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幕間(㊗・コミカライズ)

【※コミックノヴァでコミカライズします】

https://piccoma.com/web/product/194516/buy_bulk/episodes

 辺境のカンゴウク地方、霧深い森の奥にひっそりと佇む屋敷。

 かつて世界を震撼させた魔王ジャークレイと、彼を打ち倒した5人の戦乙女勇者たちが、今ではこの地で静かな(はずの)共同生活を送っていた。

  朝の陽光が窓から差し込み、鳥のさえずりが響く。

 その瞬間――


「ジャーくん、おはようの時間だよぉ~♥」


 最初に飛び込んできたのは、ベージュの髪をふわりと揺らす弓使い、ラブリィ。

 彼女は魔王のベッドにダイブし、もふもふの毛布をめくってジャークレイの顔を覗き込む。


「ん……ラブリィ、朝から騒がしいぞ……」

「えへへ~、騒がしくないとジャーくん起きないでしょ? ほら、おはようのキス、ちゅっ♥」

「むぐっ……!?」


 ラブリィは遠慮なく唇を寄せ、魔王の頬に甘いキスを落とす。

 ジャークレイは目を見開くが、宝玉の影響で抵抗できず、ただ顔を赤らめるしかなかった。


「ふふ~ん、ラブリィの夫さんは今日も可愛いねぇ~♥」

「……誰が夫だ……」

「ジャーくんはラブリィの夫だもん! はい、次は唇にちゅっ♥」

「やめ――むぐぅ!?」


 そこへ、扉が開く。


「ラブリィ、また一番乗りは。ずるいですよ」


 青髪の魔導士、アネストが静かに入ってくる。彼女は手に銀の盆を持ち、朝食を運んできたようだった。


「ジャーくん、おはようございます。朝食は栄養バランスを考えて、魔力回復に特化したメニューです。まずは……おはようのキスからですね」

「ま、待て、アネスト、貴様まで――」

「ちゅっ」

「ぬぐぅ……!」


 アネストは冷静な顔のまま、ジャークレイの額に優しくキスを落とす。


「今日も素敵な寝顔でした。記録しておきましたので、後ほど共有します」

し……」


 そのとき――


「ジャーくん、朝食にする~? お風呂にする~? ううん、わ・た・し・とラブラブ子作りよね!」


 バタンッ!


