冒険者始めますか?
10話目です。
気がつけば
PV15万件突破、ユニーク2万件突破、お気に入り登録700件越え!
ありがとうございます。
では、続きですどうぞ・・・。
「―――・・・市民カードか仮証、そして能力適正試験通過証明書を見せて頂けますか?」
そうギルドの受付に言われ私『カーラ・グライス』は戸惑った。
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ここは王国冒険者ギルド総本部。
私はディックと別れた後、真っ直ぐにここにやってきた。
しかしついて早々私は言葉を失うことになる・・・。
冒険者ギルド総本部。
そこは、某巨大モンスターに原住民が挑むアクションゲームの集会場のように雑多な感じではなく、銀行のように整然と並んだカウンターで受付嬢が丁寧な対応を見せている。
待ち時間が魔法で写し出されているし、番号札で整理されてもいる。かなり近代的なつくりだ。
壁際に多く冒険者が集まっているのは依頼確認のためだろうか?
その依頼確認も、ボードに張り出された多数の依頼の中から探すよく見かける依頼確認システムではなく、先にランクや分類分けされた情報端末に行きそこで自分にあったものを選ぶシステムの様だ。
詳しい使い方はよく分からんが・・・。
普通のゲームなどで見るギルドを思い描くと、かなりのギャップを伴う光景である。
「・・・すごい。もっと酒場みたいな感じの場所を想定していたんだがなぁ」
ついつい一人ごともでるっと言ったものだろう。
「しかしすごい人だな。これは空くまで時間がかかるかも知れんな。・・・ん?」
よく見ると一ヶ所だけぽっかりと人がいない場所があった。
―――露骨にあそこだけ空いてるな・・・。なんかやばいかもしれんが・・・。
「ここは開いているのか?」
カウンターまで行き、中に声をかけてみた。
「はぁ~い~。あいてますよぉ~」
滅茶苦茶間延びした声が返ってきた。
果たして中から出てきたのは受付嬢?であろう。
ぼさぼさの髪の毛はあちこちに跳ね回り、長い前髪のせいで目許は完全に隠れている。
着ている物も他のギルド職員の様にパリッとしたスーツの様なものではなく、だぼだぼのパジャマの様な物だし。
かなりだらしない印象を与える外見である。
「あぁ私はカーラと言う、冒険者登録がしたいのだが・・・」
「はぁい~。ぼうけんしゃ~とうろくぅですねぇ~」
「あぁよろしく頼む」
「はぁい~、それではぁ~ぼうk」
「あぁ、それと・・・。
―――そんな間延びした喋り方の演技はいらんぞ?」
瞬間、空気が凍った・・・。
だが私には見過ごすことが出来なかったのである。明らかにこの受付嬢はだらしない職員を演じていた。
その証拠に間延びした声を発しながらも、垂れた前髪の隙間から鋭い眼光でこちらを観察しているのだ。
・・・というか怖い。ヤメテクレ。
「・・・」
「・・・」
「―――なぜ分かったのですか?」
受付嬢の発する雰囲気がガラリと変わった。
「何故分かったか・・・か。それは私が人の顔色を伺うのが得意だからであろう」
これは本当だ。少なくとも会社に勤め社会人としての生活を送っていた私である。
人の発する空気を読むすべだってそれなりに身につけてきた。
その感覚から言えば、彼女は余りに不自然だったのである。
当の演技を看破された彼女はというと、
「・・・ぷっ、あっははははははは。
―――貴方面白いわね!初見で私の変装を見破った人は初めてよ。
それに、そんなに無表情で『顔色を伺うのが得意』って・・・。
ぷふふっ、私を笑い死にさせるつもりっ?」
盛大に笑い声を上げ始めた。
―――何がおかしかったのだろうか?
私には分からなかったが無表情にポイントがあるみたいだ。
スキルの副作用なのだが・・・。プラスに働いたと見える。
「気に入ったわ!私はリリカ、一応元A級冒険者よ、今は受付のお姉さんだけどね♪
あなた、カーラだったわね。これから仲良くしましょうね☆」
A級の冒険者ってかなり上のランクだよな!?なぜダルダル受付嬢なんて?
