間話 ○視点 オーランド 【無自覚タラシ】
今更ですが、一周年記念SSです。
最近『飛竜の庇護』に加入したキリトは、本当に変わったやつで、トラブルメーカーでもある。
とんでもない爆弾をポンポン放り投げて来る。
それはボーナスフロアであったり、不憫な少女ハンターの保護であったり、マジックアイテムの発見であったりする。
本人はその大事加減に気付いておらず、さもそれが当然の事かの様に話して、事態を進めていく。
唖然としている俺達を置き去りにして、どんどんと物事を大きく、厄介にしていくのだ。
新しく仲間になったデイジーは、加入して早々その被害に遭っていた。
ボーナスフロアの儲けを、本来なら金貨だけ少量渡すつもりであったのだが、他の物も、あまつさえマジックアイテムすら渡してしまったのだ。
しかもどんな性能で、こういう理由で、誰が着けるのが一番いいと思う、など否定したり拒否したりし辛い理路整然とした理由付きで、だ。
コレでは流石に否定できなかった。
当事者のデイジーが固辞したが、じゃあそうだねって回収するわけにもいかないからちゃんと受け取れ、とエレオノーレが言い聞かせる。
そのくせして、自分の分は欲しいな、ぐらいで配分すらしない。
当然、エレオノーレの強権が発動された。
皆がアイテムを装着していく中、アイツはさっさと指輪を填めて、ブローチを仕舞う。
蝶のブローチは幸せをもたらすマジックアイテムだ、きっとレジーナにでも渡すつもりだろう。
翻って、デイジーは髪飾りの位置に四苦八苦している。
本来金持ちでもなければ髪飾りなど付けることはない。
祭りや祝い事などの時に、髪を結んでそこに生花を刺すくらいだ。
当然の結果だろう。
そう、キリト以外は。
「ねえ、デイジー。嫌じゃなければで良いんだけど、俺が髪いじっても大丈夫?」
「ええっ!?」
とんでもないことを言い出した。
少女とはいえ未婚の女性の髪を婚約者でも恋人でもない男が触るなどと、何故こんな人前で言うのか?!
案の定デイジーは顔を真っ赤にして固まっている。
「簡単なアレンジだから多分デイジーもすぐにできる様になるよ」
櫛を取り出して柔かに微笑む。
そこには下心など一切無かった。
痛くしたりしないから安心して、等と言葉だけ聞けば、怪しい事極まりない言葉選びにも関わらず、性的なニュアンスは一切ない。
それはもう清々しい程に無い。
まるで血の繋がった妹に接するかの様な態度である。
デイジーは頬を染めて無言でただ頷いていた。
その目はキリトだけを見つめている。
キリトはそっと壊れ物に触るかの様にデイジーの髪に櫛を入れて掬い取り、複雑に編み込んでいく。
スイスイと編んでいく手に迷いはない。
明らかに慣れている。
緊張でカタカタと小さく震えながら、恥じらうデイジーは目に入っていない様だ。
最後にこめかみ辺りでマジックアイテムである髪飾りを使って留めた。
前に回り込んで、デイジーをじっとみつめるとにっこり笑って言い放った。
「はい、出来た。うん。似合ってる。可愛い」
恐らく本人は、妹や娘に言う様な感覚なのだろうが、下心無くただ褒められる、という行為はデイジーには刺激が強すぎたのだろう。
真っ赤なリンゴの様になっている。
その内羞恥で倒れてしまいそうだ。
助けを求める様に唯一の女性であるエレオノーレを涙目で見る。
いや、うん。
解るぞ。
流石のオレでも今君がいっぱいいっぱいで倒れそうなのは、解る。
「うん。言いたいことは解るけど本当に似合っているわ。とっても可愛いわよ」
呆れた様に見ていたエレオノーレも安心させる様に笑いかけ、デイジーは小さく礼を言う。
コレは流石にオレでも解るぞ?デイジーがキリトを見つめる視線に篭る熱の意味が。
レジーナの時もそうだったが、キリトは基本的に歳下の少女に優しい。
計算とかそういうのでは無く、相手を思いやり、優しく包む。
そのくせして相手からの好意に鈍感だ。
パーティ内恋愛は否定しないが、恋愛のゴタゴタで刺されるなよ?キリト。
いつも『俺不運』読んでくださってありがとうございます!
あっという間に一年経ってしまっていました!
沢山の方に読んで頂けて、とても嬉しく励みになっていて、本当に気が付いたら「あれ?!一年経ってるじゃん?!」という状態でした。
いつもありがとうございます。
何かSSでも、と考えたのですが、中々思い付かずこんな時間になってしまいました……笑
ちょっと恋愛要素がしばらく書けなさそうなので、以前のお話の別視点で我慢です。
34部分のお宝の仕分けとヘアアレンジですね。
デイジーがまだまだ初々しくて楽しいです。
では、次回からまた本編です。
月曜日零時更新予定となっています。
これからも(ちょっとハードになってきた)霧斗達の冒険をよろしくお願いします。




