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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第六章:宿拡充編
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従業員増やします。 第5話

ども。


お久しぶりです。


では。 どうぞ。

 時間は進み試験開始から二日がたった。


 流石に3000人規模の面接試験は全て書く事が出来ないのでいくつかピックアップして紹介しよう。




--魂の料理人 ラポーの場合--


「お久しぶりですね。 名前は覚えていますが一応試験ですので、

 受験番号と自己紹介、当宿への就職希望理由を教えていただけますか?」

「はい!! 受験番号105 『ゴーテァ・ラポー』です。 料理人です。 就職の理由ですが、一度お昼に食べさせていただいた料理に感動致しまして私もこの料理を作りたいと思ったからです。 一度は弟子入りを志願させて頂きましたがその時はかないませんでしたので今回の機会にしたいと思っておりまして」


 私はさすらいの料理人ラポーです。 昔は帝国最大の旅館『帝国グランドホテル ドゥエルクラン』で総料理長をさせていただいていたこともあります。

 私がこちらの宿と出会ったきっかけは実はお恥ずかしい話ですがスパイ行為のおかげなのです。


 先ほどもお話いたしましたように私は帝国最大の旅館で総料理長をしていたこともありますので料理の腕には自信がありました。 プライドも高くはっきりいて他人の料理を見下していました。

 そんな折、オークランの王都にある宿屋が『天上の料理』を提供すると聞いて私は居ても経っても居られなくなりました。 「私の料理を差し置いて『天上の料理』などと片腹痛いわ!」なんてことも言っていたと思います。


 しかしお客様から徐々に私の料理が物足りないと言われ出したのです。 私の料理が味気ないと。 「ライスはないのか?」とも言われたことがあります。 そんなことを言われたお客様は全て『天上の料理』を食べたお客様であることが分かりました。

 そんなこともあり部下を派遣しその宿を調査させました。 そうしましたら調査に行った部下が腑抜けて帰ってきてしまいました。 なんでも女将さんがとても美しくそして料理もおいしいとのこと。 その時はそんな腑抜けた部下はすぐに解雇しましたし、新しく部下を派遣したりもしました。 その後も部下を送るたび送るたび腑抜けて帰ってきたのでついには私が潜入することにしました。

 相手はこの私の料理を食べている部下たちを腑抜けにした手練です、かなり気合を入れて向かいました。 必ず相手の失敗を見つけてやろう、いや総料理長の私からすれば見つけられるはずだという気持ちを持っていました。





 ……完敗でした。 その一言に尽きます。 素朴ながら豊かな味をたたえるスープ(味噌汁)、白く輝く穀物の炊き出し(ご飯)、短冊型に切られた生の魚(お刺身)、その魚をつけて食べるサラサラのソース(醤油)、そのソースの付け合わせのピリリとした緑の香辛料(山葵)、そして卵を焼いて形を整えたもの(だし巻き卵)、たったそれだけの簡素な食事のはずだったのですが私の受けた衝撃は計り知れません。 この大陸のどの部族、民族、種族の体系にもないその料理は私の料理人としてのプライドを粉々に打ち砕きました。


 何度も足を運び、味を盗もうとしましたが訪れるたびに深くなる味についに諦めました。 


 その後私はすぐに総料理長をやめ、彼女に弟子入りを決めたのです。


 結果は先ほどお話した通り。 一度も相手にされることはありませんでした。 きっと傲っていた私への戒めなのでしょう、女将さんにあしらわれたことで今まで私が相手にしてきた全ての料理人の気持ちが分かった気がしました。 断られたというのに女将さんに感謝の意を述べ、私は溜まっていた財産を全て使い、世界を回る旅に出ました。


