表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/262

84 お宝お宝♪おた、か、ら……?

 戦闘が終わった事にカクン、と膝から力が抜けて、座り込む。

 今回、今までで一番キツい戦闘だったんじゃないか?

 俺、めっちゃ狙われてたやん!今になって手足がガクガクブルブル震え始めた。


「まだ気を抜くなアホタレ」


 頭をヤンスさんに打たれた。

 デイジーが俺の手を引っ張って立つのを手伝ってくれる。

 おおぅ、手も膝もプルプルしてら。

 でも、そう、背後をこの二人が守っていてくれたからこそ、俺達はオオイワトカゲだけに集中出来たのだ。

 この逃げ場のない部屋に入って、背後から襲われたりしたら……うひぃ〜、考えたくない。


 これから部屋の中を調べなくてはならないのだけれど、どうにも身体がだるい。

 俺がノロノロと動き出すのを見て、エレオノーレさんが部屋の中心で休む様に言う。


「キリトの魔力量から言えば、まだそこそこ余裕があると思うけど、戦闘でここまで使う事が今まで無かったもの、多分そこから来る精神疲労ね。ちょっと休めば回復すると思うわ。私も一緒に休むから、デイジー何かあったらお願いね」


 そう言うが早いか部屋の中心に俺とデイジーを連れて行って背中合わせで座り込む。

 デイジーは側に立って、俺達の護衛だそうだ。


「休みながらで良いから見える範囲でなんか(鑑定)してくれよ、キリトちゃん。そして何か見つけたらすぐに報告」

「かしこまりましたー……」


 探す、に含みを持たせるヤンスさんに返事をして、部屋中をゆっくりと見回す。

 パッと見、何も無いみたいだが、ふと探索魔法の方に反応がある。

 部屋に入って右側の壁、ジャックが探っている辺りに隠し扉がある様だ。

 二畳位の狭い部屋が表示されていた。

 慌てて部屋の隅や、壁の継ぎ目、天井なんかを確認してみるが、何処にも仕掛けらしいものは無い。

 ダメ元で探索魔法の隠し部屋を【鑑定】してみると、ポンとウィンドウが浮かぶ。


 隠し部屋

  中には宝箱が一つ。魔物は居ない。

  入り口の右手、地上から一メートル程の高さ

  に開閉スイッチがあり、押し込む事で開く。


(MA⭐︎ZI⭐︎KA!)


 見れちゃったよ……!

 なんか攻略本読みながらゲームしてる気分だよ!

 ちょっと【鑑定】さん良い仕事し過ぎじゃない?いきなりボイコットとかしないでね?

 でもあんまり多用しないでおこう。

 人としてなんかダメになりそうだし。


「ジャックのいる辺りの壁、なんか切れ目みたいなのが見える気がする。あと、こっちから見て入り口の左側に変な石がある様な?」


 声が大きくなり過ぎない様に気を付けつつ、ジャックとヤンスさんに声を掛けた。

 実際あると思って見てみると、確かになんかそこだけ変な気がする?ってぐらいの変化が見えるのが不思議だ。

 それぞれがその場を探ると確かにあった。

 隠し扉と、起動スイッチだ。

 壁に埋もれてる様に見えるが、不自然に出っ張っている五百円玉位の石。

 ヤンスさんが念の為罠チェックを行った上で、ボタンだと断定した。

 ジャックの方は分かりやすく、よく見れば切れ目が入っている事がわかる。


 ここで問題なのが宝箱か、隠し扉か問題だ。

 どちらかを開いた時点でどちらかが消えてしまうかもしれない。

 同時に開ければ防げるかもしれないが、下手すればどちらも無くなってしまいかねない。

 そう言って皆でどちらから開けるべきか悩み出す。


 ──のだが、既存メンバー達から、チラリ、チラリと視線が飛んでくる。

 わかりましたよ。

 【鑑定】すれば良いんですね。

 それぞれを、優先ギミック等がないか見たいと思いながら【鑑定】すれば、あら不思議、ウィンドウに『罠はありません。好きな方から開けるがよろし』(意訳)と書いてあるではないか。


「うーん、何も変な感じしないし、好きに開けちゃいましょうよ」


 言外に優先ギミックとか無いよって伝えると、あからさまに皆が笑顔になる。

 「じゃあ開けよう、なんかあったらキリトちゃんのせいだしね〜」等と鼻歌を歌いながらヤンスさんが宝箱まで歩いて行く。

 それを見てデイジーが訝しんでいるのがわかる。


(だよな。そうなるよなー。そろそろ【鑑定】の事、伝えても良いんじゃないかな?)


