第1話「婚約破棄? まあ、私がこのゲームをひっくり返すわ!」
セラフィム王国の王都セレスティア。
大広間の天井で、水晶のシャンデリアが星屑みたいにキラキラ輝く。
金糸の刺繍が施されたカーテンがそよぐ中、貴族たちの視線が私にガンガン突き刺さる。
私は赤絨毯のど真ん中、深紅のドレスの裾を握って、胸を張っていた。
「ミカエラ・フォン・ヴァルツェリア! 君との婚約を、ここで破棄する!」
第一王子ミヒャエル・ヴァルセリオの声が、大理石の壁にビシッと響く。
金髪が揺れて、青い瞳が私をバカにするように睨む。
貴族たちのざわめきが、まるで嵐みたいに耳を打つ。
「は? 何それ?」
私の声は低めだけど、胸の奥でムカムカが沸騰してる。
ドレスの裾を握る指に力が入って、貴族たちの囁きがチクチク刺さる。
ミヒャエルの隣、白い聖装に身を包んだミシェル・サリスが、涙を滲ませながらニッコリ微笑む。
「ミカエラ様、あなたは私をいじめて、ミヒャエル様を冷たく扱った…。聖女として、愛のために告発します!」
ミシェルの声、甘ったるくてまるで天使の歌。
彼女の銀髪が、窓から差し込む光でキラキラ輝く。
貴族たちが同情の目でチラチラ見る中、私は唇をキュッと噛む。偽聖女の芝居、完璧すぎるわね。
「ミカエラ、君は無能で魔力もゼロだ。ミシェルこそ、私の真実の愛!」
ミヒャエルの言葉に、頭の奥でバチッと火花が散る。
魔力ゼロ? ふざけないで!
私は公爵令嬢、18歳のミカエラ・フォン・ヴァルツェリア。
セレスティア魔法学園の3年生で、確かに魔力は低いって言われてたけど…ちょっと待って。この展開、知ってる!
「衛兵! 彼女を拘束しろ!」
ミヒャエルの命令で、鎧がカチャカチャ鳴る。衛兵がズカズカ近づいてくる瞬間、記憶がドバッと蘇った。
「やっと…思い出した。私は転生者よ!」
前世、28歳の書店員。
閉店後にハマってた乙女ゲーム『星輝のプリンセス2』の世界!
私は悪役令嬢ミカエラ・フォン・ヴァルツェリア。この婚約破棄、破滅ルートの第一幕よね。
テンプレなら、私がこの物語をひっくり返すわ!
「触らないでよ、失礼ね!」
私はドレスの裾をサッと翻して、衛兵の手をパシッと払う。学園の剣術訓練、ちゃんと役立つじゃない。
貴族たちの「え!?」って声が響く中、大広間の側廊へダッシュ。ステンドグラスから差し込む光が、床を虹色にキラキラ染める。
「令嬢が逃げる!?」
私は側廊の隠し扉をガッと押し開けて、螺旋階段をタタタッと駆け下りる。
目指すは王宮の地下、ゲームの裏設定で出てくる「星輝の禁書庫」。
そこには、チートスキルやアイテムが眠る秘密の聖域がある。
破滅ルート? 冗談じゃない。私が逆転の鍵をガッチリ掴むわ!
地下書庫の扉は、苔むした石と魔法陣でガチガチに封じられてる。
埃っぽい空気が鼻をツンと刺して、ランタンの灯りが壁の精霊の彫刻をチラチラ照らす。
彫刻の目が、なんかこっちを見てるみたい。
「ここが…私の反撃のスタートね。」
扉の魔法陣に手をそっと触れる。
指先がジワッと熱くなって、魔法陣が青くパッと輝く。
ゲームの知識がババっと蘇る。『星輝のプリンセス2』の攻略本に、禁書庫には「星輝の宝珠」が隠されてるって書いてあった。
「キィィ…!」
いきなり闇からキンキンした鳴き声。青白い霧がユラユラ揺れて、クリスタルスプライトがスッと現れる。
ゲームの序盤モンスターで、魔力を吸うけど炎にめっちゃ弱い。
「1話目でバトル? まあ、悪くないわね。」
武器はないけど、頭の中の攻略本ならバッチリ。
「クリスタルスプライト、炎が弱点よ!」
壁の魔法陣に触れると、ランタンの炎がグッと強まる。
私はランタンをサッと掴んで、スプライトにバシッと投げる。
バチッ! 炎がスプライトをパッと焼いて、消滅!
「よし、今よ!」
書庫の奥へズンズン走る。突き当たりに、ボロボロの祭壇。
中央で、星輝の宝珠がキラキラ浮かんでる。金色の光が、まるでミニ太陽みたい。
「これ…!」
手を伸ばすと、宝珠がピカッと輝いて、ドーンと荘厳な声が響く。
「選ばれし者、ミカエラ。星輝の契約を認めん。」
「契約? やってやるわ!」
目の前に、魔法の窓がスッと浮かぶ。ステータス画面よ! 攻撃力10、魔力5…しょぼいわね。
けど、スキル欄に「星輝の継承者」がバッチリ追加。『星輝の炎舞』『星輝の結界』『アイテムボックス』がズラッと並ぶ!
「炎舞で攻撃、結界で防御、アイテムボックスは無限収納。──試しなさい、ミカエラ。」
精霊の声、めっちゃ厳か。
『アイテムボックス』を選ぶと、ポケットがピカッと光って…金のペンダント!
「前世のネックレス? へえ、いい感じね。」
令嬢のオシャレは絶対キープよ。
書庫の外でスプライトのキンキン声。
「精霊、チートでぶっ倒せる?」
「汝の意志次第だ。」
扉をガッと開けると、クリスタルスプライトが3体!
『星輝の炎舞』発動! 両手から炎がグルグル渦巻いて、スプライトをガッと焼き尽くす!
「キィィ!」 2体がパッと消滅!
「テンプレ無双、なかなかいいわね!」
ステータス画面、レベル2にアップ! 攻撃力15、魔力10! さらに、星輝の指輪をゲット!
魔力+15のチート装備、キター!
書庫の外で鎧がカチャッ。
「ミカエラ様!」
ミハイル・フェルゼイン、25歳、私の誓約騎士。
鋭い瞳にバッチリ忠誠が光ってる。彼、私の逃走を追いかけて、護衛で駆けつけたのね。
「ミハイル、なんでここに?」
「あなたの危機、見過ごせません!」
「へえ、いいわ。なら、ついてきなさい。ミヒャエルとミシェル、絶対後悔させてやるわ!」
私は星輝の宝珠をギュッと握って、魔法の窓をキッと睨む。
この世界、私が全部ぶち壊してやる!