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ドラゴン襲来と怒れるサキュバス

 さて、どうするかな――。


 俺はオンボロの家を眺めながら考えていた。

 朽ちかけた木の壁に、雨漏りしそうな屋根。食材の保存庫もない――いや、マジで限界かもな。

 そんな時だった。


「ミツボシ様ーー!」


 森の方角から聞き慣れた声。

 ウィンリーの声だ。


 ん? アイツ、いつの間に森に行ってたんだ。


 声の方へ振り向くと、森の木々をかき分けてウィンリーが現れる。

 その腕には、小さな人影……いや、男の子か? しかも、ぐったりしてる。


「ミツボシ様、大変です」

「えっ、なんで? その人が理由か?」


 俺が指差すとウィンリーはにっこり笑って肯定する。


「さすがミツボシ様、察しがいいです。その通りです!」


 お気楽な返答だな、おい。男の子は明らかに怪我しているし、顔色も悪いぞ?


「……一体、何があったんだよ?」

「敵襲です」

「……はぁっ!? 誰がこんな辺境な土地に来るってんだよ!」


 俺が問い返すとウィンリーが呟いた。


「……あ、来る」

「おい、答えにないぞ……!」

「そこです」


 ウィンリーが目で示した方向へ視線を向ける。


 木々の奥――夕暮れに染まった空の中、真紅の脚が二本、木々の間から現れる。

 そしてその奥に、ギラリと光る巨大な牙――。


「うおおい……マジかよ……!」


 俺は声を失った。

 そこに現れたのは――巨大な翼を持ち、鎧のような鱗に覆われた、圧倒的な存在感を放つ――ドラゴン。

 ファンタジーの世界でしか見たことのない、正真正銘の本物のドラゴン。


『ギィアァァァァァアァァ!!』


 天地を揺るがすような咆哮が森を貫いた。

 風圧だけで木々がしなる。


「わあ、目の前に食べ物があって嬉しそうな顔してますよ」


 ケラケラ笑いながら、なぜか余裕たっぷりのウィンリー。


「ウィンリーさん、余裕ですね! なんとかしてくださいよ」


「えー、無理です。ドラゴンなんて超怖いです。死にたくありません!」


 じゃあなんで笑ってたんだよ!!

 この脳天気エルフがぁぁぁーーーッ!


『ガラァァァァァァッ!!!』


 再びドラゴンが咆哮。まっすぐに俺を見据えてくる。

 ――やばい。完全に俺を獲物認定してる。


「ミツボシ様、ご安心くださいです。この子は私が守りますです!」


 ウィンリーがそう言って、男の子を抱きかかえ直す。


「……おい、俺は!?」


 ドラゴンが口を大きく開け、赤熱した光がその奥に集まり――。


「マジかっ!?」


 次の瞬間、灼熱のファイヤーボールが放たれた。

 俺は咄嗟に地を転がってそれを回避。


 背後で爆音が響く。


 振り返れば――オンボロの我が家が、紅蓮の炎に包まれ吹き飛ばされていた。


 俺たちの家がぁぁぁぁぁぁぁ!!


 中には……イリーナがまだ寝ているはず!


「おい、ウィンリー! あのドラゴン、一体何なんだよ!」

「名はバタードラゴン。太古から存在し、現れてはすべてを焼き尽くす災厄の竜です」

「災厄て……おいおい!」


 鋭く振り下ろされる爪。躱す俺。その直後、鋭い牙が俺の肩へと迫る!


 だが――食われてたまるかよ!


 俺は地面に転がり、近くに落ちていた包丁を掴み取る。


「右、左、尻尾、右、牙……そして、右!」


 攻撃のパターンを分析し、俺はすり抜けるようにドラゴンの背後へ回り込む。


 そして――


【ぶった斬り】を発動。


 俺は全力で、足の関節に向けて包丁を振り下ろした。


「うりゃああああ!」


 包丁が鱗を裂き、ドラゴンの関節が――スパッと切断された。


「……おお?」


 あまりのあっけなさに、思わず間の抜けた声が漏れる。


『ギャイイイイイイ!!』


 想定外のダメージに、バタードラゴンは咆哮を上げ、バランスを崩す――


 そのまま、翼を広げて飛び上がった!


「嘘だろっ!」


 バタードラゴンは空中からファイヤーボールを連射しながら、俺を狙って再び急降下して着地。


「いや、待て待て!」


 完全に元通りの足。

 まさか、再生能力持ちかよ!!

 俺は驚いていると、崩れた我が家の瓦礫の中から、一人の影が立ち上がる。


「イリーナ!」


 彼女は何も言わず、ブツブツと何かを呟いている。

 だが次の瞬間――その表情が鬼神の如く険しくなった。


「お前……私の寝てた場所を……吹き飛ばしたなぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ――えっ、それ!?


 イリーナは俺の横を風のように通り過ぎ、バタードラゴンへと突進した。


「ウリャァァァァァァァ!!」


 渾身の拳が、バタードラゴンの腹に突き刺さる。

 次の瞬間、ドラゴンの巨体が――


 大地を砕き、山を揺らし、地面にめり込んだ。


 地鳴りが辺りを包む中、バタードラゴンの唸り声が虚しく響いた――。

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