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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿拡充編
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従業員増やします。 第6話

次回からまえがきは何かしらの連絡がある時にしか書かないようにしようと思います。

あとがきはちょろちょろと書きますが……。


では、どうぞ。

--某国最大の宿 宿主の娘の場合--


「次の方どうぞぉ」

「はい」


 ドアを開いてカーラさんの部屋に入る。 私自身カーラさんとはかなり仲がいいつもりだが部屋には初めて入った。

 ここにも何か人気の秘密があるかもしれない。 しっかり見ておかなければ。


「はい、不合格でいいわよね」


 開口一番でカーラさんがそんなことを言い放った。


「えぇ~!! 待ってくださいよ! ちゃんと試験してください!!」


 流石に食いついた。 いきなり不合格は理不尽すぎるでしょう!?


「でもねぇ、流石にアンナちゃんはうちでは雇えないわよ? おうちに戻る気もあるんでしょう? 一応、一生をうちの宿で過ごして貰えそうな人を選ぶつもりだから、アンナちゃんでは厳しいわよ?」

「イエイエ、ワタシハアンナナドトイウムスメデハアリマセン」

「だからアンナちゃんは不合格ね?」

「待ってくださいって! カーラさんひどすぎますよ! 少しぐらい宿のことを教えてくれてもいいじゃないですか!! 全然教えてくれないからこうやって直接働きに来たのに、それすらダメなんですか!?」


 宿のことを少しでも学んで帰るつもりだったので、そう簡単には引き下がれないのである。 そんな私にカーラさんは、少し困ったような空気を醸し出しながら、とても魅力的な提案をしてくれた。


「宿のことなら、普通に来てくれれば教えるわよ? 昔は私も若かったし『自分一人で技術を独占』なんてことも思っていたけど、今はそんなことはないしね。 それに、アンナちゃんには、ちゃんとおうちの宿をついでもらいたいから、来ても不合格にするだけよ? まぁ、アンナちゃんとは仲がいいと思っているし、仲良くしていきたいと思っているから、また遊びに来てね?」

「え? 本当ですか? 言質は取りましたよ!!? 嘘付いたら『キーティゴ』(木苺に酷似した、木の実型の魔物。 木苺と間違えて食べると食道で爆発し、無数の針を喉に突き刺して攻撃してくる。 命に別状はないが、その後2週間はものを食べるのが億劫になる。 嫌がらせのために、よく使われる)を飲んでもらいますからね!」

「……それは怖いわね。 でも大丈夫よ、深くは無理でもちゃんと教えてあげるから」


 この提案はかなりいい条件ではないだろうか? 遊びに行くだけで、宿のことを色々と教えてもらえるのだ。 それに、何年も前から聞いていることがタダで教えてもらえるのだから、こんなにいい条件はそうそうないだろう。

 頭の中で一瞬のうちに結論を出し、私はカーラさんに話しかけた。


 それにしても、カーラさんも私と仲がいいと思ってくれていたのが嬉しい。


「じゃあ、約束してください。 不合格でもいいので、次に遊びに来たら、宿のことをちゃんと教えてくださいね? それに、私もカーラさんとは仲良くしたいと思っていますし、仲がいいと思っています。 これからもよろしくお願いしますね?」

「ええ、よろしくね」

「じゃあ、今日はお邪魔して申し訳ありませんでした。 残りの試験も頑張ってください。 では、失礼しました」

「はい、お疲れさまでした」


 カーラさんにちゃんと気持ちを伝え、そそくさと部屋を出て行く。 出て行く時にみえたカーラさんの表情は、相変わらずの無表情だったが、私にはどこか笑っているように感じた。



 ――きっと今の私はとてもいい笑顔だろう。



◇◆◇◆◇



--現役A級冒険者 ミアの場合--


 今日は運命の日です。


 あぁ、ご紹介が遅れました、私は冒険者の『ミア・エクシリア』と言います。 今日はこの『竜帝の宿木』に従業員採用試験を受けに来ました。

 私とこの宿の主人であるカーラさんは実は知り合いなんです。 ――どういった経緯で知り合ったのか、ですか? いいでしょう、少しですがお話しましょう。


 あれはもう四年ほど前になりますか……。



◇◆◇◆◇



 当時の私は駆け出しの冒険者でした。


「今日も何かいい依頼はないかなぁ」


 やっとD級の冒険者になったばかりの私は、毎日を簡単な採取依頼などで過ごしていました。 理由は簡単で、私レベルの冒険者では、魔物に簡単にやられてしまう可能性が高いからです。 パーティを組むことができれば話は別ですが、残念ながらレベルの低い冒険者と組んでくれる方は、そうそういません。

