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2話

 あみ姉を探す前に、改めて現世のわたしことラビルについて思い出す。

 漆黒の髪は前世と同じ、兄と同じルビーのような真っ赤な瞳を持つ少女……それが今のわたしの姿だ。

 あまり外に出たがる性格ではなく、屋敷の中で過ごす事が多かった。これは施設で育ったからあまり外の世界を知らなかったから、記憶は無くとも無意識に怖がっていたのかもしれない。

 とまぁ、そんな感じに現世について見直してみて気付いた事がある。


 そう、わたしには……《《友達》》が居ないのだ。


 「あみ姉を探そうにも、友達も居ないし、情報が少なすぎる……!」


 がくりと肩を落とすが、落ち込んでばかりもいられない。

 友達は居ないが、今世では有り難くも公爵家に名を連ねられている。故にメイドや執事と人は多く居るので、時間はかかるが地道にコツコツ、情報収集していく事にした。


 「ねぇ、アニモ。わたしと同じくらいか、少し上の年くらいで有名な女性って居たりしないかな?」


 アニモと呼ばれた少女はわたし付きのメイドである。ティータイムの準備を進める手は止める事なく、ただ突然のわたしの質問に茶色の瞳がまん丸になる。


 「有名な女性、ですか? まさか、ラビルお嬢様に何か企てとかされているのですか?」

 「え!? あ、違う違う! ほら、私もそろそろ友達が欲しいなぁとか!」


 わたしの言葉に安堵したような表情を浮かべたアニモを見て、気付いた事がある。兄を含めて使用人達までも、過保護すぎる時があるのだ。

 ティータイムでお茶をお代わりしようとすれば、すかさずポットを持たれてカップに注がれるし、ケーキを食べようとすればすかさずフォークが差し出される。なんなら食べやすいようにナイフでお切りしますか? なんて言われる始末だ。

 こちとら施設育ち(前世だけど)、生きていくのに必要な事は大抵、一人で出来る。

 だけど、まぁ、前世の話が出来る訳もなく、お世話をやんわりと断る日々であった。


 心配してくれるのは有り難い事ではあるけど、友達を作りたいだけでもここまで心配されるのは前途多難そうだなぁと、こっそり内心で溜め息を吐く。

 そんな間にも、ティータイムの準備を終えたアニモからカップを受け取り、紅茶を頂く。


 (今日の茶葉はアールグレイかな。はぁ……美味しい~!)


 これがまた最高に美味しい。紅茶なんて前世では全く縁が無かったが、現世ではティータイムの時間が最高に幸せなひとときとなっている。


 「ラビルお嬢様。本日の紅茶はいかがですか?」

 「うん! 今日も最高に美味しいよ! ありがとう、アニモ!」


 わたしが笑顔でお礼を告げると、アニモも嬉しそうな笑顔で返してくれる。見た感じ、アニモはわたしと歳が近そうなのに比較するのも失礼なくらいにしっかりしている。そんな感心をしていると、そういえばとアニモが口を開く。


 「先ほどのラビルお嬢様のお話ですが、一人だけ思い当たる女性が居ますよ」

 「え! 本当に!?」


 ティータイムで浮かれていたが、アニモのその言葉に本来の目的を思い出す。そうそう、紅茶を楽しむのはあくまでオマケ。真の目的はあみ姉を見つけだす事。

 もしかしたら、アニモの思い浮かんだ女性があみ姉の可能性があるかもしれない。

 あみ姉の特徴をもっと具体的に挙げられれば確率はもっと上げられただろうが、情報が皆無な現状ではそれも出来ない。

 なのでダメ元でわたしと歳の近い有名な女性、と話したのだがまさか、居るとは思わなかった。

 藁にもすがる勢いで、その女性について情報を集める事にする。


 「ね、その女性ってわたしでも会えたりするかな?」

 「は、はい。会うのは問題ございませんが……」

 「じゃあ会いたい!」


 いつもハキハキとした話し方をするアニモが珍しく、言葉を選ぶ様子に疑問はあったが僅かながらでも現れた可能性の糸にわたしはしがみつく事にした。

 まだ戸惑いながらも、アニモはではお茶会の招待状を手配いたします、と言ってくれた。



 待っていてね、あみ姉!

 必ずわたしが見つけてみせるから!




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