幼馴染は高校生になった。
「いい?学校では、私に話しかけないこと。絶対よ」
そんな幼馴染の彼女の言葉に、ふっと俺は笑いが溢れた。めちゃくちゃ睨まれた。生まれたときからの付き合いで、そんな視線を向けられても、俺はどこ吹く風だ。
いやいや、だって彼女の言葉はおかしかった。
「春川翠さん?用もないのに学校で俺に話しかけられるとでも思ってるのか?まあ、自信たっぷりなことで?羨ましいよ」
「あら〜?小学校で私にべったりだった風上遼燈くんに言われたくないわ!」
…ちっ。いつの話の持ち出してんだか。
それで俺が引っ込むと思ったら、大間違いだぞ。中学の間は甘んじて受けていたそのイジリも、高校生となった今日という日でおさらばだ!
「わかった、わかった。その言葉、自分で言い出したんなら、きちんと守れよ?」
「言われなくても」
俺を笑い飛ばすように、翠が言った。どうだか。いつも勢いが良いのは、最初だけだからなお前。
まあ、いいさ。それは日が経てば自ずと知れること。
「遼燈〜?そろそろ行くわよ〜?」
「翠ー?準備出来た〜?」
階下から俺の母と翠の母が俺たちに声を掛けた。返事をする。
「はいはい」と俺。
「今行くー!」と翠。
俺と翠は示し合わせるように、目配せした。お前、ばらなすなよ。という牽制だ。何がって?
俺の母と翠の母の美世さんは、仲良しなのだ。そして、俺たちが密かにいがみあっていることも2人は知らない。そしてこの2人にそのことがバレると厄介なので、俺たちは自分たちの仲の悪さを隠している。
嘆くべきことに、今日の高校の入学式も、会場まで両家一緒に行くことになっている。この年にもなって、いい加減合同イベントみたいに仕立てるのやめてくほしい。
せめて、コイツが同じ高校じゃなければなあ。
悪運というのは、つくづく徹底している。
風上遼燈と春川翠は、お互いに幼馴染であることにうんざりしているというのに。