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チートだけど宿屋はじめました。  作者: nyonnyon
第五章:宿での出会いは一期一会編
36/61

男、ふたり 後編

続きです。


どうぞ。

 魔法の無駄撃ちによる精神力の消費でピクリとも動かなくなった強盗その2。 流石に焦ったのか何が起きたのかも確認せずもう一人が突っ込んできた。


「!? 何をしたか知りませんが覚悟してください、このミスリルナイフはどんなものでも切り裂くことが出来るのです」


 数歩分の距離を一瞬でつめてくる強盗その1、手にはミスリルナイフをしっかり握っている。


(しかし何でも切り裂くミスリルナイフって……)


 私の目の前まで距離をつめた強盗は、ナイフを突き出す。 間合いをつめる速度といい、ナイフを振るう速度といい、伊達にレベル43の冒険者をしていたわけではないようだ。


 ――ぽふっ!


 私に向かって繰り出されるナイフでの一撃を"ペン"で受け止めた。 そう、音からも察していただけるであろう"羽ペン"で……。


「どんなものでも切り裂くとは大きく出ましたね……。 しかしこんなペンすら切れないのですから、何でも切り裂くと言うのは撤回した方がよろしいんじゃないでしょうか?」


 少し皮肉をこめて言ってみた。


「……!! かかりましたね! そっちはおとりです!」


 どうもナイフで注意を引き付けていたようだ。 よく見るとナイフはミスリル製ではなくただの鉄、しかも硬度の低い軟鉄であることがわかった。 これでは人を少し傷つけることしか出来ないだろう。

 それでも羽ペンを切り裂けない時点でおかしいことに気づかないものだろうか? まぁ気が動転しているのだろう。


 強盗その1はナイフの材質を確かめている私の死角を衝くように首を狙って剣を振り下ろす。


「まぁ、それも分かりきっていることではあるのですが……」

「……え?」


 --ぽふっ!!


 剣は首に当たる数十センチ手前でまたもペンに阻まれ止っていた。


「……は?」

「おとりを使っての死角からの攻撃。 卑怯者がよく使う手口です。 それにしても遅すぎます、あえて隙を作ってみたのにその隙に反応すら出来ないとは……」

「馬鹿な……、この剣はナイフと違いちゃんとミスリル製なんだぞ!? それが何故……」

「もう会うことも無いでしょうからいいことをお教えします、これはミスリル製では傷一つ尽きません。 このペンは……、『栄光の不死鳥(ドクサ・ポイニクス)』の羽で作ったペンですから。

 それでは強盗さん?……、




 お城の牢屋で大変反省してくださいね」


 その言葉を残し、ゆっくりと男に近づいていく。 男は恐怖に駆られたのか逃げ出した。


「『(ロック)


 短く呟く魔法の呪文。 これで宿のドアは一切開かなくなった。


 --ガンガン!!


 ドアをぶち破ろうと蹴り上げる強盗。 しかしそのドアは只今オリハルコンと同等の堅さがあるのだ。

 入ってくる時はただの木のドアだったのに大層驚いていることだろう。 流石は【ミタールベロ】製!!

 ドアが開かないことに業を煮やした男は窓に向かって駆け出す。 ……まったく、往生際の悪い。


 --べん!!


 窓を突き破ろうと飛び出した男だが逆に窓に跳ね飛ばされた。


「なっ……!?」

「それはガラスではなくゴールヌイゴーネの鱗ですよ……」

「な、なんなんだこの宿屋はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


 ぼそりと耳元で呟いた途端、大声で叫びだした強盗。 ちょっとうるさい。


「では……、さようなら」


 宿屋にこだましていた大絶叫はその後響くことは無かった。





「……まったく、いらない時間をすごしてしまったじゃありませんか……。 お客様のためにも手早く掃除しなくては!」


 手始めに取り上げていたナイフを横に振る。 振ったナイフはつかんでいた場所を除き虚空へと消えていた。



----



「カーラ!! おりますの!?」

「いらっしゃいませ、『竜帝の宿木』へ。 ……ってどうしたのアンジェ? そんなに慌てて」

「いえ、宿を狙った連続強盗事件の犯人らしき男達が王都に来ていると報告を受けましたものですから……。 貴女も宿をやっていらしゃるから一言ご忠告をと……って、なんですの? この方達は?」


 勢い込んで入ってきたのは学生時代にペアを組んでいたアンジェリカだ。 酷く慌てた様子で駆け込んできたものだからどんな事件かと思ったがどうやら危機を伝えに来てくれたらしい。 学生時代から続くよき友人である。


「あぁ、その方たちは連続強盗犯ですね。 王都に着いて一番最初に来た宿がうちみたいですよ?」

「まぁ、そうでしたの? 折角やり過ぎないようにご忠告申し上げようと思っていましたのに遅かったみたいですわね……。 それで、この方達はどういたしますの?」


 私の心配ではなく強盗の心配をしに来たらしい。 ……本当にいい友人である。


「ここに置いておいても邪魔なのでお城に持っていってもらえると助かるのですが……、私はこれからお客様を迎えるために色々と宿の準備がありますので」

「分かりましたわ。 この方達はこの『アンジェリカ・ホンデンクルフ』が責任を持って届けておきます」

「ありがとう、よろしくお願いするわ」


 アンジェリカは未だに意識の戻らない男二人を担いで出て行った。 アンジェリカのことだから確実にお城に届けてくれるであろう。 後でお礼にご馳走を作ってあげないと……。


 その後、楽しそうに語らうカーラとアンジェリカの姿が、いつもより三割増で綺麗な宿内で見受けられたとか。

撃退しました。

上手く描写できているといいんですが……。


あと、アンジェリカさんの登場です。

新キャラです。(本編では)


さて次は何を書きましょうか……。 指輪のフラグは……、……とりあえず一旦放置しておきましょうかね。

一応話は考えているんですけどね。


まぁ順当に従業員でも増やしにいきます。


では、次話で。


3/25 合うことも→会うことも に修正いたしました。

東海青龍王敖広様 ご指摘ありがとうございました。

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