

 本日からここがみなさんの家となります、ゆっくりくつろいでください。 では、私はもろもろ仕事がありますので」


 その言葉を残して部屋に入っていくカーラさん。

 見覚えのあるのは当たり前であった。 隣の部屋は3日前にも訪れていたところなのだ。


 さて、後は自由にしていいらしい。 しかし、突然のことにどうしていいか分からず、私たち3人は顔を見合わせる。 ここは、一番年長者(多分そうだろう)である私が何か言わなければいけないだろう。


「とりあえず、部屋に入りましょうか。 少し落ち着いて、ちゃんと自己紹介をしましょう。 私たち、まだお互いの名前ぐらいしか知りませんし」


 私がそう提案すると、


「ははッ、そうだねぇ、あたいたち今日顔を合わせたばっかりだったってことを忘れてたよぉ。 それじゃあ入るとしますかねぇ」

「じゃあ開けますね」


 リキュアさんが軽く笑いながら了承してくれた。 ちょっと硬い空気が緩んだような気がする。 彼女の独特の喋り方は、空気を和らげるの効果もあるみたいだ。

 その、リキュアさんの言葉に反応し、ルカさんが部屋の扉を開ける。


「これは……」

「おぉ」

「すごい……」


 入口の扉を開けた私たちは、三者三様に驚いてしまった。 ……それも仕方がないというものだろう。


 開いた部屋は、かなりの広さをほこっていた。


 清潔なシーツが敷かれたベッドが3脚しっかり置いてあり、執務用の机が備え付けられている。 少しお茶等を楽しむためのテーブルと椅子のセット、お茶を入れるための炊事場も完備。 最近発達した製紙技術により、比較的手に入りやすくなった本がズラリと並ぶ本棚、大きな窓からは宿の裏庭が見え、様々な花々が咲き乱れている。 部屋は魔道具のランプが付いており、夜でも部屋は明るくできるようになっている。 それだけでも十分驚きの広さであったが、さらに驚くべきものがあった。

 私たちの名前がそれぞれ書かれたプレートを下げた扉があったので、なんだろうと思い、開いてみると、私がゆうに5人は寝ころがれる空間があった。 見た感じでは、衣装部屋とか倉庫と言った感じだろう。 正直予想以上の光景だった。

 いや、予想をはるかに超えすぎだ。


 最悪、3人で顔を突き合わせて、雑魚寝も覚悟していたぐらいなのに、待遇が良すぎないだろうか?

 カーラさんの部屋の倍ぐらいは広いその部屋に、わずかばかり緊張してしまう。 幸い他の2人も予想外だったのか固まってしまっているので、この部屋を見て驚いているのは私だけ、という恥ずかしい事態にならずに済んだようである。




「これは予想外だったねぇ。 まさかこんなにいい部屋を使わせてもらえるなんてねぇ」


 各々がそれぞれ納得のいくまで驚きながら部屋を見て回った後、とりあえずベッドはどこを使うかだけ決め、腰を落ち着けた。

 少しの間、皆が惚けていると、リキュアさんが話題を振り始める。 おっと、年長者として惚けてばかりはいられないな。


「そうですね、何人採用するかも決めてなかったと聞いてますし、いきなり3人も採用されたので、最悪大部屋で雑魚寝かと思っていましたよ」

「そうだねぇ。 あたいもそう思ってたよぉ」

「ですね。 まぁ、急でもカーラさんなら部屋一つぐらいならどうにでもしそうですけど」

「ん? なんでだぁい」


 カーラさんなら、部屋の一つぐらいならどうにでもできるとは、どう言う意味だろうか?

 リキュアさんも疑問に思ったのかルカさんに訪ねている。


「あ、いえ、私はここでは常連の方なんですが、毎回必ず不思議な現場に遭遇するんです。

 特に掃除の時間なんですが……、カーラさんがいっぱいいるんです。

 何を言っているかわからないと思いますが、とにかく不思議な現象なんです。 カーラさんに聞いても、秘密らしいので何が起きているかは未だに不明なんですけど……」


 カーラさんがいっぱい? 不思議というよりも怪奇現象じゃないの?


「そりゃぁ不思議だねぇ。 あたいらもこれから不思議の仲間入りしちゃうかもねぇ」

「それだけで片付けられるの!?」

「んん~? そりゃぁ片付けるしかないだろうねぇ。 実際、見てみないことにはどれほど不思議かわからないしぃ」


 それもそうか、と納得。

 ルカさんの不思議話題のおかげで、皆がそれぞれ驚きから立ち直ったようなので、強引だが話を進めて行こうと思う。


「では、部屋に入る前に話していた通り、自己紹介をしましょ……、いや、もう敬語じゃなくてもいいか、では、改めて、自己紹介をしよう。


 まずは私からだが、

 私は、『カーマイン・シルブス』。 色々恥ずかしい過去を暴露されたような気がしないでもないが、【器用貧乏】のシルブスとは私のことだよ。 今はないけど、辞める前はB級の冒険者だった。 年は25歳。 これから、同じ宿で働く仲間としてよろしくお願いするよ」