 勢いよく扉が開き、そこに立っていたのは赤髪をなびかせた武闘家、ディヴィアス。だが、彼女の姿はいつもと違っていた。


「……って、何やってんのよあんたたち!!」


 裸エプロン。

 それは、ディヴィアスが朝食当番として気合を入れた結果の姿だった。鍛え上げられた肉体に、白いエプロン一枚。

 肩から太ももまで露わになったその姿は、戦場では見られぬ女の一面だった。



「ラブリィ! アネスト! 何勝手にジャーくんとイチャついてんのよ! ざけんじゃないわよ、私にもしなさいよ、ジャーくん!」


「えぇ~? ディヴィアスちゃん、裸エプロンで朝から色気振りまいてる方がずるいよぉ~」


「これは気合の表れよ! ジャーくんに朝食を作るって決めたから、最高の姿で迎えようと思ったの!」


「ジャーくん、ディヴィアスの裸エプロン……どうですか?」


「……ぬぅ……」



 ジャークレイは顔を背けようとしたが、宝玉の影響で視線が勝手にディヴィアスの姿を追ってしまう。しかも、口元が勝手に動き――


「美しいぞ、ディヴィアス……その姿はまさに戦場の女神の如し……」

「ジャ~くん!? ああ、もう、筋トレと同じで毎日の積み重ねでどんどんジャーくんラブが更新されてるわ! もう我慢できないわ、朝食にジャーくんいただくわ!」


 ディヴィアスがベッドに飛び込むと同時に、ラブリィとアネストも左右からジャークレイを挟み込む。


「私もです。ジャーくんの寝起きの顔、あまりにも尊くて……これはもう、キスで祝福するしかありません」

「ラブリィも~! ジャーくんの寝癖、ちょっと跳ねてて可愛い~♥ ちゅっちゅっちゅっ♥」

「ぬ、ぬぅ……やめろ、貴様ら……!」


 ジャークレイの抗議は虚しく、三人の勇者たちは次々とキスを浴びせていく。

 頬に、額に、唇に、首筋に――


「ジャーくんの唇、今日も柔らかいねぇ~♥ ちゅっ♥」

「ジャーくん、朝の魔力循環を促すために、もう一度……ちゅっ」

「ジャーくん、私の夫なんだから、当然でしょ? ちゅっ♥ ちゅっ♥ ちゅっ♥」

「や、やめ……ぬぐぅ……!」


 ジャークレイの顔は真っ赤に染まり、身体は宝玉の影響で逃げることもできず、ただ三人の愛情を受け止めるしかなかった。


「ジャーくん、朝食は後回しにして、まずは愛の栄養補給よ!」


 ディヴィアスがジャークレイの胸元に顔を埋め、ラブリィは腕に抱きつき、アネストは静かに手を握りながらキスを続ける。


「ジャーくん、今日も一日、私たちの夫として頑張ってくださいね」

「ラブリィの夫さんは、世界一ラブリィな夫さんだよぉ~♥」

「ジャーくん、私の夫としての義務、果たしてもらうわよ。まずは……ちゅっ♥」


 そのとき―― 


「ぬぬ?」

「「「むっ!」」」


 ジャークレイの腹の上に、冷たい体温の何かが乗っている。

 それは柔らかくもなく、温かくもなく、ただひたすらに無機質な気配を放っていた。


「……重い。下半身、腹部に何かが……」


 ジャークレイが眉をひそめると、ラブリィが首を傾げた。


「えぇ~? ラブリィは腕に抱きついてるだけだよぉ?」

「私は胸元です。腹部には触れていません」

「私も下半身にはまだ……って、何よこの感触!? 誰か乗ってるじゃない!」


 三人が一斉にシーツをめくる。

 そこにいたのは、無表情のままジャークレイの腹の上に抱き着いている少女――キルル。

 彼女は親指を突き立て、静かに言い放った。


「キスは後れを取ったけど、朝の交尾は私が一番」


 その言葉は、部屋の空気を一瞬で凍らせた。

 ジャークレイは目を見開き、声を震わせながら言葉を絞り出した。


「貴様……! 空間転移で夜這いも朝這いもやめろと言ったではないか!」


 キルルは首を傾げる。


「ピンポイントに転移成功。だから性交問題ない」

「問題しかないわよッ!!」


 ディヴィアスが怒声を上げ、裸エプロン姿のまま拳を振り上げた。


「ジャーくんは今、私の朝食なのよ! 勝手に乗るんじゃないわよ!」

「ジャーくんはラブリィの夫さんだもん! 朝のエッチはラブリィが一番って決まってるの!」

「キルル、あなたの行動は規定違反です。共有協定第7条、“空間転移による先制接触は禁止”に抵触しています」


 三人の乙女たちが一斉にキルルに詰め寄る。

 だがキルルは動じない。


「規定は破るためにある。ジャーくんの腹は温かい。この価値はそれほどのもの」

「価値の問題ではないッ!!」


 ジャークレイが叫ぶように言い放つ。


「相手の了承も得ずに空間転移で接触するなど、もはや暗殺……戦術としても卑劣極まりない!」

