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召喚

「おお……」


 歓喜する声に俺はハッと我に返る。

 目線を前に向けるとローブを着た男達がこちらを見ながら唖然としていた。


ここはどこだ?


 俺は周囲を見渡す。

この場所は大部屋で、石造りの壁に蝋燭の火が灯してある部屋だ。

 下を見ると血のようなペンキで描かれた幾何学模様の魔法陣がある。

 部屋の中には俺の他に、金髪や黒髪やら見た目が学生くらいの男女がいて、右往左往している。

 周囲には厨房もお店もない。

さっき、山田に刺されたのが十秒ほど前のこと。てか俺、山田に刃物で刺されて死んだはずだよな?

刺された箇所を確認する。


 なっ、ない。なんで?


「おい、ここはどこなんだ?」


 俺が不思議に思ってると、金髪男がローブを着た男に尋ねた。


「おお、勇者様方!どうかこの世界をお救いください!」


 はっ?


「それはどういう意味だ?」

「色々と事情があります故、勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました」

「召喚?」


 はい、ここは異世界なんですね。

 俺はとりあえず状況を確認するためにこいつらに合わせて話を聞くことにした。


「この世界は今、存亡の危機に立たされているのです。勇者様方、どうかお力をお貸しください」


 ローブを着た男が深々と俺達に頭を下げる。


「まぁ、話だけ――」

「嫌だな」

「おい、元の世界に帰れるんだろうな?」

「……」


 おいっ!!

 俺が話を聞いてあげようと喋っている最中、遮るように他の奴らが言う。

 今どきの若い奴らは必死に頭を下げている奴になんて態度で答えるんだ。

 話を聞いてから結論を述べればいいだろうが。


「俺の同意なしで勝手に召喚しやがって!! 勝手に召喚した罪悪感をあんたらはあんのか?」

「ほんとだよな。勝手に呼ばれて働かせるだけ働かして、世界が平和になったらポイっと元の世界に戻されたんじゃ、たまったもんじゃないよな」


 ローブ男に金髪男と茶髪男が威圧的に言う。

これは、自分達の立場の確認と報酬に対する権利の主張だ。

どんだけたくましいんだコイツ等は、なんか負けた気がしてくる。

 ローブ男は俺たちの意外な返答に困っている。


「ま、まずは王様と謁見して頂きたい。報奨はその場で相談お願いします」


 ローブ男はそう答えると、大きい扉を開けさせて俺たちを進むように促した。


「……しょうがねぇな」

「だな」


 お前ら少しは礼儀をわきまえなさいっての。

 俺達は石造りの廊下を歩いていくと、窓から見える光景に息を呑むんだ。

 その窓からは澄みきった海がどこまでも続き、中世ヨーロッパのような町並みがそこにはあった。


 ここは本当に異世界なんだ!


 俺は二度目の人生にワクワクした。大冒険が始まるかと。

俺達は廊下を進み、謁見の間に辿りついた。

謁見の間には綺麗に装飾された大きい椅子が二つならんでいた。

 しばらくすると大きなドアが開き、そこからでっぷりした中年のオッさんが現れた。

 隣には片眼鏡の男もいる。


「ほう、こやつ等が今回の勇者達か」


 でっぷりオッさんは椅子にゆっくり腰掛けると、俺達を品定めするように呟いた。

 感じワル………


「ワシがこのルシルフ国の王、ゴンザ=ゴンザレス33世だ。勇者たち、顔を上げい」


 さげてねーし!

