裏1話「婚約破棄? ふん、スプライト軍団ごと粉砕してあげるわ!」
セレスティア王都、学園メインホール。
ド派手な大理石の床に、今まさにバカな声が響き渡った。
「ミカエラ・フォン・エルミナ! 君との婚約を、ここで破棄する!」
ふん、知ってた。
前世で『星輝のプリンセス2』を周回プレイしていた私は、こんな茶番、耳タコよ。
ドヤ顔の王子ミヒャエル、その隣で白々しく微笑む偽聖女ミシェル。
そして、広がるクソみたいな空気。
──はいはい、台本どおり。そろそろ出番ね。
「ミゲル、準備は?」
「完了だ。スプライト出現位置に光魔法陣設置済み。」
後方で魔導書を構えるミゲルがクールに答える。
ミハイルはすでに剣を抜いて、警戒態勢。忠犬っぷり、頼もしいじゃない。
私はドレスの裾を翻し、ニヤッと笑った。
「じゃあ、演出開始よ!」
次の瞬間、ミシェルが手を掲げて叫ぶ。
「聖なる光よ、悪を討ち給え!」
──きた、スプライト召喚。
だが、現れた強化クリスタルスプライト50体は、出現するやいなや結界に引っかかり、
「ゴゴゴゴゴッ!」
とものすごい音を立てて蒸発した。
一瞬、場が静まる。
「な、何……?」
ミヒャエルとミシェルが真っ青になりながら固まっている。
私は星輝の杖をクルッと回し、クールに告げた。
「ふん、聖女ごっこは楽しい? ……そろそろ終わりにしましょうか。」
* * *
学園大広間、次なるイベントは──
偽聖女ミシェルによる「清廉アピール演説会」。
本来ならここで「民衆の心を掴む」のが筋書きだけど、
残念、もう全部読んでるのよね。
私は開会直前、広場全体に魔力封鎖結界を展開。
「聖なる浄化の光よ、我が身に──っ!」
ミシェルがポーズを取った瞬間、何も起きなかった。
ただ、民衆の冷たい視線だけが突き刺さる。
「え、えっと……?」
焦るミシェル。
私は最前列で腕を組みながら、ニヤリと笑った。
「どうしたの、聖女様? 奇跡の光は?」
パニックに陥るミシェルを尻目に、ミゲルが魔導書をパタンと閉じる。
「解析完了。ミシェルの聖女魔法、すべて偽装確定。」
ざわつく市民たち。
その場にいた教師や貴族たちも、何が起きているか理解し始めた。
「ふふ、乙女ゲームのヒロイン落ちイベント、いい出来栄えじゃない。」
私は星輝の杖を軽く肩に担いだ。
* * *
実技試験。
このタイミングでは、本来、ワイバーン級の魔獣が1体出現するはずだった。
──だが、今の私は知っている。
2周目補正で、強化ワイバーン群が押し寄せることも。
だから、事前に対空迎撃陣を五重に設置しておいた。
案の定、試験会場の上空に大量の影──ワイバーンが出現する。
「グオオオオ!」
だが、魔法陣が発動し、
ワイバーンたちは次々と空中で爆散。
空には、羽根のかけらと光の残骸だけが舞っていた。
呆然と見上げる試験官たちをよそに、私は髪をかき上げて笑う。
「ふん、試験用のザコじゃ、相手にならないわね。」
レベルは、18から一気に22へ。
インフレ加速、順調順調。
私はミカエラ・フォン・エルミナ。
星輝の宝珠を携え、記憶を持ったまま2周目を生きる者。
この世界、
次はもっと楽しく──もっと派手に、ぶっ壊してやるわ!