「愛は戦術。勝者が正義」

「貴様……!」


 ジャークレイが身を起こそうとするが、宝玉の影響で自由に動けない。

 その隙を突いて、キルルはジャークレイの胸元に頬を寄せた。


「ジャーくん、今日もいい匂い。好き」

「やめろ、貴様……!」

「ジャーくん、キルルにだけ優しくするのはずるいよぉ!」


 ラブリィがジャークレイの左腕にしがみつき、唇を寄せる。


「ジャーくん、私にも好きって言ってください。でないと、魔力制御を乱します」


 アネストが右手を握りながら、静かに圧をかける。


「ジャーくん、私の裸エプロンはどうだったのよ!? 無視するなんて許さないわ!」


 ディヴィアスがベッドの端から飛び込む。

 そして、四人の乙女たちが、ジャークレイに一斉にキスの雨を降らせた。

 頬に、額に、唇に、首筋に、肩に、胸元に――


「ジャーくん、ちゅっ♥」

「ジャーくん、ちゅっ♥」

「ジャーくん、ちゅっ♥」

「ジャーくん、ちゅっ♥」


 ジャークレイは顔を真っ赤に染めながら、ただ呻くしかなかった。


「……誰か……誰か自分を殺してくれ……」

「殺さない。愛する」


 その言葉に、キルルが静かに首を振った。

 だが、そのとき屋敷の廊下から、軽やかな足音が響いた。


「ふふ~ん、なーんだ、みんなしてまだそんなジャーくんを困らせてるんだね」


 扉の向こうから現れたのは、夕焼け色の髪を揺らす少女シャイニ。

 彼女は他の四人とは違い、ベッドに飛び込むこともせず、ただ余裕たっぷりの笑みを浮かべて立っていた。


「またその余裕顔……ずるいよぉ~」

 

 ラブリィが頬を膨らませる。


「態度に出てますね。勝者の余裕というやつですか」


 アネストが眉をひそめる。


「何よその『私はもうワンランク上にいる』みたいな顔……ムカつくわね」


 ディヴィアスが拳を握る。


「………………」


 キルルは無言でシャイニを見つめる。

 その理由は、皆が分かっていた。

 シャイニは、他の誰よりも先にジャークレイとの関係を一歩進めていたのだ。

 それは……


「私はもう皆みたいに子供じゃないからね……だって、お母さんになるんだし~♥」


 シャイニはデレデレした顔で、ふっくらと膨らみ始めたお腹を優しく撫でた。

 そう、シャイニはジャークレイとの子を身ごもっていたのだ。


「うぅ……ラブリィだって、ジャーくんの赤ちゃん欲しいのにぃ……」

「……妊娠確定とは……計算外です。完全に一歩先を越されました」

「な、何よそれ……私だって、ジャーくんと……その……! なのに、なのに……!」

「うらやまけしからん」


 四人は歯ぎしりしながらシャイニのお腹をジーっと睨む。


「……悪夢だ。これは……悪夢だ……」


 ジャークレイは、ベッドの上で頭を抱えた。

 そして、シャイニはニタリと笑みを浮かべて四人を見下す。

 その笑みは、勇者として人類の希望として崇められていた面影はまるでない。

 シャイニはふっくらと膨らみ始めたお腹を撫でながら、勝者の笑みを浮かべていた。


「ねぇ、みんなもさっさと来なよ。高みにね」


 その言葉に、部屋の空気が一瞬で張り詰める。


「ジャーくんの赤ちゃん……ラブリィも欲しい……! ねぇ、次はラブリィの番だよぉ!」

「妊娠は計画的に。次の周期で私が受精する確率は89%。準備は整っています」

「ジャーくん、私にも……その……妊娠させなさいよ! 裸エプロンで朝食作ってるんだから、当然でしょ!」

「順番。公平に。次は私」


 ジャークレイは、枕に顔を埋めた。


「……地獄だ。ここは……地獄だ……」


 そして、四人の勇者たちはシャイニの腹を囲みながら、次なる“母性の戦い”に向けて静かに火花を散らし始めていた。


 

 世界は今日も平和な朝が訪れていた。



 ただ、敗れた魔王ジャークレイにとっては、最も過酷な日々だけが続いていた。

【※コミックノヴァでコミカライズします】


お世話になっております。

ご無沙汰です。


本作……コミックノヴァでコミカライズします!!!!!!!

https://piccoma.com/web/product/194516/buy_bulk/episodes



いや、まぢで……こんな大問題の作品がマジです。

是非とも皆さま読んじゃってくださいな!

ついでに下記で【★★★★★】で評価お願い致します!

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