騎士団再び
「また占ってほしい?」
「なんか急いでいるみたいだぜ」
ついこないだ日用品を持ってきたジャックが間を置かずに訪れてきたのでどうしたのかと思えば以前依頼を受けた騎士団がまた村にやってきているらしい。
以前よりも随分汚れた格好で大分殺気だっているらしい。
マークが村から離れるのはまずいと判断してジャックが代わりに来たということだ。
「ケイティ」
「ほんとはそんちょうじゃないとうらないはだめなんだけど………フェルじいさんがいいならいいんじゃない?」
占いは基本的に村長からの依頼しか受け入れていない。不用意に森へ入り込むものを減らすためでもあるし、依頼事態を減らすためでもある。
未来知りたいという気持ちはよくわかる。自然災害や貴族に税率を上げ下げされるこの世界の平民の生活を考えればなおさらだ。
だが魔女としては毎日天気予報をしたり、若人のコイバナに付き合っていては生活がままならない。村でどの作物を多く育てるか何処の街との取引を増やして減らすかなどまで口出しして仕舞えばそれは支配と変わらない。あくまで時々どうしても行き詰って助けを求められたらちょっとした助言をするくらいがいい。
と、いうのがマグノリアの方針だ。
なので本来であればお断りをいれる案件だ。
しかしマークからのメモみたいな手紙も渡されたし、事情が事情だし。
困った顔でケイティに判断を委ねるとさらにフェルへ丸投げした。
「どうせこのこともじいさんはわかってるわよ」というとケイティは丸くなって目を閉じてしまう。
そうものかなと思うがいつまでも騎士団が村に居座られるのは困るだろうとドロシーは急いで外に出て呪文を唱えた。
フェルの元まで運ばれると止まり木でフェルがすやすやと寝ていた。
「フェル爺、フェル爺。寝てるところ悪いんだけど起きて」
「ふがっ?」
転寝だったらしくフェルは声を掛けるとすぐに目を開けて「おぉすまんすまん」と欠伸をした。
「ふぁあ~。うむむむ」
「お爺ちゃんごめんね。気持ちよく寝てたのに」
「いや、いや。大丈夫じゃて。すまんすまん。確かこの間の若造たちのことじゃったかな?」
フェルはやはりドロシーが何も言わないうちに依頼内容を言い当てる。
「そうだよ」
「ならばそのまま帰ってもらって大丈夫じゃ」
「へ?」
思ってもいない返答に驚くドロシーに「ほっほっほ」といつもの調子で笑いだす。
「牛飼いの少年が村に戻るころにゃ帰っているだろうよ」
「フェル爺がそういうならそうなんだろうけど………手紙も持たせないでジャックを返して本当に大丈夫?ジャックやマークさんが騎士団の人たちに怒られたりしない?」
「大丈夫大丈夫。やっこさんらお上から帰ってくるように言われることになるだろうからな」
「王都でなんかあったの?」
「ちょいと後継争いがな。その内嬢ちゃんの耳にも入るじゃろ」
「ふ~ん?わかった」
村とマグノリアの約束事を自分が破ることに罪悪感はあったので安堵する部分があるが騎士団が騒ぎ出さないかだけが心配だ。占いを聞きに来てその前に帰るという行動は不可解だがフェルが占いを間違えるとは思えない。
ジャックやケイティから忠告は受けていたもののドロシーは好々爺然としたこの鷹に懐いていた。
結局フェルに言われるまま占いの手紙を書かずにジャックを帰した。前と同じようにケイティを一緒に村へ行かせてフェルの占い通りに騎士団がいなくなったことを聞く。
お礼に茹でた鶏肉をケイティとフェルにご馳走してその日を終えた。
後日、フェルの首根っこを掴んで揺らして抗議することになるとも知らずに。