 女性冒険者のほとんどは、強い男性冒険者と組んで依頼をこなしていくのが一般的、とされているのですが、あいにく私は男性が苦手だったので、誰とも組むことがありませんでした。


 そういった女性冒険者のほとんどは実力が付くまで、比較的安全な地域で狩りをしたり、採取の依頼をこなしたりして経験値を稼ぎ、レベルを上げていきます。


 その日も例に漏れず、私は王都から少し北東に行ったところにある『ベイヤーの平原』で、睡眠薬の原料になる『ねむり草』の採取依頼を受けていました。

 一本採取するだけで30銅貨はかなりおいしい依頼で、睡眠薬自体が50銅貨で販売されていることを考えてもかなりおいしい依頼だとわかってもらえると思います。

 これだけおいしい依頼だと、逆に裏がありそうなものですが、『ベイヤーの平原』は魔物も弱く、『ねむり草』も群生しているし、依頼主の道具屋の主人もいい人なので、危険も少ないだろうと踏んでいたのです。


 順調に採取を行なっていく私。 そろそろ切り上げて近隣の村に帰ろうかという時に"それ"は現れました。


 ザシュッ、という草を踏みつけるような湿った音に反応して、振り向いた私の目線の先には、『ィノーシ』と呼ばれる猪に酷似した魔物がいました。

 全身を黒い毛皮で覆われた筋骨隆々の巨大な体躯を見て、私は絶望しました。


 魔物が他の地に比べ、一段階以上強いとされるクランリードの地でも猛威を振るう魔物に、たった一人で、しかも隠れられる遮蔽物など全くない、この平原で出会ってしまったのですから……。



◇◆◇◆◇



 ふぅ、少し語りが過ぎてしまいましたね。


「次の方どうぞぉ」


 おっと、呼ばれてしまったようです。


「失礼します!」


 私はドアに手を伸ばしました。



◇◆◇◆◇



 魔物に襲われた私は、持てる全ての技術を使って魔物の攻撃を躱しました。 『ィノーシ』の攻撃は、体長4メートル、体重数百キロを超える巨体とその巨体に似合わぬ俊敏さを生かした高速の体当たりですので、射線上から体をずらすことができれば避けることは可能でした。

 しかし、一撃でも浴びれば即死は免れないと言う恐怖や、魔物が放つ威圧の気配などで思うように体は動かず、徐々に疲労していった私は、ついに魔物に捉えられてしまいました。


 体当たりを避けきれなかったことで、わずかに左腕が相手の巨体に触れてしまったのです。 ほんの数センチ、いや、数ミリの差で触れただけでしたが、私の体は大きく吹き飛ばされ、左腕は完全に折れて使い物にならなくなっていました。

 左腕に走る激痛と、大きく吹き飛ばされたことによる全身の打撲で、瀕死状態にあった私は迫り来る巨体に、【死】を覚悟しました。 そんな時です。


「あらあら、これはいけませんねぇ」


 なんとも気の抜けた、この逼迫(ひっぱく)した状況に全く似つかわしくない声が聞こえたのです。


 いつまでたってもやってこない【死】の気配に私は目を開けました、そこには……、







 こちらを見ながら"巨大な黒い塊"を片腕で持ち上げている女神様の姿がありました。







「はへ?」

「はい?」

「え~っと」

「あ、怪我治しますね? はい【回復(ヒール)】」

「!!!!」


 状況がわからず混乱する私に、女神様は空いたもう片方の手で魔法をかけました。 とたんに私を包む暖かい光の波動。 私の怪我は一瞬で、失われた体力ごと癒されました。 それは最近、噂でよく聞くようになった"回復魔法"と呼ばれるものだと、後で気がつきました。 その異常さにも……。