リリカ・・・侮れんやつだ・・・。
「―――さて、真面目に仕事をしようかしら・・・。
ようこそいらっしゃいました。冒険者ギルドへ」
そう言って、いきなり『リリカ』は真面目モードになった。
先ほどまでぼさぼさだった髪はしっかりトリートメントまで行ったかのようにキューティクルが天使の輪を作り、いつの間に着替えたのかただのパジャマにしか見えなかった服がパリッとしたスーツの様な服に早がわりしていた。
ちゃんとした格好をすればそれこそ出来る秘書と言った感じで、中々に綺麗な顔立ちをしている。
眼鏡はかけていないが・・・。
―――おいおいおい、魔法か!?着替えが早すぎるだろ!
心の中でツッコミを入れつつ、リリカの言葉をまった。
「さて、冒険者登録をしにこられたのですよね。それでは・・・。
―――・・・市民カードか仮証、そして能力適正試験通過証明書を見せて頂けますか?」
――――――は?
「・・・なんだそれは?」
「あっ、やっぱり持っていませんでしたね。
説明しますと、国王が元冒険者であると言うことはご存知ですよね?国王が宝玉によって選ばれることも・・・。
実はこの国の国王はなぜか冒険者の中から選ばれることが多いのです。
なので貴族の方が冒険者になられることはよくありますし、職を失った方が冒険者になるケースも多いのですが、いかんせん実力が伴っておらず依頼先で亡くなる事も多かったのです。
そこで我らがギルドでは人材育成学校と手を組み、最低限の能力を持ったもの以外は冒険者になれないように措置をとらせていただきました。
それが"能力適正試験"です。
試験自体は簡単なものですが、試験の資格を得るために、人材育成学校へ行っていただき
知識やスキルを習得していただく必要があります。
冒険者登録ですが試験に合格した後に発行される証明書を持ってきていただかないと登録は行えません」
一気にリリカは言い切った。
「なっ!?そんな話は聞いてないぞ!?」
驚愕の声を上げる私に、出来る秘書から雰囲気を近所のお姉さんと言った風に変えてリリカはいった。
「カーラちゃんどの門通って来たの?・・・多分西門じゃない?」
「何故わかった!?」
私が西門を通ったことを何かしら確信を持って言ってくるリリカに
―――こいつエスパーか!?などと私が戦慄を覚えていると、
「西門はディックの管轄でしょ?あいつ『真面目な軟派騎士』とか呼ばれてるけど、ただの軟派野郎だからね、美人見ると軟派の方に力が傾いちゃって、大事な説明とかポロポロ抜けるのよ・・・。ほんと何であんなのが警備隊長なんかやってんだか・・・」
『まったく・・・バカなんだから・・・』などとリリカは呟いている。
「なるほど、リリカはディックが好きなのだな」
ポソリと言ってみた。
「べべべっ、別にあいつのことなんてなんとも思ってないんだからね・・・」
―――はいはい、ツンデレ乙。
「とっ・・・ととっ、とりあえず証明書が必要なの!さっさと人材育成学校に入学してきなさい!」
「・・・入学が必要なのか?」
これは聞かなければならないことだろう。
ちょっとスキルを学ぶだけじゃないのか?と疑問を持つ私に、
「まぁ最低1年は勉強しなくちゃいけないからねぇ。
よかったわね、今の時期はちょうど入学者募集の時期だからすぐに入学できると思うわよ。
何ならギルドからの紹介状を持たせてあげる。これがあれば費用は無償だからね。
頑張って勉強してきてね」
からかった意趣返しだろうか、最高にイイ笑顔でリリカは言い放った。
私は愕然としながらも紹介状を受け取り、ギルドを後にした。
拝啓 母上様、
私には異世界に着て、まだまだ覚えることがありそうです。
お体ご自愛下さい。
敬具
『カーラ・グライス』(20歳)の学生生活が今、始まる。
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その頃、
『あっはっはっはっ!やっぱり『○キ』は面白いですねぇ
勇○郎強すぎませんか?次異世界に送る人が出たら勇○郎の三倍の身体能力とかにして見ますかねぇ』
『あれ・・・天ちゃんどうしてそんなイイ笑顔で・・・?ってこれなんだかデジャヴが・・・』
その日、神殿に響きわたったとある天使の罵声は、雷として地上に降り注いだという。
お分かりいただけただろうか。
冒険者になると見せかけて学生にジョブチェンジします。
武力チートですが戦闘はほぼありません。
あくまでほのぼのを目指します。
現在感想にていろいろアドバイスをいただいております。
対処できることは善処させていただきますので、
よろしくお願いいたします。
次話もよろしくお願いいたします。
1/19 能力適正試験が設けられた理由に少し変更を加えました。