 しかもこのデ……、いや王様。太ってるだけじゃなく、服には金銀の装飾がされていて、指にはでかいダイヤがついた指輪を嵌めている。

如何にも成金って感じだ。


「まずは、事情を説明せねばなるまい。この国、更にはこの世界は滅びへと向いつつあるのじゃ」


王様の話を纏めるとこうだ。

王様が言うには、この異世界では百年に一度魔物が大量発生して国や町を襲うみたいだ。

この時期の魔物は非常に凶悪で、その度に国や町は壊滅的な被害を受けるみたいだ。  


この世界の防衛手段では到底間に合わず、勇者召喚という手段で対抗するのだそうだ。

召喚される勇者は、超強力な職業を授かることができ、とんでもない力を発揮するんだと。

 ただ、その力を最大限に発揮するためには帝都で訓練を受ける必要があるんだとか。


 話終わった王様が言う。


「もちろん、其方らには十分な報酬を与える予定じゃ」


 俺を含め、勇者達はグッと握り拳を作った。


「では勇者達よ。それぞれの名を聞こうかの」


 王様の言葉に俺達はそれぞれ自己紹介をする。


「俺の名前は吉沢連。年齢は17歳、高校生だ」


 身長は175cmくらい。

 髪は金髪で、いいガタイ付きをしている。性格は体育会系だろう。


「次は俺か。俺の名前は山崎流星、年齢は20歳、大学生だ」


 外見は、なんと言うかお兄さんと言った感じの印象で、イケメンだ。髪型は黒髪で、長い髪を後ろで縛っている。


「わ…、私の名前は吉高里穂。年齢は17歳、高校生です」


 外見はピアノをやってるかお淑やかな雰囲気の女性だ。髪型は綺麗な黒髪。妹分って感じだな。


 おっと、次は俺の番か。


「最後は俺だな、俺の名前は月島光星。年齢は33歳、社会人だ」


 他にも数名いるが、以下省略。


「ふむ。レンにリュウセイにリホか」

「王様、俺を忘れてるぞ」

「おおすまんな。ミツボシ殿」


 まったく、抜けたオッさんだ。

そりゃあ……この中で俺が一番場違いな気もするが、忘れないで欲しい。


「例の物を皆に配るのじゃ」

「「はっ」」


 片眼鏡の男が白銀に輝く指輪を運ばせてくる。

そして、俺たちに指輪を配り嵌めるように促す。


「それは職業リングです。特別な魔力が施されていまして、勇者様方が授かった職業を読み取ってくれます。ステータスオープンと唱えれば勇者様の職業を見ることができます」


 皆がステータスオープンと叫ぶ。と、目の前に半透明のウィンドウが出現した。


「おおっ! 何か良くわからんが天雷の剣神とか書いてるぞっ!」


 吉沢連が嬉しそうに叫んだ。


「ふむ。お主が……伝説の勇者のようじゃの。極めれば全ての剣技を使えるようになるはずじゃ」


次に山崎流星が叫んだ。


「俺は死神の使いって書いてある!」


「ほぅ、お主は人の命を生かすも殺すも自由自在に操れることができる職業じゃ。訓練を積めば魔王の命さえも自由にできるぞ」

「わ、私は聖女って書いてあります!」


 なるほど。皆んな、チートスキルを貰えるんだな。

 で、俺の職業は………


「おい、そこのオッさん! オッさんのステータスは何て書いてあるんだ?」


 吉澤連が俺にすり寄り肩に手をかけてくる。

 このガキきゃぁ……オッさんって何なんだよ。

 俺はお前よりも十歳は年上だぞ。言葉使いを知らんのか。

 と、そこで一同の視線が俺に集まってきた。


「こ、これはっ!」


 俺はステータスを見て固まった。


「どうなんだ! 一体、どんな職業を授かったんだよ?」


 中々答えない俺に連はステータスをのぞき込む。


【 名 前 】 月島光星ツキシマ・ミツボシ

【 年 齢 】 33

【 職 業 】 かけ出し料理人

【 レベル 】 1

【 体 力 】 ?????

【 攻撃力 】 ?????

【 防御力 】 ?????

【 魔力 】 ?????

【 料理技 】 ?????

【料理スキル】 ?????

【 関連道具 】 万能圧力鍋、アイテムボックス


「ああ、俺の職業は――料理人って書いてる」


 俺の言葉に一同がフリーズした。 


「……え? もう一回言ってもらっても良い?」

「俺の職業は料理人と書いている」

「……え?」


 いや、そんな反応されても、料理系の職業しか書いてないもんよ。

 そうして、しばしのフリーズの後――


「ぷっははっ……ハハハハハハハっ! おいおいこのオッさん闘う為に異世界に呼ばれたのに職業が料理人かよっ! ヤベエっ! マジでウケるっ!」

「ひゃっふっ……うはははははっ! おいおいマジかよっ!? 勇者召喚じゃなくて料理人召喚ってっか? とんでもねえオチだな」


 連達は俺を指さしながら、晒し者のように笑った。

 本当に態度も頭も悪い奴らだな。

 初対面の年上にする態度じゃねえだろ。

 と、そこでゴホンと王様は咳ばらいをした。


「それでは、これからお主達には帝都に向かってもらう。そこで訓練を受け、次元の歪からくる魔物討伐の準備に備えるのじゃ」

「「はっ」」

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