幕間(㊗・コミカライズ)
【※コミックノヴァでコミカライズします】
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辺境のカンゴウク地方、霧深い森の奥にひっそりと佇む屋敷。
かつて世界を震撼させた魔王ジャークレイと、彼を打ち倒した5人の戦乙女勇者たちが、今ではこの地で静かな(はずの)共同生活を送っていた。
朝の陽光が窓から差し込み、鳥のさえずりが響く。
その瞬間――
「ジャーくん、おはようの時間だよぉ~♥」
最初に飛び込んできたのは、ベージュの髪をふわりと揺らす弓使い、ラブリィ。
彼女は魔王のベッドにダイブし、もふもふの毛布をめくってジャークレイの顔を覗き込む。
「ん……ラブリィ、朝から騒がしいぞ……」
「えへへ~、騒がしくないとジャーくん起きないでしょ? ほら、おはようのキス、ちゅっ♥」
「むぐっ……!?」
ラブリィは遠慮なく唇を寄せ、魔王の頬に甘いキスを落とす。
ジャークレイは目を見開くが、宝玉の影響で抵抗できず、ただ顔を赤らめるしかなかった。
「ふふ~ん、ラブリィの夫さんは今日も可愛いねぇ~♥」
「……誰が夫だ……」
「ジャーくんはラブリィの夫だもん! はい、次は唇にちゅっ♥」
「やめ――むぐぅ!?」
そこへ、扉が開く。
「ラブリィ、また一番乗りは。ずるいですよ」
青髪の魔導士、アネストが静かに入ってくる。彼女は手に銀の盆を持ち、朝食を運んできたようだった。
「ジャーくん、おはようございます。朝食は栄養バランスを考えて、魔力回復に特化したメニューです。まずは……おはようのキスからですね」
「ま、待て、アネスト、貴様まで――」
「ちゅっ」
「ぬぐぅ……!」
アネストは冷静な顔のまま、ジャークレイの額に優しくキスを落とす。
「今日も素敵な寝顔でした。記録しておきましたので、後ほど共有します」
し……」
そのとき――
「ジャーくん、朝食にする~? お風呂にする~? ううん、わ・た・し・とラブラブ子作りよね!」
バタンッ!
勢いよく扉が開き、そこに立っていたのは赤髪をなびかせた武闘家、ディヴィアス。だが、彼女の姿はいつもと違っていた。
「……って、何やってんのよあんたたち!!」
裸エプロン。
それは、ディヴィアスが朝食当番として気合を入れた結果の姿だった。鍛え上げられた肉体に、白いエプロン一枚。
肩から太ももまで露わになったその姿は、戦場では見られぬ女の一面だった。
「ラブリィ! アネスト! 何勝手にジャーくんとイチャついてんのよ! ざけんじゃないわよ、私にもしなさいよ、ジャーくん!」
「えぇ~? ディヴィアスちゃん、裸エプロンで朝から色気振りまいてる方がずるいよぉ~」
「これは気合の表れよ! ジャーくんに朝食を作るって決めたから、最高の姿で迎えようと思ったの!」
「ジャーくん、ディヴィアスの裸エプロン……どうですか?」
「……ぬぅ……」
ジャークレイは顔を背けようとしたが、宝玉の影響で視線が勝手にディヴィアスの姿を追ってしまう。しかも、口元が勝手に動き――
「美しいぞ、ディヴィアス……その姿はまさに戦場の女神の如し……」
「ジャ~くん!? ああ、もう、筋トレと同じで毎日の積み重ねでどんどんジャーくんラブが更新されてるわ! もう我慢できないわ、朝食にジャーくんいただくわ!」
ディヴィアスがベッドに飛び込むと同時に、ラブリィとアネストも左右からジャークレイを挟み込む。
「私もです。ジャーくんの寝起きの顔、あまりにも尊くて……これはもう、キスで祝福するしかありません」
