男、ふたり 中編
どうも。
夜に更新しようと思っていたのですが寝落ちしてしまいました。
では、続きです。
見覚えのある指輪を装備した男が魔力を高めている。
「やはりこの道具はすごいな……、MATが40程度しかない俺が英雄クラスと同程度の魔法が撃てるようになるんだからよ」
(はぁ、最近の冒険者は強い道具を持つとすぐに使ってみたくなるようだな。 それもこんなくだらないことに……。 あれじゃあ道具が可哀想だ。 昔来た魔装具屋の娘はもっと良い使い方をしていたんだがなぁ。
……それと自分の身の丈にあった道具を使わないと暴発の危険性もあるってのに、分かってるのかねぇ? ちょっと教えてあげた方がいいのかな?)
「あの~」
「お? どうした? 金を出す気になったかい? それとも僕の女に……」
「いえ、どちらもありませんが……、それよりも魔装具は自分の身の丈に合ったものをお使いにならないと危険ですよ? その魔装具はレベル50以上の方が対象の魔装具ですよね? すぐにはずした方がいいと思いますが……」
まぁ相手の反応は何となく予想できるがとりあえず忠告してみた。
「うるせぇ!!! 黙りやがれ!!! ぶっ殺すぞてめぇ!!!」
やっぱり予想通りであった。 もはやはずすのが難しいほど予想通りであったと言った方がいいかもしれない。
男は魔導師なのだろう、魔導師なら平均でもMAT50以上はあるはずなのにこの男は40程度と言っていた、たぶん自分の魔力の無さにコンプレックスがあり、それを解消する魔装具が見つかったのでいい気になっているのだろう……。 まぁどんな理由にせよ周りに迷惑をかけて良い理由にはならないがな。
さて、この二人、どうしようか?
とりあえず聞いておかないといけないことは……、
「はぁ……、売り上げを持って行ってどうする気ですか? それとお金を出したら私は助かるとでも?」
「お金をどうこうするかは貴方には関係がありません。 それとお金を出していただければ、命は保障しますよ? 僕も貴女ほど美しい人を失いたくはありません、アジトに連れ帰って、そうですねぇ……僕の専属奴隷にでもしてあげますよ。 どうです、いい条件でしょ。
お金を出して僕専用の奴隷として生きるか、お金を出さずここで死ぬか、こんなにも沢山の選択肢に恵まれるなんて貴女は幸せモノですねぇ」
ニヤニヤといやらしい笑い方をする強盗その1。 勝利を確信した奴らの笑い方はどれもこれも同じで嫌になりそうだ。
「……それは、ありがたくもなんともないですねぇ。 どちらも気分が悪くなるような提案ですしね。
う~ん、そうですねぇ、よし! お二人にはお城の牢屋ですごしていただきましょう」
そう宣言すると同時にペンを構える。 もちろん書ける方は相手に向けたりはしない、尖っていて危ないからね。
その構えを見た強盗二人は大笑いしだした。
「あっひゃっひゃっひゃっ!!! この女戦う気だぜ!!」
「ふふふ、そのようです。 抵抗する女性を自分好みに調教していくのは私の大好物ですのでそのままどんどん無駄な抵抗でもしていただきたいですねぇ」
「けっ! 相変わらずお前の趣味は分からん。 まぁ俺の魔法で骨まで消滅してしまうかも知れんがな」
「お手柔らかに頼みますよ? 少しでも生きていれば回復の秘薬でいくらでも直せるのですから」
下卑た笑いを見せる強盗達。 そろそろ正式なお客様が来てしまう時間だ。
「はぁ……、御託はいいので早くそのヘナチョコ魔法を撃ったらどうですか? MAT40程度の雑魚魔術師さん?」
あえて挑発してみました。
「!!! てめぇ! 死ねや! 『火』!!!!!!」
育成学校で一番最初に習う超初歩魔法が相手から飛び出した。
魔装具の効果でとても初歩魔法とは思えぬ巨大な炎の塊がこちらに向かってくる。 しかし……、
「……はぁはぁ、ひゃは! ……はぁ、俺を、バカに……し……やがった、報いを……はぁ、受けろ!!!!!」
「あぁ、あれでは言っていた通り骨も残りませんねぇ。 誠に残念ですがこれも挑発した彼女が悪いのですから仕方ありません……」
身の丈に合わず強大な魔法を使ったせいで精神力をごっそり持っていかれている魔導師の男。 やはりレベルに合っていないせいで上手く機能していないようだ……。 だから忠告したのに。
息も絶え絶えな魔導師の男の横ではまったく残念そうではない様子でもう一人の男が頭に手を当てて呟いていた。
真っ直ぐに私に向かってくる炎の塊。 このまま近づいてこられては私はともかくただの紙である台帳は燃えてしまうだろう。 台帳を燃やされたら多分私は宿経営をやめるだろう……。
(仕方ない……。 炎消すか……。 何がいいかな? あっ! あの魔法にしよう)
私は静かに呟いた。
『極重圧殺領域』
入ったものを原子レベルまで押しつぶす極重力の力場を形成する魔法だ。 大体MAT200ぐらいあれば撃てるようになる。
その魔法を相手の魔法と私の射線上に配置する。 見た目は何も変わっていないところがみそである。 私の魔法の力場に到達した相手の魔法は巨大な炎が嘘のように一瞬で消滅した。 ……まさに骨も残さず消滅したのである。
「な!? なに!?」
がっくりと膝を突きながらうなだれる強盗その2。 精神力が尽きたのであろう。 まぁ魔法を途中で無理やりかき消されたのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが……。
もう立ち上がれないだろう。
「あぁ、だからご忠告差し上げましたのに……。 身の丈に合わない装備を使用するからそんなことになるのですよ? これからはそんな装備に頼らず自分の力で成長するように努力してください」
私のその言葉を最後に強盗その2はピクリとも動かなくなった。
とりあえず強盗その2は終了です。
次は強盗その1を撃退します。
一応戦闘シーンがありますが余り描写は期待しないで下さい。
では、次話で。
追記です。
文中の内容を補足説明させていただきます。
1.強盗その2の魔法が届くまでにいくらか時間がありますが、あれは無理やり魔力を高めたことによる弊害です。
ヘボ魔導師の魔法の威力を英雄クラスにまで高めるために速度を犠牲にしています。 なので普通の魔法と比べるととても遅くなります。
2.魔法の消滅時の表現でよく解らない表現を用いていますが、あれは強盗の言葉に対するカーラさんのちょっとした仕返しのようなものです。
3.「2.の説明内容も分かりにくいよ!」という場合は申し訳ありません……。
4.『直す』と言うのは誤字ではありません。 RPGだと瀕死の重傷でも一瞬で治してしまう回復薬などざらにありますので……。
この世界でも高価だが無いわけではないものとして扱っております。




