6話
「わぁ~! すごい人! それからお店もたくさん! あ、アレ美味しそう!」
前世の記憶を思い出してから、初めてのお祭りに完全にわたしは浮かれていた。
「ラビルお嬢様。楽しむのは結構ですが、はぐれないようにお気をつけくださいね」
護衛の一人としてついて来たアニモに苦い笑みで注意され、はい……と小さく返事をする。今まさにお店が気になって走り出そうとしていたところだったので、返す言葉が無かった。
しかし、視線だけは落ち着きがなく、周りをキョロキョロと見回してしまう。
前世で行ったお祭りと同じりんご飴を見つけて懐かしくなる。
(……お兄ちゃんがお祭りの為に貯金してくれていて、買ってくれたんだよね……)
施設では毎月少額ではあるが、子供達にお小遣いが支給されていた。わたしはすぐにマンガやお菓子などを買ってしまい、使ってしまっていたが兄はしっかりと貯金をしていた。その貯めていたお金をお祭りなどの時、いつもわたしの為に使ってくれていたのだ。
前世でわたしの事ばかりで、いつも自分を後回しにする兄に少しでも恩返しがしたい。だからこそ、あみ姉ことミラーナと出会って今度こそ幸せにしたいのだ。
「あみ姉とお兄ちゃんが出会う良い作戦ないかなぁ~」
「……あみ姉……?」
不意に近くを通り過ぎようとしていた男性がぴたりと足を止めて、ラビルの独り言に反応を示す。すると勢いよく、ラビルの方へと振り返ってミラーナと同じ青の瞳が丸くなる。
男性の反応に驚くラビルだったが、視線が重なった瞬間、ミラーナと同じ瞳の色に気付いたのと同時にその瞳の奥にあるものに既視感を覚えた。
「……もしかして、」
「朱音ちゃん!?」「とも兄!?」
あみ姉の双子の弟である朋騎ーー今世ではミラーナの双子の弟であるトーイとの出会いだった。