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打ち上げって楽しい


 今日の晩飯は山菜汁と焼きキノコ、そして山鳥とキノコのソテーだ。

 「クエスト、成功、特別」と優しいクマさんスマイルを見せながらバターを取り出してくれた。

 バターは高級品だから中々使えないのだそう。

 今から楽しみだ。


 綺麗な布で軽く拭いて、石突を取り除いたキノコを串に刺し、塩を振る。

 遠火に置いてゆっくり火を通すのだそう。

 じわじわと汗をかく様に水分が滲み出てきて、ポタリと落ちる。

 もうそれだけでめちゃくちゃに旨そうだ。

 シダ科の山菜は灰汁が沢山出るので二度茹でこぼして、それからはこまめに掬ってひたすらに捨てることの繰り返し。

 大きなジャックがずーーーーっとひたすらに灰汁を取って捨てるをちまちま繰り返しているのがなんだかこう、すごく変な感じだ。

 おっさんなのに可愛く見える。

 不思議だ。


 雑味が灰汁と共に無くなり、旨味が凝縮されて、匂いを嗅ぐだけで唾が湧いてくる。

 やばい、めちゃめちゃに美味そうだ。

 別鍋で取っていた山鳥の鶏ガラも一緒になってたまらない香りで、お鍋が味見をしませんか?と誘いをかけて来る。

 味見をしたくてじっと眺めていると、【鑑定】が発動した。


 鶏ガラベースの山菜汁

  丁寧に作られた山菜汁。絶品。


 絶品ですってよ奥さん。

 これは是非とも味見をしたい。


「ジャックさん……味見係、ここに居ますよ?」

「まだ、駄目」


 くつくつと良い匂いをさせているのにまだ出来上がっていないらしい。

 絶品って出てるのに……。

 ジャックはゴソゴソと調味料の入ったポーチから小瓶を丁寧に取り出すと小匙に一杯掬う。

 蓋を閉めたらその調味料をパラリと鍋に振り入れた。

 【鑑定】。


 ジャック特製山菜汁

  秘伝のスパイスを入れた超絶品の山菜汁


 ジャック……アンタって人は……!

 小皿に一口分掬って渡された山菜汁。


「味見」


 クマさんスマイルがイケメンスマイルに見える。

 後光が差している。(西日だけど!)


「いただきます」


 ズズっと一口分の汁を啜る。

 途端に広がる旨味と香り。

 うっっっっまっ!

 なんっだこれ!

 鶏ガラの旨味と山菜の旨味が喧嘩せずに手を取り合いそれをハーブが彩ってる。

 グルメ漫画なら裸になりながらきりもみ回転しつつ、宇宙に行く。

 そんな表現をする所だ。

 やばい。

 めっちゃうまい。

 もっと欲しい。

 早くみんな帰ってきて!

 おかわりはジャックのクマさんガードが堅すぎて認められませんでした。

 お願いあと一口だけ!


 そうして諦め悪くジャックにおねだりをしていると三人がホクホク顔で帰ってきた。

 どうだったかを聞くまでもない。

 その両手にどっさり大きなグリーンフライフォックスを抱えていたからだ。

 狩り尽くしてないか聞いてみたが、大きな群れだったらしく、大きな個体だけをこれだけ狙って狩ってきても全く問題ないらしい。


 全部で十五匹。

 最初に狩っていた七匹に比べて立派なサイズと艶やかな毛並みだ。

 魔力がたっぷり満ちているのかうっすら輝いている。

 こっそり【鑑定】してみるとみんな五歳以上の個体で、コートにするには最良の毛皮だそう。


 一旦目に見える場所に保管しておいて、みんなで乾杯だ。

 予定外の大成功なので、みんな顔が緩んでる。

 そこに先程のジャック特製山菜汁や贅沢バターのキノコチキンソテーに絶品焼きキノコだ。

 盛り上がらないわけがない。


 みんなでわいわい食べて騒いで、お腹が満ちたら毛皮を剥いで、処理して、寝る。

 牙はヤンスさんとエレオノーレさんが鏃にするから、とメキョメキョ抜いていた。

 ……ちょっとグロくて直視できなかった。

 ついでに加工用の鍋を借りて、溜まった皮に付いていた脂肪を溶かして獣脂オイルを作った。

 塩析して数種類のハーブを入れて匂いを抑えた。

 使い終わった薬の缶をもらって洗浄して詰めると、ツヤピカトロっとして、スッとする匂いの獣脂オイルが出来上がった。

 ここでも【鑑定】さんは大活躍だ。

 こう、なんというか自分が知りたい事を考えつつ鑑定するとそれに即した結果が出てくるらしいんだよね。


 例えばグリーンフライフォックスの毛皮は『コートにする』って言われてたからそれを無意識でイメージしてたみたいで初回は「コートには向かない」とかまで書いてあったし。

 そして今回の獣脂オイルは匂いを抑えられるのないかなって見てたらオイルの匂いを抑えるのには最適って表示が出たんだよ。

 この世界のスキルって応用力がすごいよね。

 小説より奇なり、ってこういう時に使うのかな?


「グリーンフライフォックスの肉は毒があるけど、()()大丈夫なのかよ、キリトちゃん」

「はっ!教えて【鑑定】さん!……食べなきゃ大丈夫らしいです!」


 ヤンスさんの至極当然なツッコミに慌てて【鑑定】してみれば、食べなければ肌に塗っても問題無いと出た。

 うっかり毒物を作ってしまうところだった。


 まぁ、そんなドタバタではあったけれど予定より一日早く街に戻る事が決まった。

 翌朝は混乱することも、ましてや泣くこともなく無事出発した、と男としてのプライドにかけて表明しておく。

 天幕を片付けて、荷物をまとめて、出発だ。

 ここから『飛竜の庇護』のみんなが向かう予定の街、アルスフィアットまでは歩いて大体一日くらいだそうだ。

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[気になる点] 肉に毒があるから脂も毒脂?
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