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true177の短編小説10作詰め合わせ【1】

もう、取り返しはつかない。

作者: true177

 夏の暑い日差しが照り付けて、直射日光が肌にチクチクと刺さる。高校二年の智哉ともやは、今年の進級以降右肩上がりで中よりパラメータが上昇した梨沙りさと並んで、ブロック塀立ち並ぶ住宅街を歩いていた。


「ねえねえ、智哉! 聞きたいことがあるんだ」


 今時やや珍しくなった麦わら帽子を斜めにして被っている梨沙は、うっすらと汗がにじみ出ている。手にはアイスが握られており、暑さで溶ける速さと戦っている。


「何だ、宿題代行はもう聞かないぞ?」


 彼女、智哉をパシリか下僕かのように扱う。つい先ほども、硬貨二枚を手のひらに押し込まれ、今彼女がなめているアイスを買って来た次第である。智哉自身が宿題に手をこまねいている時に限って、梨沙の課題が上乗せられるものだから、提出期限を二人そろって破ってしまったこともある。


 とはいえど、やり方に軽蔑の念は無い……と思いたい。どうしても理解不能で手つかずのものしか、課題を智哉に回してこないのだ。パシリも、三回に一回のペースだが梨沙のおごりで同じものを適当な場所の屋根の下、二人向かい合わせで食べている。お駄賃のつもりなのだろう。


 そんな梨沙のことだから、またお使い指令か、はたまた替え玉か。それくらいだろうと思っていた。


「……智哉って、彼女いるかな?」


 ……何だって?


 それが、智哉に浮かんだ最初の感想だった。

プライベートなことに踏み込んでこられたのは、今回が初めてだった。それまではたわいも無い雑談か、公式の導き方か……。私的なことのやり取りは、ただの一度も無かった。


 どうすればいいのか、分からない。心の中の雑音がどんどん大きくなっていく。集中したいのに、妨害される。


 この質問の後は、何が来るのだろう。からかいの言葉が来てもおかしくはない。『何を想像したの?』と、あしらわれるほど恥ずかしいものはない。


「……いなかったとしても、梨沙なんか恋愛対象の『れ』の字も出てこないね!」


 だから、叫んでしまった。とにかくこの場を収めたいと、勢い余って巨大な嘘を吐いてしまった。


 梨沙の顔が、険しくなった。唇を必死に噛みしめていて、目はそっぽを向いていた。


 しまった、と思っても、もう遅かった。


「……智哉、ちょっとひどすぎない? ネタで言ったとしても、もっと言い方ってものがあるよ……」


 梨沙の取り繕った苦笑が、より一層智哉の精神を傷つける。


 彼女は、無言になってしまった。


 先読みをし過ぎて、心にもない事を発言してしまった。凹んでしまった関係をしゅうふくすることは、最早不可能に等しかった。


 梨沙の問いに正直に答えていたら、どうなっていたのだろうか。今となっては、絵に描いた餅だ。パラレルワールドの行く先を想像力で補っても、その未来は二度智哉の前に現れる事は無い。


 ――――――この事件の後、梨沙が智哉に親しく話しかけることは無くなった。

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