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第1話 口は地獄の元

 見事だ。

 自分が魔界の王、そして魔界の神の座へと君臨してどれほどになるか?


 これまで幾度となく自分の下へとたどり着き、挑んできた数多くの勇者たちを退けた。 


 数百年前に大規模な戦争で数多くの男たちが死に、世界のほとんどが女だらけとなった地上世界。もはや人類は滅亡しかないと思っていた。


 だが、滅亡の前に人類は自分の下へ辿り着いた。

 これまでの歴史を覆すほどの突然変異の才覚を持った、『5人の戦乙女勇者』だ。


 まさか、自分が人間の女たち……しかも10代の小娘たちに敗れるなど、かつての好敵手であった前時代の勇者たちが知ればどれだけ笑うことか。嘆くことか。しかし事実だ。



「ようやくここまで来たよ! 皆の力を合わせて、世界の心を一つに、私たちはついにここまでたどり着いたんだよ!」


「ええ、ようやく終わるのです、覚悟するのです、魔王!」


「私たちの友情パワーで、あなたを地獄に送っちゃうぞ!」


「覚悟することね! あんたをさっさとぶっ殺して、新しい時代の幕開けよ!」


「情状酌量の余地無し。死刑」



 時代が変わったのか。それとも自分が衰え落ちたのか、分からない。

 だが、それでもこの小娘たちは勇者の名に相応しい力で自分にまでたどり着いた。

 当然努力もしたであろう。

 才能だけではなく、苦悩や困難の連続の道のりだったであろう。

 ならば、自分が最後にできることは、せめて歴史を変えた勇者に敬意を表するべき。



「ねえ、最後だし……『大魔王・ジャークレイ』……私たちの生涯最大最後の敵……せめてあなたの素顔を見せてくれないかな? かな?」



 そのとき、勇者の一人、地上の夕焼けのように染まった髪が特徴的の、5人の中でリーダー的な立場の勇者・『天剣星・シャイニ』が自分にそう言ってきた。



「確かにそうですね。数千年以上もその仮面の下の素顔を晒さなかったようですが、最後ぐらいは見せて頂きましょうか」



 もう一人の勇者、青空や海のように染まった青く長い髪が特徴的で、5人の中で一番生真面目な雰囲気を見せ、そして自分も目を見張る膨大な魔力を持った勇者、『超魔導士・アネスト』。



「うん、ラブリィもあなたのお顔、気になっちゃってるの~。せっかくだから、見たいな~。見せてくれないと、ラブリィのアローでブスブス撃ち抜いちゃうぞ♪」



 ベージュの長い髪を靡かせて、この状況下でもニコニコと笑顔が絶えず、それでいてなかなかに残酷なことも口にする弓使い、『神弓姫・ラブリィ』。



「そうね、私も賛成だわ。どうせなら私たちの人生を戦いばかりにしてくれやがった憎き大魔王様のツラでも見て、最後はメチャクチャにしてやるっつーのぉ」



 肩口までの赤い髪と、鋭い目つきで相手を射抜き、目つきだけでなく気の強さも世界最強の武闘家、『闘千女帝・ディヴィアス』。



「どっちでもいい。早く首切る。死刑。切腹。車裂き」



 そして、氷のように冷たい目と一切揺るがぬ鉄面皮の栗色髪の少女。その揺ぎ無さと残虐性で魔王軍兵を震え上がらせた、『死神妖精・キルル』。

 この5人の戦乙女勇者戦団に自分は敗れたのだ。

 遥か昔より揺るがぬ魔王軍の魔王として魔界全土を統べたこの自分が……



「そうだな……よかろう……最後ぐらい」



 そして、自分は観念した。面倒な暗殺などを避けるべく、長年魔人の鉄仮面を被って覆っていた素顔を晒した。

 こうして外してみると、気分も清々しいものだ。



「「「「「ッッッ!!!???」」」」」


 

 勇者たちが衝撃を受けたように固まっている。

 自分の素顔が少し意外だったのだろうか。



「どうした? 驚いておるか? 少し青二才で……とはいえ、自分は不老ゆえ、容姿はお前たちの年齢に近くとも、長久の歳月を生きる者だ……」


「「「「「ふぁ、あ……あ……お、男……し、しかも……しかも……」」」」」



 足元に落ちている、刀身の折れた我が魔剣に反射する自身を見てみる。

 常に魔王の面を被っていたため、自分で自分の素顔を見るのも久しぶりかもしれんな。

 ああ、銀髪のこの情けなく笑う負け犬が自分か……何とも情けないものだ……



「さぁ、これで満足したであろう、強く……そして美しき5人の戦乙女勇者たちよ」


「「「「「え……あ……え!?」」」」」


「自分に心残りは無い。後悔もない。最後の最後に……そなたたちのような強く、そして美しきものたちの手にかかるのであれば本望だ!」


「「「「「わ、私たちが、う、美しい!? な、何言ってるの!?」」」」」


「……ん?」



 ん? 何だ? 何を戸惑っているのだ? やけに顔も赤いようだが……しかも5人そろって……どうした?

 自分は何か変な言葉を口走っただろうか?

 自分が口にした「美しい」という言葉だろうか? 

 何も間違っていないと思うが……いや、そうか……ずっと幼い頃より戦いに明け暮れ、地上の男の数も激減した世界において、この者たちはそう言ったものに無頓着な人生を歩んだのだろう。

 そう思うと、この娘たちも哀れだな。

 仕方ない……



「何も間違っていない。そなたたちは強く、そして美しい。この魔王が保証してやろう。万人が惹かれるものであるということを自覚し、そして誇るがよい」


「「「「「ふぁぁあ!!??」」」」」


「ふっ、もし自分が勝っていたらその美しき身体を我が物にするために抱いていたであろうな(冗談だがな)」


「「「「「だ、だい!? そ、それって、え、エッ……的な……」」」」」



 自分の遺言を残し……



「だが、それも叶わぬ。そなたたちの勝ちだ。自分を討った後の世界、女としての幸せを掴むがよい。そして魔王軍を倒したことでそなたたちがどのような世界を作るか―――――――」


「「「「「口説かれたぁッ!? もう……もう……もう!」」」」」


「……ん?」


「「「「「結婚するしかない!?」」」」」


「……………は?」



 な、なんだ? まだ自分は遺言を終えていないというのに……こやつら興奮したように自分に駆けつけて、何だ? トドメを刺す気―――!?



「もう、しょうがないなぁ! こんなイケメンな男の子に口説かれちゃったら、もう無理だよぉ! うん! もういいよぉ! うん! 魔王、もう戦いは終わり。あなたは私が保護するよぉ!」


「その潔さ良し! あなたはここで死ぬには惜しい存在です。何よりもこの私を口説くとは良い度胸。しかし殿方が勇気を出して口説いてくれたというのに、応えなければ女が廃ります! よいでしょう、私はあなたを受け入れて保護しましょう!」


「ひゃぁ~~、もう無理だよぉ! 魔王がこんなにカッコいいなんて……しかも、ラブリィを美しいなんて……えへへへ~、もう、しょうがないな~、うん、しょうがないな~、えへへ、ラブリィの彼氏さんになりたいんなら、うん、いいよぉ~!」


「私を美しいだなんて言って口説くだなんて……魔族は全員クズだと思ってたけど、見る目あるじゃない! ま、か弱い男の子を相手にこれ以上ムキになるなんて女としてカッコ悪いし、それに好きだなんて言われたら……うん……いいわよ! 私の彼氏になりなさいよ!」


「イケメン。じゅるじゅる……婿にしてあげる。うん。保護保護」



 な、なんだ?

よろしくお願い致します。


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