登場!? 女神の元彼 その1 第3話
続きです。
旦那登場します。
どうぞ
「騎士団長!! 騎士団長はいるか!!」
場内の詰め所に響き渡る大声で国王『カイル・オークラン』が騎士団長を呼んだ。
「はい! いかがなさいましたか国王様!?」
慌てて答えたこの男が騎士団長である。 彼は急に呼ばれたことに驚きを隠せないようであった。
「おう、いたか。 ちょっとお前に聞きたいことがあってな、……今日一日つれまわすがいいか?」
そう言って後ろから追いついてきたリリカとアイカを見せるカイル。
騎士団長はその動作で理解した。
「はぁ、なるほどそういうことですか。 いいですよ、でも気をつけて下さいね。 怪我とかもさせないようにお願いしますね」
「わかっている、心配するな」
念をおす騎士団長の言葉に胸を張って答えるカイル。 その顔には冒険者をしていた頃の獰猛さが甦っていた。
----
所変わってここはマルタイの草原のど真ん中、カーラはある人物とあっていた。
「久しぶりね」
「あぁ久しぶりだな。 ちょうど一年ぐらいか?」
カーラの横に立つその人物はカーラと同程度の身長で、カーラより少し短いが金髪を腰まで伸ばしている。
「久しぶりに会ってなんだけど、少し太ったんじゃない?」
「何を言っている! 私が太るわけないだろ!!?」
「冗談、冗談だって」
普段笑顔になることがないカーラがここまで屈託のない笑顔を見せる人物も珍しいであろう。
「それにしても今日は珍しいな、カーラがここに人を連れてくるなんて」
「え? ……!」
「気づいたか? かなり遠くだがこちらに向かってくる一団があるな……」
生物から発せられる魔力を察知するカーラはかなり遠くではあるが近づいてくる一団に驚いていた。 今まで誰もついてくるようなことがなかったので驚いているのと、その一団が知り合いで構成されていたからである。
「何で……、彼らが……?」
自分の魅力にあきれるほど疎いカーラは彼らが何故近づいてきているのか皆目見当がつかなかった。
----
西門でディックを半ば無理やり強制的に護衛としてつけた国王一行は一路マルタイの草原を目指していた。
「おい、ディック! 本当にカーラは西門から出て行ったんだな!? 毎年出て行くんだな!?」
「そう言ってるじゃないですか……。 カーラちゃんがこの王都に来てからだから……、かれこれ五年位は毎年見てますね。 もちろん他の用事で出て行くことは何度かありましたけど……。
カーラちゃんの誕生日に出て行くのは確実に毎年です」
「なぜお前がカーラの誕生日を知っているのかはひじょ~~~~に興味深い案件ではあるが今は置いておこう。 ……それよりもカーラが元彼にあっているというのは本当なのか?」
カイルは『毎年カーラを西門で見かける』と言っていたディックに尋問を行いながら、道を進んで行く。 カーラの通った後であろう場所には魔物が埋まったような後が沢山あり、道に迷うことはなかった。
「そうですね~。 毎年必ずこの日に見かけるので三年目ぐらいの頃に一度声をかけたんですよ。 『毎年何処に行ってるの?』って……。 そしたら『マルタイの草原です』っていつもの無表情で言われたものだから、『外は危険なのに何しに行くんだい? 一人で』って聞いたんですよ、そしたら……」
「そしたら……どうした?」
襲い来る『ヲルフ』を剣で真っ二つにしながら国王は問いかける。 横では『スリープ』の魔法で眠らせたアイカをおんぶしながら『ヲルフ』を切り刻んでいくリリカの姿があった。
「そしたら……、『昔の男に会いに行くんです』って答えがありまして……、流石にあの時は固まりましたよ……、リリカにもその話をしたときは固まってましたけどね。 ……っと」
ディックの答えを聞いてしばし硬直してしまうカイル。 その隙に襲ってきた『ヲルフ』はディックの肉厚で幅広な剛剣によって地平に打ち返された。
「まじかよ……。 すげぇ一途じゃねぇか、カーラの奴……。 今でも続けてるってことだろ? かなり好きってことだよな?」
「あ、でも、なんだかそういう空気でもなくて、なんだか必ず会わなくちゃいけない見たいな事も言ってたような……」
「なに!? じゃあ無理やりってことか!!? なんてヤローだ! 絶対ぶん殴ってやる!」
そんなことを話しながら、襲い来る敵を撃破しつつ進む彼らの目に遠くで仲睦まじく話し込む、銀髪の人物と金髪の人物が見えた。
「あれは……、カーラだよな?」
「そうですね、カーラちゃんですね」
「カーラおねぇちゃんだね」
「あら? アイカ、起きたの?」
遠目から見るとなんだかカーラが笑っているようにも見えて確信がもてないカイル。 アイカちゃんは『スリープ』の呪文から目覚めたようだ。
「てことは、あの隣の奴がカーラに無理強いをさせてる奴だな!!」
「あっ! ちょっと国王様!!?」
カーラに無理強いをさせる男と聞いて怒り心頭だったカイルは、カーラの隣に立つ人物を認めた瞬間駆け出した。 カーラが仲睦まじく話していた相手だという認識はすでに彼の頭の中にはなくなっていた。
はい、意外に強いご一行です。
戦闘描写が大雑把なのは大目に見てください。
とりあえず次話でその1編が終了する予定です。
それでは次話で。




