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83 暗視と小部屋

 真っ暗な道を進む内に、何度かイワトカゲの成体に出会した。

 三階層の幼生体なんて目じゃないくらい、そりゃもう素早かった。

 『飛竜の庇護』では一番バトルセンスのあるオーランドでも苦戦する程に速いし、硬いし、強い。

 幸い気配は察知しやすく、「居る」のはすぐに分かる。

 幼生体程ではないが、好戦的なタイプでもない様で、積極的に襲い掛かってくる事はあまり無い。

 明るければ、ジャックでも問題無く倒せるらしいけど、視界が悪いこの状況ではかなりの難敵だ。

 最早、俺の攻撃など掠りもしない。

 見つけ次第、オーランドが対応する事になった。


 とはいえ、このままオーランドだけに任せ続けるわけにはいかない。

 何かないかと考えた結果、『暗視』の魔法を作ればよくね?と思い至った。

 イメージはゲームとかでよくある暗視スコープ。

 右手で両目を押さえて、魔力を集める。


「暗視」


 しっかりイメージして手を離した。

 開いた視界には、うっすらオレンジっぽく薄暗い洞窟が映し出されている。

 足元はもちろん、壁のヒビ割れや、結構遠くにある分かれ道なんかまではっきり見える。

 これをパーティ皆にかければ、無双タイムじゃん?!

 一旦キリのいい所まで歩いてから事情を説明して、一人ずつ魔法を掛けていく。

 まずはヤンスさんから。

 「こんな便利な魔法知ってるならさっさと使え!」と怒られたが、今思いついたんだからどうしようも無い。

 オーランド、ジャック、と順に掛けていると、また蝙蝠が襲いかかってくる。


「こんだけ見えりゃジューブン!」


 ヒュンッと風切り音が鳴るのとチン、と納刀の音が響くのは、ほぼ同時だった。

 振り返った時には、ヤンスさんは普通に立っていて、その足元で蝙蝠が消えて行く所だった。

 オーランドは「おお、めっちゃ見える!」と大はしゃぎだし、デイジーは不思議そうにあちらこちらを見回している。

 エレオノーレさんは「まだまだ私の知らない魔法がこんなにあるのね」とくふくふ笑っていて、少し怖い。


 視界もクリアになった事だし、改めてまた探索とマッピングを進める。

 色々見える様になった分、進みやすくなったし、イワトカゲも段違いに倒し易くなった。

 大分地図が埋まってきた所で、ヤンスさんが大きな部屋の様になっている場所を見つけた。

 そっと遠目に覗くと、扉などは無いが、学校の教室くらいの広さの部屋にわさわさと何かがいる気配がする。

 中を覗いたヤンスさんはオオイワトカゲとイワトカゲが宝箱を守っている、と小声で言った。


「「「宝箱!」」」


 小声ではあるが弾むように皆の声が重なる。

 本格的にマジックアイテムの出るダンジョン感が増した。

 まだ倒してみない事にははっきりは言えないけれど、ここまで条件が揃っていたらそういう事で良いんじゃないかと考えちゃうよな!

 中にはイワトカゲ達にダメージを与えられるオーランドとジャックが入り、俺とエレオノーレさんで入り口から、はぐれた奴を魔法で撃ち抜きつつ二人をフォロー、デイジーとヤンスさんはバックアタック警戒に当たる事になった。