 無難に自己紹介を済ませる。 【器用貧乏】と言う不名誉な二つ名をもらったことは、あまりいい思い出ではないが、二つ名を得ることは名誉なことなので、結局どっちつかずな二つ名だと思う。


 私の自己紹介が終わったので、二人からそれぞれ「よろしく」と言われる。 私がベッドに腰掛けると、次にリキュアさんがベッドの上に立ち上がった。 そして、あいも変わらず独特の口調で自己紹介を始めた。


「次はあたいだねぇ。 あたいは、『リキュア・アドルフ・バークソン・ミルレディア・キャスベン』。 まぁ、長ったらしい名前だけど気にしないでおくれよぉ。 呼ぶときはリキュアでいいからねぇ。 あ~、二つ名は【一刀両断(ひとたち)の姫(ひめ)】なんて大層なもんを付けられてるよぉ。 冒険者ランクはA級ぅ。 一応、准S級とか言われてたけどねぇ。 年は26だよぉ。 よろしくぅ」


 ……私より、年上だったらしい。 それに二つ名がカッコイイ。 絶対【器用貧乏】よりいい。


 リキュアさんは、見た目は完璧に貴族の令嬢である。 顔や髪の毛はいつも清潔にしているのがわかるほど整っているのに、服装は歴戦の強者を思いおこさせる軽鎧を纏っている。 そのせいで、貴族の令嬢が庶民の服装をまとって遊んでいるようにしかみえない。 しかし、一番驚くのはその見た目からは想像もできない独特の喋りだろう。 少し語尾を伸ばす喋り方は、令嬢の見た目と比べ、とてもアンバランスである。

 まぁ、人の喋り方などその人の趣味のようなものなので、注意するつもりもないのであるが……。


 私とルカさんはそろって「よろしく」と言葉を返した。


 それに満足そうにうなづき、ベッドにボスンッと座るリキュアさん。 本当に元貴族らしくない立ち振る舞いである。 あ、元だからいいのか。


「最後は私ですね。 『ルカ・ツークンフト』といいます。 皆さんと同じ元冒険者です。 ランクはB級でした。 年は25です。 これからよろしくお願いしますね。 あと、二つ名って言わないといけないですか?」


 最後にルカさんが立ち上がって自己紹介を始める。 私と同い年か……。 これから仲良くしよう。 まずはルカと呼ぶことから始めるとしようか。


「いや、別にいらないよ。 ルカさん……同い年だし、ルカでいいよね? ……ルカの二つ名が恥ずかしいものかもしれないし、私の二つ名みたいに不名誉なものだったら、言うのが嫌だろうしね」

「そうだねぇ。 カッコイイと勘違いしているぅ、二つ名を付けられた可哀想な冒険者って多いからねぇ。 どちらかと言えばぁ、ダサくてぇ、カッコ悪い場合が多いじゃなぁい? あたいの二つ名もぉ、カッコイイとか思われてたら結構恥ずかしいぐらいのものだしぃ」


 グサッときた。 カッコイイとか思ってたのに……。


 ただ、長年誰も言い出せなかった疑問に、簡単にツッコむ、リキュアさん。 確かに『ダサいなぁ』とか、『あんな呼ばれ方して恥ずかしくないのかなぁ』とか思ったことはあったけど、ココまでズバッという人も珍しいんじゃないかな? 大抵はみんな目を背けて『い、いい二つ名ですね、オホホホ』と言葉を濁すぐらいなのに……。


「そうですか……。 ありがとうございます。 お二人共、これからよろしくお願いしますね」


 そんなルカの言葉を最後に、自己紹介は締めくくられたのである。



◇◆◇◆◇



 こんな感じで話が進んで行ったのよねぇ。 あのあとも結局盛り上がっちゃって、カーラさんが夕飯のお誘いに来るまで話続けてたのよね。 これから同じ職場で働く仲間なんだから仲良くできるのはいいことね。


 そうそう、なんでこんな昨日の回想なんてしているのかって思うわよね? まぁ、ちょっとした現実逃避みたいなものよ……。


 今の時刻は9時20分。 宿で研修が始まっている時間なんだけど……。





 ……なんで私たちは荒野にいるの?????? 

はい。


何点か、解説を。


シルブスさんが年長者だと思ったのは、リキュアとルカの見た目が二十歳前後に見えたからです。 それ以下でもそれ以上でもありません。 あまり突っ込まないようにお願いします。


二つ名についてですが、彼女たちは特別目立つ存在だったので、二つ名を得ています。 大体はSクラスないしそれに準じるクラスになって初めて二つ名がつくかも……といった程度です。


そして謝罪を。

長い間放置していた事も有り、

若干設定などがわからなくなって来ています。 自分で作ったものですが……。


時々違和感があるかもしれませんが、ご容赦ください。


では、次話で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