 しかし、その時の私にはそんなことを気にする余裕は、一切ありませんでした。


「えっ? えっ!?」

「怪我は治しておきましたので、頑張って依頼を続けてください。 では、私はこれで」


 そんな言葉を残し、重さを全く感じさせない足取りで黒い塊を軽くお手玉しながら去っていく女神様。 私はついつい呼び止めてしまいました。


「あ、あの! 女神様!!」

「ぶっ!!! なんですかそのあだ名は!? 私は『カーラ』です」

「じゃ、じゃあ、カーラさん」

「はい、なんですか?」

「あの……、えっと……」



◇◆◇◆◇



 こうして呼び止めたことから私とカーラさんの付き合いは始まりました。 その後、カーラさんとパーティを組んで少し冒険をしました。

 まさかレベル20そこそこしかない私と、最強種の一つであるドラゴンを戦わせようとするとは、思ってもみませんでしたが……。 そのおかげで、短期間でA級冒険者までたどり着くことができたのですから、よかったのではないかと思います。

 その後、カーラさんが引退するまでの少しの期間ですが互いに交流を深めていったのです。 まぁ、友達の後輩冒険者ルカちゃんがカーラさんと知り合いになったときには『世間は狭いな~』なんて思ったこともありました。


 とまぁ、こんな感じでカーラさんとは仲がいいんです。


 では、女神様と一緒の職場になれることをひたすらに願い、今日の試験を突破しますか。



 待っていてくださいね。 私の女神様!!!!



◇◆◇◆◇



--某国 一番偉い役職の人の場合--


「次の方どうぞぉ」

「失礼」


 呼ばれたので部屋に入っていく。


「あ~、不合格でよろしいですね?」

「なんでじゃ!!?」

「いや~、なんでというのはこちらの方だと思うのですが……。 ここは貴方の様な高貴な身分の方がいらっしゃるところではございませんので」

「さ、差別じゃぁ。 カーラちゃんが差別をしよるぅ!」


 理不尽すぎるじゃろう? こちらはしっかり試験を受けに来ておるのに追い返そうとするとは。


「はいはい、皇帝陛下のお戯れは重々承知していますので今日はお引き取りください」

「ひどいぞぉ、横暴じゃぁ、わしだってカーラちゃんと一緒にお仕事がしたいんじゃぁ。 ここでわしを追い返すというなら、わしの秘書になっておくれよぉ」

「はいはい、皇帝陛下のお戯れは重々承知していますので今日はお引き取りください」

「いや、だからね、わしを追い返すというなら、わしの秘書n「はいはい、皇帝陛下のお戯れは重々承知していますので今日はお引き取りください」……」

「……」

「……」

「……わしを追い返すt「はいはい、皇帝陛下のお戯れは重々承知していますので今日はお引き取りください」……すまんかった」


 全く感情を映さん顔で同じセリフを繰り返されては、さすがのわしも泣くぞい。


「はい、お疲れさまでした。 皇帝陛下はちゃんと帝国のことを考えて政務に励んでくださいね?」

「むぅ、昔より隙がなくなっておる。 まぁええわい、ちょっと気になったから来ただけじゃしの。 いつでもわしの息子たちに嫁いで来てくれてかまわんのじゃぞ? カーラちゃんなら大歓迎じゃ」

「はいはい、皇帝陛下n「もうそれはええわい!」……ふぅ、早く帰らないとカルマーンさんに怒られますよ? また遊びに行くこともあると思いますのでその時はよろしくお願いしますね?」

「うむ、いつでも来るがええぞ。 では、これで失礼する。 またの」


(ふぅ、カーラちゃんが伴侶探しをしているというのは、やはり嘘じゃったようじゃな。 よかったよかった。 後はうちの坊主共の嫁にさえ来てくれれば万々歳なんじゃがなぁ)


 そんなことを思いながらドアをくぐった。 














 ドアの前には般若がおったよ……。

はい、お久しぶりです。


最近忙しくて更新する時間が取りづらくなってきています。


ちゃんと更新はしていきますのでこれからもよろしくお願いいたします。

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