「いくぞっ!」


 オーランドとジャックが部屋に飛び込んだ。

 イワトカゲ達がざわつき、二人を目指して走ってくる。

 既に詠唱を終えているエレオノーレさんと一緒に、凍結魔法をオーランド達の間から撃ち放つ。

 仲間に挟まれて、動けなかった一匹以外には当たらなかったが、室温がグッと下がった事により、イワトカゲ達の動きが鈍る。

 部屋全体が見渡せる様になってわかったが、オオイワトカゲが三匹、イワトカゲが五匹だ。

 オオイワトカゲは宝箱を守る様に位置して動かない。

 五匹、いや、凍らされた一匹を除く四匹がオーランドとジャックに肉薄する。


「うおおおおぉぉっ!」


 野太い雄叫びとドスンッ!という地響きを伴い、ジャックのバトルアックスが一匹目を真っ二つに引き裂いた。

 二匹目がその隙に噛みつこうとするが、エレオノーレさんのアイスバレットが鼻っ面を強かに撃ち、ひっくり返る様にして距離を取った。

 三匹目はオーランドが唐竹割りにして瞬殺、四匹目と睨み合っている。

 四匹目は、イワトカゲのリーダーの様な役割だった様で、油断なく距離を取りつつ、二匹目に向かってクカカカカッと猫のクラッキングの様な音を立てて指示を出して居る。


 ゆるり、と二匹が左右に割れた、かと思うと直角に曲がる様に飛び出してジャックに向かう。


「させるわけ無いじゃない!」


 またしてもエレオノーレさんのアイスバレットが二匹目を襲う。

 二度目の氷魔法はダメージが大きいのか、ぐったりとしてうずくまってしまった。

 四匹目は俺のアイスバレットだ。

 入り所が良かったのか上顎を貫通して悶えている。

 それをオーランド達が見逃すはずも無く、気合い一閃、首を落とした。


 それに騒ついたのは奥でゆったりと構えていたオオイワトカゲ三匹だ。

 警戒音を鳴らしながら二匹がこちらに迫ってくる。

 イワトカゲよりも遅いが、充分警戒に値するスピードで、コモドオオドラゴンを彷彿とさせる動きだった。

 だが、オーランドの方が速い。

 タッ、タッ、とリズミカルに跳ねて移動して宙に跳ぶ。

 落下の威力を込めて首に刃が吸い込まれーーー


ーーーガインッ!


 その強固な鱗に弾かれた。

 細かく幾重にも重ねられた小さな鱗はいとも容易くオーランドの攻撃を跳ね除けた。

 弾かれるとは思っていなかったオーランドはバランスを崩しつつ、急いで距離を取るが、それをオオイワトカゲは許さない。

 不安定なバランスで着いた軸足を狙って大きな口を開く。


「アイスバレットッ!」


 勿論俺だってただ見ているだけじゃない。

 確実に来る場所が判っていれば魔法も当たる。

 弾丸の様に尖らせて回転を加えた氷の礫は、鱗に弾かれる事も無く、その身を穿つ。

 耳障りな声を上げてオオイワトカゲが倒れるが、まだちょっぴり痛かった程度のダメージだ。

 その証拠にすぐに起き上がり、戦闘態勢に戻るが、その目には一目でわかるほどに怒りに燃えていた。

 爛々と俺を睨むオオイワトカゲは、猛烈なスピードでコチラに向かって走ってきた。


「ぎゃっ!マジで?!」


 慌てて俺とエレオノーレさんの前に氷の壁を作るが、それを物ともせずにオオイワトカゲは体当たりをかます。


ーーーびしびしびしっ


 嫌な音を立てて氷の壁にヒビが入る。

 でも一度止まっているのだからアレが使える。


「アブソリュートゼロッ!」


 錫杖の石突で頭に刺す様にして魔法を発動させると、みるみる内に凍りつき、砕け散る。

 それを見届けて顔を上げると二匹目をオーランドとジャックが見事な連携で翻弄していて、少しずつ体力を削っている様だ。

 腹側の方が鱗が柔らかい様で、ジャックがバトルアックスで下からひっくり返すように振り抜き、浮いた身体に正確に剣を振り傷を付ける。

 ぽたぽたと赤い血を滴らせながらも二人に果敢に噛みつこうとするオオイワトカゲ。

 危なそうなタイミングにアイスバレットを当てるエレオノーレさん。

 奥のオオイワトカゲを見れば、なんと目が合った。

 しゅる、しゅるっ、と舌を出し入れしたかと思えば、また、すごい勢いでこちらに向かって走ってくる。

 距離があるし、うっかり誤爆も出来ないのでアイスバレットで応戦するが、相手も多少のダメージは覚悟しているのだろう。

 怯みもせずに真っ直ぐに向かってきた。

 今度は先ほどより距離があるし、何より誤爆出来ないので、俺とオオイワトカゲとの直線上に落とし穴を仕掛ける。

 ドスンとも、ズズンとも言い辛い音を立てて、オオイワトカゲが穴に落ちる。

 俺は即座に水をぶっ込み凍らせた。


「キリトッ!こっちも頼む!」


 ちまちまとダメージを与え続けたオオイワトカゲをオーランドとジャックでひっくり返し、起き上がる前にエレオノーレさんが氷結魔法を打ち込んでいるが、中々全体が凍らず、尻尾で起き上がるを繰り返している。

 もう一度ひっくり返してもらった後、皆が離れたのを確認して、アブソリュートゼロを撃ち込むと、部屋の中の魔物は全ていなくなった。

 いつも『俺不運』を読んでくださってありがとうございます。

 ブックマーク、いいね、とても励みになります。

 感想や評価等も頂けるととても嬉しいです。


 ダンジョン編も段々と不穏な空気になってまいりました。


 寝ぼけて修正作業中に、文章の間にURL貼り付けていたみたいです。

 すでに修正済みですが、読み辛くて申し訳ありませんでした。

 うまく書き切れているか自信はありませんが、これからも頑張ります。

 どうぞよろしくお願いします。

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