90 改めて四階層探索
翌日、俺達は少し遅めに起きて、身支度をすると、地図の為にピンを刺した場所まで戻ってきた。
オオイワトカゲ達と戦った部屋の前だ。
中にはまた奴等がリポップしている様で、探索魔法に赤い印がきっちり付いていた。
宝箱も開けっ放しだったはずなのだが、しっかり蓋が閉まっていて、鍵穴近くの毒針の罠もバッチリ復活していた。
どれくらいの時間で復活するのかは、判らないが、経験値を稼ぐのには便利みたいだな。
逆に、早く逃げ帰りたい時には面倒だ。
あー……洞窟から一発で出られるあの魔法が欲しいわー……。
一週間ほど四階層を回って分かった事は、三階層の倍くらい広いということ。
だいぶ埋まったと思っていた地図は、全体の三割程しか出来上がっていなかった。
所々に部屋の様な場所があり、強めの魔物が居て、それぞれが宝箱を守っているという事。
その魔物も、オオイワトカゲだけではなく、ストーンゴーレムだったり、石のヤドカリの上位種(フェルギュルティルという舌を噛みそうな名前だ)だったり地面系ばかりだが、種族のバリエーションは多い。
その宝箱のどれもが、状態異常を防ぐマジックアイテムが入っていて、大体一日程で復活する様だった。
毒耐性や、毒防止のマジックアイテムがポロポロ出てきて、どう考えてもここのボスは岩系で毒系だろうと予想できた。
全員が何かしらの防毒アイテムを身につけて、解毒ポーションを複数所持出来ている。
それ以外のマジックアイテムやポーションなどが【アイテムボックス】の中にも数個溜まってきた頃、ボス部屋を見つけた。
ボス部屋のデカい扉は、三階層で見た事のある両開きの扉とそっくりだった。
ヤンスさんが覗いて見た所、中にはオオイワトカゲキングが居たそうだ。
その名前を聞いた時、オーランドが動揺し始めた。
「アイツはヤバい。奴には毒があって、噛まれたらそこから肉が腐る」
先輩ハンターがそれで腕を失って引退したんだ、とオーランドが悲鳴の様な声を上げる。
その言葉に引っかかる物を感じて、俺もこっそり覗かせてもらって、【鑑定】してみた。
案の定、コモドドラゴンみたいに口の中にバクテリアを飼っている様で、噛んだ時にバクテリアが傷口に付いて、筋繊維を分解して腐らせてしまう様だ。
脳裏に動物バラエティで見たコモドドラゴンのバクテリア実験が蘇る。
シャーレに入れられた、ぐずぐずに腐っていく生肉。
背中を怖気が走る。
あの口に洗浄とか浄化とか掛けたら攻撃力下がるんじゃないかな?
希望的観測かもしれない。
まあ、怖くて実験なんて出来ないけど。
この階層でしつこいくらいに毒防止のアイテムが出たのはコイツが居たからなんだろうな。
しかも、何が嫌かって、コイツ睡眠の魔法まで使いやがるんだ。
寝かせて、噛んで、倒れた所を捕食するんだろう。
むちゃくちゃ嫌なコンボだ。
「どうする?」
「一度戻って戦闘計画を練ってからだな」
オーランドの意見に異議のある者は居らず、俺達は一度仮拠点に戻った。
鑑定で見れた内容を共有して、出来るだけの対策を練った。
オオイワトカゲキングは一匹だけだったので、入室は三階層と同じ感じになる。
ジャックが扉を開け、ヤンスさんが楔を打ち込み、オーランドはその護衛。
俺とエレオノーレさんで後方と左右の警戒、デイジーは誰に攻撃がきても回復できる様に準備を行う。
違うのは、オーランドが睡眠防止薬を飲んでから中に入る事と、安全確認が出来たところでデイジーが浄化の魔法、俺が洗浄の魔法をオオイワトカゲキングの口内に掛ける事だ。
バクテリア毒に関しては、効くか効かないかは別として、効いたらラッキーくらいでやる事になった。
その後は、イワトカゲやオオイワトカゲ達と同じ様に、エレオノーレさんの氷魔法でジャブを繰り出し、左右からオーランドとジャックが攻撃、ヤンスさんが撹乱、動きが止まった所で俺かエレオノーレさんの魔法で止めの予定だ。
「まあ、上手くいくかはわからないけど、出来るだけやってみよう。無理そうだったら撤退だ。オレの合図でキリトが氷の壁を作って部屋から出るぞ」
「「「「了解 (よ)(です)」」」」