「ラブリィも~! ジャーくんの寝癖、ちょっと跳ねてて可愛い~♥ ちゅっちゅっちゅっ♥」
「ぬ、ぬぅ……やめろ、貴様ら……!」
ジャークレイの抗議は虚しく、三人の勇者たちは次々とキスを浴びせていく。
頬に、額に、唇に、首筋に――
「ジャーくんの唇、今日も柔らかいねぇ~♥ ちゅっ♥」
「ジャーくん、朝の魔力循環を促すために、もう一度……ちゅっ」
「ジャーくん、私の夫なんだから、当然でしょ? ちゅっ♥ ちゅっ♥ ちゅっ♥」
「や、やめ……ぬぐぅ……!」
ジャークレイの顔は真っ赤に染まり、身体は宝玉の影響で逃げることもできず、ただ三人の愛情を受け止めるしかなかった。
「ジャーくん、朝食は後回しにして、まずは愛の栄養補給よ!」
ディヴィアスがジャークレイの胸元に顔を埋め、ラブリィは腕に抱きつき、アネストは静かに手を握りながらキスを続ける。
「ジャーくん、今日も一日、私たちの夫として頑張ってくださいね」
「ラブリィの夫さんは、世界一ラブリィな夫さんだよぉ~♥」
「ジャーくん、私の夫としての義務、果たしてもらうわよ。まずは……ちゅっ♥」
そのとき――
「ぬぬ?」
「「「むっ!」」」
ジャークレイの腹の上に、冷たい体温の何かが乗っている。
それは柔らかくもなく、温かくもなく、ただひたすらに無機質な気配を放っていた。
「……重い。下半身、腹部に何かが……」
ジャークレイが眉をひそめると、ラブリィが首を傾げた。
「えぇ~? ラブリィは腕に抱きついてるだけだよぉ?」
「私は胸元です。腹部には触れていません」
「私も下半身にはまだ……って、何よこの感触!? 誰か乗ってるじゃない!」
三人が一斉にシーツをめくる。
そこにいたのは、無表情のままジャークレイの腹の上に抱き着いている少女――キルル。
彼女は親指を突き立て、静かに言い放った。
「キスは後れを取ったけど、朝の交尾は私が一番」
その言葉は、部屋の空気を一瞬で凍らせた。
ジャークレイは目を見開き、声を震わせながら言葉を絞り出した。
「貴様……! 空間転移で夜這いも朝這いもやめろと言ったではないか!」
キルルは首を傾げる。
「ピンポイントに転移成功。だから性交問題ない」
「問題しかないわよッ!!」
ディヴィアスが怒声を上げ、裸エプロン姿のまま拳を振り上げた。
「ジャーくんは今、私の朝食なのよ! 勝手に乗るんじゃないわよ!」
「ジャーくんはラブリィの夫さんだもん! 朝のエッチはラブリィが一番って決まってるの!」
「キルル、あなたの行動は規定違反です。共有協定第7条、“空間転移による先制接触は禁止”に抵触しています」
三人の乙女たちが一斉にキルルに詰め寄る。
だがキルルは動じない。
「規定は破るためにある。ジャーくんの腹は温かい。この価値はそれほどのもの」
「価値の問題ではないッ!!」
ジャークレイが叫ぶように言い放つ。
「相手の了承も得ずに空間転移で接触するなど、もはや暗殺……戦術としても卑劣極まりない!」
「愛は戦術。勝者が正義」
「貴様……!」
ジャークレイが身を起こそうとするが、宝玉の影響で自由に動けない。
その隙を突いて、キルルはジャークレイの胸元に頬を寄せた。
「ジャーくん、今日もいい匂い。好き」
「やめろ、貴様……!」
「ジャーくん、キルルにだけ優しくするのはずるいよぉ!」
ラブリィがジャークレイの左腕にしがみつき、唇を寄せる。
「ジャーくん、私にも好きって言ってください。でないと、魔力制御を乱します」
アネストが右手を握りながら、静かに圧をかける。
「ジャーくん、私の裸エプロンはどうだったのよ!? 無視するなんて許さないわ!」
