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恋の道導

 『恋の道導』


 とある大陸にとある国の話。

 遠い昔、王家を守護する四つの家門があった。

 水を司るミラルドン家、火を司るシュデリウス家、風を司るドゥクル家、地を司るロッキー家。この家門に連なる者達は稀にその家門に合った術を使える者が産まれる事があった。

 しかし、それはかなり稀で千年に一度あるかどうかの確率だった。

 

 そのはずだったが、偶然にもそれぞれの家門全てに術を発動出来る子供達が産まれた。


 水を司るミラルドン家は桃色の髪に透き通る水の瞳を持つ少年、ジェイル。

 火を司るシュデリウス家は漆黒の髪に燃えるような赤の瞳を持つ少年、ビリアス。

 風を司るドゥクル家は茶色の髪に若葉の瞳を持つ少年、フェイズ。

 地を司るロッキー家は青色の髪に大地のような茶の瞳を持つ少年、アーシック。


 これだけでもすごい確率だったが、それだけではなかった。

 守護者だけではなく、聖なる家門ヒルッセンからも術を使える少女が産まれたのだ。名はミラーナ。


 双子の弟と両親と暮らしていたが、ある日両親が事故に遭って亡くなってしまう。治癒術が使える事は内緒にする、と両親と約束をしていた。


 しかし、ある日、弟が仕事で大怪我をして命の危機に瀕した際、人目があったにも関わらずミラーナは治癒術を使ってしまう。弟の怪我は全快するが、その光景を見た者達が噂を広めてついには王家の耳に入る。


 『その少女を王太子の妻とするから、早急に城へ連れて来るように』


 王家が下した命令の噂を聞いた遠縁の親戚であるシラセフ男爵家の当主リッツェルンは、成人までの生活費など全てを面倒みるので養子になる事を二人に提案する。

 弟のトーイは提案を拒絶したが、姉のミラーナは弟がまた仕事ばかりで無理をしてしまう事が心配で、リッツェルンの提案を受け入れてしまう。

 姉だけでは危なっかしいと弟もシラセフ男爵家へと養子入りする事が決まる。


 シラセフ男爵家に養子入りしてしばらくした頃、ミラーナはリッツェルンから1枚の紙を渡されてこれに署名をしなさいと言われる。その紙には『婚姻同意書』と記載されていた。


 『なっ!? これは一体、どういう事ですか!?』

 『どうもこうも、そのまんまの意味に決まってるだろう。王太子様と婚姻出来るなんて、お前は国一番の幸せ者だぞ!』

 

 その婚姻同意書には成人に達したと国が結婚を認める年齢である18歳になった日を以て、王太子妃となると記載があった。

 リッツェルンが成人までの養子入りを提案したのは王家から莫大にもらえる支度金が目的だった。

 悲しみに打ちひしがれるミラーナだったが、話を聞いたトーイはリッツェルンへの怒りを抱きながら、作戦を考える事にする。


 最初に浮かんだのは成人までにミラーナが恋人を作り、すぐに結婚してしまう方法。いくら王太子といえど、既に婚姻関係がある女性となると結婚は認められない。

 しかし、この作戦は王家の干渉を受けにくい家門でなければ、簡単に王家の阻止を受けて相手の男は良くて監獄。悪くて処刑されてしまうだろう。

 そうなると王家の守護者と呼ばれる四つの家門の出である少年達が適役だが、あいにくとリッツェルンから許可が出なくてパーティーなどの社交場に行けなかった二人では人脈が全く無かった。今、考えるとそれも全て作戦だったのだろう。

 トーイは考えた。そして、思い浮かんだのが変人のフリをする作戦だった。


 ミラーナは口を開くと正直に話してしまう可能性が高い上にすぐ、感情移入をしてしまうので話す時は筆談で簡潔にする。そして、顔は真っ白な仮面で常に覆い隠す。王家は体裁を気にするから、こんな変人の噂がある人物ならば、いくら稀な治癒術を持っているとしても婚約破棄する筈、とトーイは考えた。

 早速、ミラーナに作戦を伝えた。

 最初は不安そうにしていたが、時が経てば慣れてきたのか、その演技は次第に馴染んでいった。


 そんなある日、何の接点も無かった火を司る家門シュデリウス家の息女であるラビルに、ミラーナがお茶会に呼ばれたのだった。トーイは行かない方がいいと引き留めたが、せっかくのお誘いだからとミラーナは行ってしまった。


 (……おかしいな。こんな展開、原作に無かった気がしたが……)


 更にお茶会から帰って来た後のミラーナの顔には仮面が無く、代わりに満面の笑顔とひたすらに楽しかったという明るい声ばかり。


 (原作のラビルは兄ビリアスに近付くミラーナを嫌悪していたはず。一体どうなってるんだ? ……調べてみた方が良さそうだな)


 「……で、たまたま来たお祭りで見つけたラビルちゃんがまさかの君って話」

 

 トーイの話す内容に本当にこの世界は本の中で、自分は世に言う異世界転生とやらをしてしまっていた事にぼう然とする。


 「ラビルちゃん、大丈夫? ごめん、色々と一気に話したから混乱させちゃったよね」

 「あ、ううん! 大丈夫大丈夫! むしろ、教えてくれてありがとう!」


 気遣うように向けられる視線にぶんぶんと首を強く横に振って大丈夫だとアピールする。話を聞いている間は衝撃がすごかったけど、それも落ち着いてきた。

 むしろ話を聞いてからはわたしがやるべき事が改めて認識出来た気がする。


 「つまり! 私達はサブキャラって事だよね!?」

 「え? あ、あぁ、うん。まぁ、そういう立ち位置になるね」


 ついさっきまで思案顔だったのが、急に元気になったわたしを不思議そうに見ながらトーイが頷く。


 「じゃあ、サブキャラがやるべき事はただ一つ! メインキャラの二人をくっつける恋のキューピッドになる!!」

 「…………え?」

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