 俺も皆に付いていきながらぼんやりと考えていた。

 鍵が掛かっていなかった宝箱には、なんと洗浄、浄化、回復の魔法書が三冊も入っていた。

 魔法書とは、読んで字の如く、魔法の仕組みと発動の呪文が記された物だ。

 現在では中々手に入らない途轍もなく高価な代物らしい。

 エレオノーレさんが早口で、どわーっと話してくれたが、ざっくりまとめるとそんな感じ。

 しかもこの中の一冊、回復の魔法書は、デイジーの使う神聖魔法とは違う、医学的な物で、色んな種族の全身の骨格や、血管の流れ、臓器の位置、筋肉等細かく載っていて、とても分厚い。

 まんま医学書。

 しかも、全種族分だから。

 俺の拳を縦に二つ重ねたぐらいある。

 正直言って、読む気がしないが、エレオノーレさんは「世紀の大発見よ!」と胸に抱いてくるくる回って踊っていた。


 お次は隠し扉。

 入り口のボタンをジャックが押すと、ゴゴン……と重い音がして、隠し扉が奥に開いていく。

 敵を警戒して武器を手にしたまま、扉が開き切るのを待った。

 幸いアラームの罠も仕掛けられておらず、隠し部屋の中も宝箱がポツンとあるだけで、肩透かしだった。


 宝箱には罠も鍵も掛かっていなかった。

 かぱりと開いたその中には薄ぺったい木の箱が入っていた。

 サイズ的にはボックスティッシュを半分にスライスした感じだ。


「「「箱!」」」


 オーランド、ヤンスさん、エレオノーレさんの三人がすぐに反応する。

 ここでは箱=マジックアイテムだったから期待が高まるのも無理はない。

 わくわくと開くと、そこには金属製の丸い台座みたいな物と、台座に嵌めるであろう赤色透明な丸い石が並んでいた。

 台座はプラモデルのパーツの様に上下に噛み合わせてあり、中々細かい彫り込みがしてあった。


 汎用簡易魔法剣製造アタッチメント

  通常の剣を、簡易的に魔法剣にする為のマジ

  ックアイテム。

  剣の鍔を挟む様に取り付け、専用のカットを

  施した魔法を込めた魔石を嵌めることで、封

  じ込まれた魔法を剣に纏わせる事ができる。

  サイズは魔力を通す事で調整できる。

  魔石を交換する事で、様々な属性の魔法を使

  用する事ができ、剣が壊れた時は付け替える

  事も可能。


「は?!」


 思わず声が出てしまった。

 コレ、下手な魔法剣が出るより凄くね?

 万一剣が壊れても、新しい剣にこれ取り付ければ良いし、魔力でサイズ変更可能だし……


「どうしたキリト?」


 専用のカットを施した魔石って、多分隣にあるこの赤い石だよね?

 赤い石は宝石みたいに煌めいている訳ではなく、どちらかというとプラスチックみたいで、片面が平たく、反対側がドームの様に盛り上がっている。


「おーい」


 汎用簡易魔法シリーズ用魔石 赤(8/10)

  汎用簡易魔法シリーズで使用出来る様に特別

  なカットを施した魔石。

  魔石の色によって封じ込められる属性が変わ 

  る。

  この中に封じ込められているのは『火炎』

  魔石に触れて発動ワードを唱える事で魔力の

  ない者でも使用できる。


 いやいやいやいや、おかしいでしょ?

 なんか世界観、違くない?

 何?汎用簡易魔法シリーズって。

 なんかこう、魔法科学って感じじゃん?


 ーーーゆさゆさゆさ


 いや、何?今ちょっと忙しいんだって。

 どう考えても、この魔石色違いとか中の魔法違いとか今後出てくるよね?


「おーい、キリトちゃん戻ってこーい!」


 しかも名前見る感じ魔剣だけじゃないでしょ?

 『シリーズ』って書いてあるし。


 ーーーガツンッ


 唐突に激痛が走り、目がチカチカする。

 殴られた頭を押さえて「痛いな!」と振り向くと、皆がこちらを見ていた。


「あ」


 いつも『俺不運』を読んでいただきありがとうございます。

 ブックマークほんとに嬉しいです、ありがとうございます!


 お宝回です。

 次回はお宝の仕分けです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