ディヴィアスがベッドの端から飛び込む。
そして、四人の乙女たちが、ジャークレイに一斉にキスの雨を降らせた。
頬に、額に、唇に、首筋に、肩に、胸元に――
「ジャーくん、ちゅっ♥」
「ジャーくん、ちゅっ♥」
「ジャーくん、ちゅっ♥」
「ジャーくん、ちゅっ♥」
ジャークレイは顔を真っ赤に染めながら、ただ呻くしかなかった。
「……誰か……誰か自分を殺してくれ……」
「殺さない。愛する」
その言葉に、キルルが静かに首を振った。
だが、そのとき屋敷の廊下から、軽やかな足音が響いた。
「ふふ~ん、なーんだ、みんなしてまだそんなジャーくんを困らせてるんだね」
扉の向こうから現れたのは、夕焼け色の髪を揺らす少女シャイニ。
彼女は他の四人とは違い、ベッドに飛び込むこともせず、ただ余裕たっぷりの笑みを浮かべて立っていた。
「またその余裕顔……ずるいよぉ~」
ラブリィが頬を膨らませる。
「態度に出てますね。勝者の余裕というやつですか」
アネストが眉をひそめる。
「何よその『私はもうワンランク上にいる』みたいな顔……ムカつくわね」
ディヴィアスが拳を握る。
「………………」
キルルは無言でシャイニを見つめる。
その理由は、皆が分かっていた。
シャイニは、他の誰よりも先にジャークレイとの関係を一歩進めていたのだ。
それは……
「私はもう皆みたいに子供じゃないからね……だって、お母さんになるんだし~♥」
シャイニはデレデレした顔で、ふっくらと膨らみ始めたお腹を優しく撫でた。
そう、シャイニはジャークレイとの子を身ごもっていたのだ。
「うぅ……ラブリィだって、ジャーくんの赤ちゃん欲しいのにぃ……」
「……妊娠確定とは……計算外です。完全に一歩先を越されました」
「な、何よそれ……私だって、ジャーくんと……その……! なのに、なのに……!」
「うらやまけしからん」
四人は歯ぎしりしながらシャイニのお腹をジーっと睨む。
「……悪夢だ。これは……悪夢だ……」
ジャークレイは、ベッドの上で頭を抱えた。
そして、シャイニはニタリと笑みを浮かべて四人を見下す。
その笑みは、勇者として人類の希望として崇められていた面影はまるでない。
シャイニはふっくらと膨らみ始めたお腹を撫でながら、勝者の笑みを浮かべていた。
「ねぇ、みんなもさっさと来なよ。高みにね」
その言葉に、部屋の空気が一瞬で張り詰める。
「ジャーくんの赤ちゃん……ラブリィも欲しい……! ねぇ、次はラブリィの番だよぉ!」
「妊娠は計画的に。次の周期で私が受精する確率は89%。準備は整っています」
「ジャーくん、私にも……その……妊娠させなさいよ! 裸エプロンで朝食作ってるんだから、当然でしょ!」
「順番。公平に。次は私」
ジャークレイは、枕に顔を埋めた。
「……地獄だ。ここは……地獄だ……」
そして、四人の勇者たちはシャイニの腹を囲みながら、次なる“母性の戦い”に向けて静かに火花を散らし始めていた。
世界は今日も平和な朝が訪れていた。
ただ、敗れた魔王ジャークレイにとっては、最も過酷な日々だけが続いていた。
【※コミックノヴァでコミカライズします】
お世話になっております。
ご無沙汰です。
本作……コミックノヴァでコミカライズします!!!!!!!
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いや、まぢで……こんな大問題の作品がマジです。
是非とも皆さま読んじゃってくださいな!
ついでに下記で【★★★★★】で評価お願い致します!