美少女たちの温泉大乱戦
「ご主人さまぁ~♪」
湯気の向こうから、妙に艶っぽい声が聞こえてきた。
振り向くと、そこには濡れ髪を垂らしたイリーナが、完全に“その姿”で登場していた。
「ちょっ……お前、なに素っ裸で入ってきてるんだ!?」
「え? お風呂って裸で入るものなんですよね??」
「いやいや! タイミング考えろって!!」
こいつはサキュバス。エロ魔族。分かってる。
分かってるけど……いろいろと刺激が強すぎる!
「ふふ、見られるの、嫌いじゃないですよ? むしろ、もっとちゃんと見てくださいよ……ね?」
イリーナが近づいてくる。
近い近い! 距離感おかしいから!
湯の中で俺は距離を取る。だがその時、さらに追い打ちをかける声が――
「イリーナ!? またご主人様を誘惑してるんですー! ずるいんですー!」
湯気を割って突入してきたのはウィンリー。
そしてなぜか、こっちも素っ裸で突撃してきた。
「ちょっ……お前ら二人して何やってんだよ!」
「これは正当なる縄張り争いなんですー!」
「ふふん、ウィンリーちゃん。サキュバスの誘惑スキル、舐めないでほいしわ!! 戦いはここからですよ」
「望むところなんですー!」
――戦いが、始まった。
俺の両隣で、なぜか女同士の“温泉ボディアピール対決”が勃発してしまったのだ。
「この胸のふわふわ感、サキュバスの魔力でナチュラルな魅惑度アップですわよ♪」
「ウィンリーも負けてないんですー! 肌はぷるぷる、若さと元気で勝負ですー!」
くっ、何の勝負なんだよこれは!
しかも、湯気の演出でギリギリ見えないけど、すぐ近くで肌が触れそうなくらいの距離感……!
「ちょ……お前ら、頼むから少しは恥じらいを持て!!」
「えっ? それってなんですか?」
同時に首をかしげるな!
しかも今出てる赤い月がちょっとムードが出てきてるのが逆に困る!
どこかエロティックな空気の中で、俺はとにかく冷静を保とうと頑張った。
が。
「ご、ご主人様ぁ……イリーナ、ちょっとのぼせてきちゃいましたぁ……」
「ウィンリーも、目がぐるぐるするですー……」
二人とも、限界が来たようだった。
俺は急いで二人を湯船から引き上げ、バスタオルで包み、部屋まで運んだ。
――そして。
俺は誰もいない深夜の風呂にそっと入りなおした。
月が二つ、静かに空を照らしている。
「……はあ。俺の胃がもたないな、マジで」
そんなため息をつきながら、俺はまた明日から始まる生活に備え、湯けむりに身を沈めるのだった。