 必ず女将さんの味のルーツを見つけ出すと心に決めて……。





 まぁ結局見つけ出すことは敵いませんでしたが……。


 そうこうして世界を回っている間に訪れた街のギルドである噂を耳にしました。


----



「女神の宿で従業員募集だってよ!!! イヤッフ~ついに俺にも運が向いてきたぜ~!!!」

「なんでお前に運が向いてくるんだ? 意味がわからん」

「おいおい、マルよ、お前あの宿のこと知らねーのか?」

「しらん。 宿など泊まれればどこでも同じだ」

「馬鹿言ってんじゃね~よ!! おめぇ女神の宿って言ったらあれだぞ!? すげぇ美人の女将が一人でやってて、すげぇサービスもよくて、すげぇうめぇ飯まで出てきて、しかも料金がめっちゃ安いし、さらにおめぇすっっっっっっっっっっっっげぇ美人の女将がいんだぞ!!!!!」

「料金が安いのは魅力的だな。 というかカク、お前今『美人の女将』って二回言ったぞ」


 そのやりとりに私は驚愕しました。 まさかあの宿が従業員を募集している!? そんな馬鹿な!? といった気持ちだったのは言うまでもなく、しかしもしかしたら違う宿のことかもしれないとそのパーティの話を耳を大きくしてギルドの端からバレないようにしっかりと聞くのでした。


「大事なことなので二回言ったんだよ!!! ともかくすげぇ宿なんだけどすげぇ難攻不落でさ。 いろんな男がアタックしてんだけど全部ドボン、ピクリとも反応しない女将の笑顔を見たものは幸せになりすぎて死ぬって噂まである宿だよ!! なんでも国王ですら毎日アタックして振られてるらしいぞ!?」

「そうかそうか、宿の凄さはなんとなくだが伝わった。 しかしお前に運が向いてくる理由がないだろ? トライもそう思うよな?」

「そうねぇ、カクは馬鹿だしなんか変なところで運がむいてきたって勘違いしたんじゃない? クロスは?」

「……あの宿は、……確かに凄かった」

「あれ? クロスも知ってるの?」

「……ああ」


 もう間違いなさそうです。 彼らの話している宿は『竜帝(りゅうてい)宿木(やどりぎ)』のことに違いなさそうです。 あの宿がついに従業員を募集するだって!? なんとかしてその情報を掴まねば。


「クロスと俺は知ってるよな。 まだお前らとパーティ組む前に一回だけ行ったことがあるんだからよ。 しかもそんとき俺は女将さんにいい印象を与えてるんだ」

「バカじゃないの? あ、馬鹿なのか……。 そんな昔のことなんてとうに忘れてるわよ、その女将さんだって」

「そうだな。 もう一年ちょっと前ぐらいの話だろ? 流石に忘れてると思うが?」

「……あの女将なら覚えているだろう」

「え?」

「そうそう!! クロスの言う通りだぜ!!! あの女将がすげぇんだって話はしただろ? その中の一つが記憶力なんだよ!!! 今まで宿泊した客の名前や顔とか全部覚えてるらしいぞ」

「いやいや、流石にそれはないでしょ……」

「それがあるんだよ!! そのあと三ヶ月ぐらいしてかな? 町で偶然女将を見たから声をかけたんだよ。 まぁ下心があってのことだからあんま褒められたことじゃねーけどな。 そしたら女将から


「あら? カクさん、お久しぶりです。 お元気でした? 今日はクロスさんは居られないんですね。 また当宿に来てもらえる日を楽しみにしていますよ?」


 なんて声をかけられてな。 流石にあの時は「あ……はい」としか言えなかったぜこの俺が!!」

「……俺も似たようなものだ」

「クロスも!?」

「ぬぅ!? それはかなりの信憑性だな」

「あれ!? なんか俺信頼されてなくね? なぁクロス?」

「……そんなことはない。 ……お前はリーダーだろう?」

「そうか! そうだよな!!!」

「で? どうしてそれがお前に運が向くことにつながるんだカク(バカ)?」

「そうよ。 早く教えなさいよ。 カク(バカ)


 早く情報を出してくれませんか? リーダー(バカ)くん。


「なんか非道い言われようの気がするが……。 まぁ俺はリーダーだから気にしない」

「……単純」

「いいか、お前ら! そんな難攻不落の宿で従業員募集、しかも女将が一人で切り盛りしてた宿。 このことから導き出される答えは……。 はい! トライくん!!」

「……え~っと答えなきゃダメ? (メンドくさ~) まぁいいけど。 多分『伴侶探し』ってとこでしょ?」

「はい!! せ~かい!!!!」 ビシッ!!!!

