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19話

 「よし。食事も準備が整ったようだし、改めて挨拶でもするか」


 そう言ってぱちんと指を鳴らすと、一礼だけして一斉に数十人は居た使用人達が部屋を出ていく。そのあまりに流れるような動作に圧巻されていたが、アーシックは慣れているのだろう、一切気にする様子もなく続ける。


 「まず最初に招待した人間から、挨拶させてもらうぞ。オレは地の家門後継者、アーシック=ロッキー。四家門の後継者が集まる年代に生を受けた事は光栄なことだ。この縁を大事にしていきたいと思うから、よろしく頼む」


 締め括りには紳士のように優雅な一礼で頭を下げている姿を見て、やはりメインキャラの一人。オレ様自信家だと思っていたが、肝心な時は礼儀を重んじる紳士になったりするのだろう。

 不覚にも少し、ときめいてしまった。恐るべしギャップ萌え。


 挨拶を終えたアーシックが時計回りにするかと言い、次は隣に座るジェイル。向かい側のフェイズときて……どうやら締めがわたしのようだ。挨拶を聞きながら何を言うのか考えなくてはと思うが、緊張で頭の中は真っ白だった。


 「あ、あの、この度はご招待ありがとうございます! 私は水の家門後継者のジェイル=ミラルドンと申します。えっと、仲良くしてもらえたら嬉しいです!」


 にっこりと笑った顔がアーシックとは別の意味で破壊力がある。兄と同じ年齢なのでラビルより年上の男性に使うには申し訳ないのだが、幼い顔立ちなので笑うとより幼さが増すからか愛らしさが倍増される。恐るべしショタ力。


 「次はあたし、か。風の家門後継者フェイズ=ドゥクルよ。ま、これも何かの縁よね。コスメとか色々な品を用意してるから、買い物は是非是非ドゥクル商会をよろしくねー」


 何故かわたしに向かってぱちっと片目ウィンクされてしまい、ドキッと胸が高鳴ってしまった。いやいや! これは突然の事で不可抗力だ、と自分で自分に言い訳する。

恐るべし美容男子。


 そんなこんなで三人の挨拶が終わり、視線がわたしに注がれる。


 (メインキャラ達の前で挨拶とか緊張するぅぅぅ!!)


 ガチガチに緊張してしまい、中々声を出せないでいるとアーシックがあーと軽く咳払いをする。


 「今回の席はかしこまった場ではない。だから、まぁ……アレだ」

 「つまり、公の場じゃないから緊張しないでリラックスしてね~ってことでしょ」


 何かを言おうとしては言葉を濁すアーシックを不思議そうに見ていると、隣の席に座っているフェイズが果実水を堪能しながらさらっと言うと、アーシックは顔を背けてそ、そういうコトだ! と叫ぶ。顔を背けてはいても耳が赤く染まっていて、それが照れ隠しなのだと分かる。

 それがかつての兄の姿と重なって見えて、気付けばラビルの中にあった緊張はもう無くなっていた。


 「……ご配慮ありがとうございます。今日は兄ビリアスが体調を崩しておりましたので、妹のわたしラビルが代わりに参加させて頂きました。どうぞ皆様、よろしくお願いいたします」


 なんとか挨拶出来た、と安堵したわたしが顔を上げるとアーシックが優しく微笑んでいるのが見えてしまい、胸が高鳴る。メインキャラ達に警戒心を持っているわたしですら、こんなにもときめきさせられてしまうのだ。ミラーナと出会わせてしまったら恋に落ちてしまう可能性が高い。


 (オラオラ系の不器用な優しさというギャップ、恐るべし……!)


 改めて、メインキャラの魅力に危険を感じたラビルだった。

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