(ウザ!!)

「そのと~り!! それしかないだろう!!? だって今まで従業員の募集なんて一度もやったことがない宿がだぜ!? 急にするんだぜ!? それしかないだろう!! ……そくぉで! 俺に運が向いてきた理由とは!? はい! マルくん!!」

「あ~なんとなくだが……、【好印象を与えている】→ということは【従業員に選ばれ易い】→ということは【女将の伴侶に!!】→ということは【すげぇ美人の嫁さんゲットだぜ!!!!】って所か? 都合良すぎる妄想な気もするが……」

「はい!!! せ~かい!!! と言うわけで俺に運が向いてきている理由だ簡単だろ!!」

「……超難問」

「そうか? すげぇ簡単だっただろ!? と言うことで次の目的地は『王都・クランクラン』だからな。 ちょっと長旅だがまだ時間はある。 各自それぞれ装備を整えるように、では……解散!!!」


 意気揚々とギルドを出て行くリーダー君。 詳しい情報は一切聞けませんでしたね。 まぁ彼らを護衛に雇えば王都への道も安全になるでしょう。 私ももう少し詳しい内容をギルドで集めてから彼らに護衛を依頼しに行きましょうかね。


「ちょっとクロスいいの? あの馬鹿、別の女と関係を持つ気よ!?」

「……別に構わない。 ……最終的に俺の所に戻ってくる」

「まぁあの馬鹿があんた以外に上手く付き合える子なんているわけ無いだろうし、多分試験にも受からないだろうからいいんだけど……。 あんたが別にいいなら私は何も言わないわ」

「……おう」


 おっと、クロスさんは女性だったんですねぇ。 こんな所でまさかの情報収集をしてしまいました。



----



 なんてやり取りをへて遂にここまできたのです!! これは必ず受からねばなりません!!!


 女将さんと数度やり取りを交わし、最後に質問されましたのは「あなたにとってお客様とは?」という内容。 これは少し答えに困りますね? 女将さんの言葉、宿にでかでかと掲げられている言葉から察すれば、ここは『お客様は神様です』と答えるところなんでしょうけど、『()にとってのお客様』というところに何か意味があるのかも知れません。


「私にとってはお客様とは、"最高の料理をいつもお届けするべき相手"です。 その方がどんな方であっても、お金を払い私の料理を食べに来ていただいている以上、最高の料理でおもてなしするべき相手。 それが私にとっての『お客様』です」


 私が世界中を旅して変わったことといえば、このお客様に対する姿勢でしょうか? 昔の私は『お客様に料理を食わせてやっている』なんて思っていましたからねぇ。 これがどういった意味の質問かは分かりませんが、これであっていれば私の世界巡りも無駄じゃなかったんだということですね。


「はい、ありがとうございました。 結果は二日後になりますので、それまではゆっくりお休み下さい」

「ありがとうございました。 失礼します!!!」


 そう言って部屋を出て行った私。 結果発表が楽しみでなりません。 

あれ? なぜこんなに長く……?


あの冒険者達め、お前らの会話に多分めちゃくちゃ文字使ったぞ!!!

なかなかいい仕事しやがって……。 あいつら準レギュラーにしてやるか……。


それにホントは短い小話をつなげて一本で紹介を終えるはずだったのにまさかの料理人さん一択になってしまった……、自分でも驚いている。 でも反省はしない。


次回は他の受験者の小話連打の予定です。

では、また次回で。


6/16 不抜け→腑抜け に修正いたしました。

名無しさん様 ご報告ありがとうございました。

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